ブルーオーシャンインプル研『経営コラム(インプルリポート)』

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650.直接原価P/Lの詳細 経営計画の策定

2024年3月15日 印刷用ページ

現在は経済環境の不安定さに加え、なかなか増収が難しい中、

賃上げを含む労働条件の明示など労働環境の改善やコロナ緊急資金繰り支援の打ち切りなど、

中小企業経営を取り囲む経営環境は厳しい中にある。

そこで必要となる経営力が、『経営計画に基づく経営管理力』だ。

なぜなら、増収を目論むには「戦略」や「戦術」という創意工夫と実行という『才覚』と言われる才能が必要となるが、

「経営計画に基づく経営」にはそんな才能は必要ないからだ。

「経営計画に基づく経営」は誰にでもできる。

経営計画を策定しその計画に基づく管理とコントロールさえして行けば、増えない売上高の中で誰でも『利益の最大化』が図れる。

このことは経営計画に基づく経営を実行している多くの経営者が異口同音に言っている。

そこで『直接原価P/Lの詳細』の最後として、復習を兼ねて直接原価計算損益計算書を利用した損益計画の作り方を紹介する。

 

1 まず、『変動費(V)』『固定費(F)』を”単純明快”に決める

そのためには、費用を『変動費』と『固定費』に分けることから始める。

変動費(V)とは、「売上の増減に比例し、直接、売上の原価として構成する費用」であった。

それ以外が固定費(F)となり、固定費は『人件費』と『その他固定費』に分けられる。

 

固変区分は”単純明快”に決めることがポイント!

なぜなら、固変区分を単純明快に決めることによって、直感的にわかりやすい経営計画となるからだ。

 

 

2 次に現状の『変動費比率(v)』『限界利益率(m)』を求める

変動費(V)を集計すれば、『変動費合計(vPQ)』が求められる。

その変動費合計を売上高(PQ)で割れば『変動費比率(v)』が計算できる。

そして、100%から変動費比率(v)を引き算すれば、『限界利益率(m)』が求められる。

 

      変動費合計(vPQ)÷売上高(PQ)×100=変動費比率(v)

      100%ー変動費比率(v)          =限界利益率(m)

 

 

3 来期の固定費(F)を決める

今期の固定費をもとに、来期の固定費を決定する。

「その他固定費」は今期の固定費を参考にして、増減させて決定すればよいと思われるが、

人件費は昇給や賞与なども考慮し、そして社会保険料等の法定福利費も考えて算出することが望ましい。

 

来期固定費(F)=(給与×昇給率+予定賞与額+法定福利費)+その他固定費×目標増減率

 

 

4 来期の必要目標利益(G)を決める

直感的に『来期の必要目標利益(G)』を決めてもよいし、少し論理的に必要目標利益を求めてもよい。

論知的に必要目標利益を設定する場合は、まず内部留保させたい利益を決め、それに借入返済金を加え、

そこから減価償却費を減算し、その金額に税額を考慮し、いわゆる『税引き前当期純利益』にして計算する。

内部留保とは、来期いくら手元資金を増やしたいのかと考えればわかりやすい。

また減価償却費を減算する理由は、減価償却費は損益計算上に計上はされるが、おカネは支出しないことによる。

 

来期の目標利益(G)=(内部留保+借入金返済額ー減価償却費)×(100ー法人税等負担率)

 *法人税等負担率は住民税等を含めれば、利益に対して24%~37%程度と言われているが、約30%と考えればよいのでは

  と思われる。

 

 

5 来期の必要売上高(PQ)の算出

限界利益率(m)、必要固定費(F)、目標利益(G)の3点が揃えば、『来期の必要売上高(PQ)』が算出できる。

 

来期の必要売上高(PQ)=(来期の必要固定費+来期の目標利益)÷来期の限界利益率

 

 

6 来期の必要売上高等をチェックする

ここまで来たなら、策定した各目標値をチェックしよう。

①必要売上高は何パーセントの伸びになるのか?      来期の必要売上高(PQ)÷今期売上高(PQ)×100

②来期の変動費率は何パーセントになるのか?       来期の変動費合計(V)÷来期の必要売上高(PQ)×100

③来期の限界利益率は何パーセントになるのか?      100ー来期の変動費比率(v)

④来期の各労働分配率は何パーセントになるのか?     来期の人件費÷来期の限界利益(mPQ)×100

                              来期の役員人件費÷来期の限界利益(mPQ)×100

                              来期の正社員人件費÷来期の限界利益(mPQ)×100

                              来期の非正規人件費÷来期の限界利益(mPQ)×100

⑤来期のその他固定費は何パーセントの増減になるのか?  来期のその他固定費÷今期その他固定費×100

⑥来期の損益分岐点売上高は?              来期の固定費合計÷来期の限界利益

⑦来期の損益分岐点比率は何パーセントになるのか?    来期の損益分岐点売上高÷来期の必要売上高×100

⑧来期の経営安全率は何パーセントになるのか?      100ー来期の損益分岐点比率

これらをチェックして、求めた来期の年次損益計算書を調整する。

なお、労働分配率は合計で把握するとともに、契約形態別や職種別で把握することがポイントだ。

 

労働分配率は合計で把握するとともに、契約形態別や職種別で把握する!

 

 

7 月次展開

来期の年次計画が確定しなら、最後はこれらを月次展開して、毎月タイムリーに月次計画と前年同月を当期実績と比較して、

状況を確認することになる。

このことが経営計画に基づく管理とコントロールをすることになり、増えない売上高の中でも利益を最大することにつながる。

なお、月次展開については前期の季節指数などを活用して、さもありそうな月次展開をする考え方が多いが、

経営計画の目的は、予測でも当て物でもなく、実績を管理・コントロール・統制していくものである。

そこから考えればすべての数値を毎月同額にして統制力を高めるという考え方も成り立つ。

 

月次展開をすべて毎月同額にすることは、日常からの統制力を高めることになる!

 

 

 

このように経営計画は、仮に売上高が増えなくとも、その中で利益を最大化できる経営論である。

厳しさばかりが増す経営環境の中で、「経営計画は必須の経営管理ツールだ」と言われる所以だ。

 

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