インプル研『経営コラム(インプルリポート)』
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732.会計から見る強い経営の見分け方⑦
第7回の「会計から見る強い経営の見分け方は『負債』へ移る。
7 強い経営のポイント⑦ 『買入債務回転日数』と『負債比率』
(1)負債とは
負債とは一般的に「企業が将来、返済を求められる財産のことであり、一般的には借金に相当する」と説明される。
このような説明をされると、なにか「負債」があると事業にとってマイナスのように思ってしまうが、
しかし「負債」は経営にとって重要な資金調達源の一つでもあるので、必ずしもそうとは言い切れない。
つまり「負債」とは、経営にとっては必要不可欠なものではあるが、借金まみれで経営するわけにもいかないので、
コントロール(統制)することが大変重要な『資金調達源』といえる。
「負債」は経営において資金調達の重要な源泉であると同時に統制が重要な財源である!
(2)流動負債と固定負債
負債は、貸借対照表では「流動負債」と「固定負債」に分類されるが、負債の特徴として次のようなことが挙げられる。
1.支払義務
支払の期限が到来した時点で、返済が義務付けられている。
2.マイナスの財産
分かりやすく考えれば、企業が保有する資産から差し引かれるべきマイナスの財産と見なされる。
3.資金調達源
負債は企業の重要な資金調達方法の一つである。
4.負債の分類
流動負債は 支払期限が1年以内に到来する負債で、買掛金や支払手形や短期借入金などが該当する。
固定負債は支払期限が1年を超える負債で、長期借入金や社債などがある。
5.具体例
①借入金 金融機関などから借り入れたおカネで返済義務が生じる。
②買掛金 商品やサービスを仕入れた際に、後日支払う代金。
③社債 企業が発行する債券で、満期が到来した際に元利金を支払う義務が生じる。
など
(3)負債のい分け方 買入債務回転期間と負債比率等
1.買入債務回転期間
買入債務回転期間とは、企業が商品を仕入れてから、その代金を実際に支払うまでの平均期間を指す。
これは、資金繰りの効率性や取引条件を示す指標であり、次のような計算で求める。
買入債務回転期間(日)=買入債務(支払手形+買掛金)÷1日当りの売上原価
これは支払までの猶予を示すので、長ければ長いほど資金繰りが楽になるので良いとも言えるが、そんな考えでは孤立してしまう。
企業取引は互いに慮って取引をすることが信用・信頼に繋がるので、売上債権回転期間とのバランスで判断することが大事である。
2.負債比率
負債が適正な規模であるかを判断する時に用いる。
「負債比率」は企業の財務状況を判断するのに外せない指標であり、経営を分析する上で欠かせない。
負債比率は会社の自己資本に対して、負債がどの程度あるのかを表したものであり、以下の式で求める。
負債比率=負債÷自己資本×100%
仮に、負債が5,00万円、自己資本(純資産)が5,000万円なら、負債比率は100%になる。
負債比率は低い方が「財政上の安全性は高い」といえるが、あまり低すぎると資金不足で必要な投資などが行えない可能性が
出てくるので、低ければ良いというものでもない。
因みに「平成29年中小企業実態基本調査報告書」によると、2016年時点で全業種の負債比率平均は149.5%であった。
つまり、自己資本が1000万円ならば、1500万円ほどの負債を抱えているという言うのが中小企業の平均像ということだが、
それだと自己資本比率が40%程度になるので、実態はもっと負債比率が高いと思われる。
古いデータではあるが、産業別では次のようになっている。(中小企業庁:平成29年中小企業実態基本調査報告書より)
建設業153.3% 製造業119.5% 情報通信業70.6% 運輸業175.5% 卸売業161.3%
小売業172.2% 不動産業205.8% 専門・技術サービス業79.4% 宿泊業・飲食サービス業594.3%
生活関連サービス業・娯楽業194.2% サービス業(その他)122.7%
3.資産項目と比べる
その他に、これまでに紹介した、資産項目と比較することも大事となる。
復習を兼ねて、かんたんに紹介する。 ※詳しくはこれまでの見分け方を参照されたい。
①流動比率
流動比率は、貸借対照表の流動資産と流動負債の割合に注目したもので、短期の支払能力を見るための指標だ。
流動比率=流動資産÷流動負債×100
②当座比率
当座比率は、流動資産の中でも現預金および比較的短期間で資金化できる資産と流動負債の割合に注目したもので、
流動比率と同じく短期的な支払能力を見るための指標になる。
当座比率=当座資産÷流動負債×100
③固定比率
固定比率は、自己資本に対する固定資産の比率のことである。
固定比率=固定資産÷自己資本×100
固定比率は企業の長期的な支払能力を表す指標であり、企業が長期的に使用する固定資産が、どの程度自己資本によって調達されて
いるのかを示す。100%以下であれば、固定資産をすべて自己資本でまかなっていることになる。
④固定長期適合率
固定長期適合率は、固定負債と自己資本の合計額の固定資産に対する割合を示したものである。
純資産に対する固定資産の割合を示した固定比率とともに、長期的な支払能力を見るための指標となっている。
固定長期適合率=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100
固定長期適合率は、企業が長期的に使用する固定資産が、どの程度自己資本及び安定した固定負債によって調達されているのかを
示すものだ。100%未満であれば、長期安全性に問題がない状態だと判断される。
負債はしっかり統制すれば重要な資金調達源である!
