39.損益分岐点力⑥BEP活用

2010年2月28日

財務分析解説コラム(23) 当社の損益分岐点を検証する-損益分岐点を活かす-
「当社の損益分岐点を検証する」の最終回、第6回は、『損益分岐点分析』を経営に活かすためにはどう活用すれば良いのかについて総合的に説明します。

1.損益分岐点分析は時流の分析
デフレ、低価格時代と言われている現代、『損益分岐点分析』は大変重要な経営分析です。この厳しい時代に素晴らしい業績をあげている企業は多くは、この『損益分岐点分析』を重要視しています。例えばニトリ、アイリスオオヤマ、サイゼリヤ、マクドナルド、ユザワヤなどはすべて『損益分岐点』を明確にして、販売目標と利益
目標を設定しています。そしてこれまでの慣習に縛られない戦略と戦術を立て、旺盛な実行力をもって業績を伸ばしています。なにもこれらのことは大企業だけが可能なのではなく、われわれ中小企業にも可能なのです。なぜならば、それらの企業もわれわれと同様苦しみながら困難を突破してきた中小企業であったわけですから。

2.損益分岐点分析を価格政策に活かす
現在の経営で最重要な意思決定事項は、販売価格です。低価格時代、デフレと言われ久しくなっています。この理由に関してはいろいろな考え方がありますが、一つの考え方としてコモディティー化が上げれます。もう身の回りにはモノが有り溢れています。さらに製造技術などもしっかりしているので、消費者はよほどもの日用品でないモノ以外は、安ければ良いという考え方になっています。したがって「ドロー(draw)価格」が設定できるかできないかが、顧客を引き寄せる条件となっています。
サイデリヤの市場価格の70%の価格を提示すればお客様に来店いただけるという理論をご存知でしょうか。サイデリアでは市場調査を繰り返した結果、70%価格を提示できればお客様に来店いただけるという結論を得て、味もボリュームも落とさず、『変動費』や『固定費』を下げて70%価格で採算を取れるようにしたという話は有名です。
そのためには、今までのような全部原価計算方式で価格を考えているようでは、顧客目線の販売価格は設定できません。直接原価計算(変動損益計算書)によって『損益分岐点』を算出し、顧客目線の戦略的な販売価格を設定する必要があります。以前、説明した『疑似出血』単価であれば、限界利益単価で『固定費』を
回収していくことができます。あとは販売数量の問題で、一定の販売数量を超えれば、それ以後は全て利益となります。

3.次期経営計画に損益分岐点分析を活かす
『損益分岐点売上高』の求め方を覚えていますか?「損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率」でしたね。これを応用して次期の経営計画書を作ります。応用は次のとおりです。
次期目標売上高=(次期固定費+目標経常利益)÷次期限界利益率
こうすれば次期の目標売上高が求められます。但し、条件は次期固定費と次期限界利益率がこの通りであれば、目標経常利益率は達成できることになるので、来期は『固定費』と『限界利益率』をしっかりマネージ(管理)することになります。どうですか、このように考えると、来期の管理項目まで明確になりましたね。

4.損益分岐点分析のおさらい
(1)変動費と固定費
売上の増減に比例する費用が『変動費』です。小売業であれば商品、製造業であれば材料費と外注加工費です。『変動費』以外が『固定費』で、変動要素と固定要素両面ある費用は『固定費』にします。
(2)変動損益計算書の構造
『変動費』・『固定費』がハッキリすれば変動損益計算書は作成できます。経営に活かすには、製品・商品単位やグループ単位に把握することが大切です。なお、最初から正確なものでなくとも、ある程度概算でも良いと思います。正確に求められなくても、まず実行することの方が重要です。
①限界利益
売上高から『変動費』を差し引いたものが『限界利益』です。売上高に占める割合が『限界利益率』です。『変動費』は「率」を確認し、『限界利益』は「額」と「率」、両方を確認することが大事です。また先ほど言ったように、目標値があるならば、目標値を上回る対策を講じます。
②経常利益
『限界利益』から『固定費』を差し引いたものが『経常利益』です。『固定費』は「額」で管理し、必ず、前期より減らすつもりで対策を講じます。
(3)労働分配率
『限界利益』に占める総人件費の割合です。総人件費の金額は増やせ、『労働分配率』は低くできれば、理想的です。
(4)損益分岐点売上高と損益分岐点比率
『損益分岐点売上高』とは、損も儲けもない収支トントンの売上高のことでした。収支トントンとは「限界利益(売上高×限界利益率)=固定費」のことですので、「固定費÷限界利益率」で『損益分岐点売上高』が求められます。それを売上高実績で割れば『損益分岐点比率』が求められます。
(5)経営安全率
『経営安全率』とは『損益分岐点比率』までも余裕を表します。したがって100から『損益分岐点比率』を引けば『経営安全率』となります。中小企業の『経営安全率』は5%~10%と非常に低いですが、一昨年のリーマンショック以降、売上高が30%・40%落ちたと言うニュースが多く流れたことは記憶に新しいところです。現代のように経営環境の変化が激しいときには、30%程度は目指したいところです。

時代は変わり、中小企業だからという「甘え」は許されません。中小企業だから弱いのは仕方がないという考え方ではなく、中小企業は少数精鋭企業だという考え方で事に当たるべきだと思います。小さいことには多くの強みを含みます。経営のスピード、全社の意思統一、ニッチ市場への対応など、大企業にない強みがあります。ただ一つの課題は、経営管理力を向上させることです。「会計資料」という自社の診断書を読みこなし自社の症状を自ら発見し、自らその処方箋・戦術を考え、会社全体にそのことを明らかにして実行していくことです。中小企業も大企業と同様、経営心を持って経営に当たることが重要です。
会計資料が読めない、読まないということは、経営危機が迫っているのに気づくことができないということです。ぜひ、自社にちょっとした「チェンジ」というスパイスをふりかけましょう。
次回もお楽しみに・・