65.運転資金の改善方法(前)

2010年11月11日

さて、「貸借対照表を財務体質改善に活かす」の第3回目は運転資金の改善について説明しますが、その前に、『資金』そのものについて勉強しましょう。
資金にはそれぞれ「性格」があります。資金管理で大切なことは、資金の性格に応じて適切な対処をするということです。そこで、資金をいくつかの分類で区分して、その性格を探ってみます。

1.資金の分類方法
資金の分類基準として代表的なものは、使途、頻度、回収(回転)期間の3つです。
これらについて説明します。
(1)使途での分類
①運転資金
日常の営業活動で必要になる資金です。
例えば、仕入代金や諸経費の支払などに使う資金です。
②設備投資資金
建物・機械など固定資産の取得や研究開発、企業買収などの支払に必要な資金のこと
です。
(2)頻度での分類
③経常資金
日常的に頻繁に繰り返し発生する資金のことをいいます。運転資金とほぼ同義です。
④経常外資金
発生頻度が少なく、年に数回しか発生しない資金のことを言います。
(3)回収(回転)期間での分類
⑤短期資金
1年以内のサイクルで回収あるいは支払する資金のことをいいます。
代表的なものに売掛金や買掛金などがあります。
⑥長期資金
資金の回収もしくは支払が、長期(1年以上)にわたる資金のことをいいます。
代表的なものに固定資産や銀行借入金などがあります。

これらのうち、資金繰りで重要なのは、「回収(回転)期間」です。なぜなら、使う目的に応じて、求められる資金調達の方法が異なるからです。たとえば、回収期間が長期にわたる設備投資の資金を短期の借入金で賄ったら、資金ショートするのは目に見えています。家計で考えるならば、住宅を買うのにノンバンクからお金を借りているようなものです。住宅を買うには少なくとも住宅ローンで賄えないといけません。同様に設備を購入するには自己資金か長期借入金で賄えないといけません。
長期資金は自己資本や長期負債によって調達し、短期資金は短期借入金などで対応するのが資金繰りの大原則です。資金の運用(使途)と調達(源泉)は、長短のタイミングを合わせることがポイントです。

2.運転資金の分類方法
上の分類で、設備投資資金は経常外資金、長期資金に該当します。問題は運転資金です。運転資金に関しては、さらなる分類が必要です。
(1)長期資金での分類
①経常運転資金
現状の売上や在庫水準、売上仕入の決済条件のもとで経常的に必要とされる運転資金
のことです。
②増加運転資金
売上が増加した場合や、決済条件に変化が生じた場合に必要になる運転資金のこと
です。
(2)短期資金での分類
③臨時運転資金
決算(納税・配当)資金、賞与資金、季節資金などのことをいいます。
④つなぎ資金
月中で一時的に必要となる資金のことをいいます。

これらのうち、経常運転資金と増加運転資金は、運転資本(売掛金や在庫と買掛金の合計残高)と現金払いの諸経費(人件費など)の水準で決まります。これらは1つ1つを見れば、確かに短期で回っていますが、全体としてみれば、否応なく、常にある一定残高は発生してしまうものです。すなわち、このとき資金は完全に「寝た」状態になり、企業が清算するまで回収できない状態が続きます。回収期間の上では、長期どころか回収できないものです。したがって、これらの運転資金は、返済不要な自己資本で賄うべきということになります。
ただ、増加運転資本をすべて自己資本で調達するのはなかなか難しいでしょう。その際は、長期借入金での調達を図ることになります。くれぐれも短期資金と混同しないようにしてください。
なお、臨時運転資金とは一時的に発生する運転資金のことです。法人税や配当金支払のための決算資金、賞与支給のための賞与資金、取引や資金需要に季節性がある場合の季節資金がその例です。これらはあらかじめ読み込めるものなので、短期の借入金などで計画的に資金調達し、年度内のキャッシュフローで返済していきます。
つなぎ資金とは、入金日と支払日のズレによって、月中で一時的に必要になる資金を言います。たとえば、支払日(20日)が入金日(月末)よりも先行する場合、支払日前に資金を借り、月末の入金で返済するようなパターンです。資金繰りの点では、できるだけつなぎ資金を必要としないよう、決済条件を工夫することが重要です。

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