289.420万経営者のための会計9
2016年12月13日
セクション9 損益の見方
損益計算書は比較的によく見られているかと思います。
損益計算書の見方にはどのようなものがあるのか、ご存知ですか。
おもな見方を挙げれば、時系列比較、予算比較、売上高構成比、利益分析、損益分岐点分析などがあります。
順を追って説明して行きましょう。
(1)時系列比較
時系列比較は決算の損益を見る場合にたいへん有効です。
その年度の損益計算書を見るだけでは問題点があまり見えませんが、時系列に並べて見てみると、その年度の問題点に気づきやすく
なります。ただし、2期比較ではあまり有効的ではありません。
できれば、5年ほどの流れの中で決算の損益を見ると、およその傾向が掴め、このままではどうなるか予測することもできます。
月次損益に関しては、少なくとも前年同月比較と前年同期(累計)比較で見たいものです。
(2)予算比較
予算と比較するためには、まず予算を立てなければなりません。
これが意外と多くの企業で立てられていません。
したがって、まず予算を立てることから始めなければなりません。
もし、初めてで、科目別に予算を立てることが難しいければ、売上高、売上原価、販管費の最低3項目について、
ともかく月次計画を考えてください。
そうすると、売上高、売上原価、売上総利益、販管費、営業利益の5項目の予算管理が実行可能となります。
そして要領がわかってくれば、徐々に細かく予算を立てるようにしましょう。
(3)売上高構成比
損益計算書は金額で見ることも重要ではありますが、売上高構成比で各項目を見ることも大切です。
いわゆる「収益体質」が見えてきます。
売上に対する売上原価はどのくらいなのか・・ 売上原価率が掴めます。
売上に対する売上総利益はどのくらいなのか・・ 売上総利益率、いわゆる粗利益率に近いものが把握できます。
売上高に対する人件費はどのくらいなのか・・ 人件費に対する生産性が見えてきます。
売上高に対する販管費はどのくらいなのか・・ 自社の経費率が掴めます。
売上高に対する営業利益はどのくらいなのか・・ 自社の本業ベースでの収益力である営業利益率が掴めます。
この中でもっとも重要なのが「営業利益率」です。他の売上高構成比はプロセスに過ぎませんが、この営業利益率は「結論」です。
なんとしてでも、事業をしている以上は、この営業利益率は10%を確保できるように経営努力したいものです。
(4)利益分析
損益計算書には5つの利益があります。
1、売上総利益 2、営業利益 3、経常利益 4、税引前当期純利益 5、当期純利益 の5つです。
この中で一番重要な利益は「営業利益」です。
営業利益率は先ほども申しあげたとおり、他社や業界はどうであれ、「10%確保」を目指したいものです。
その次に重要な利益は「当期純利益」です。
これが事業資金の真水となります。平たく言えば、会社の「貯金」です。少なくとも「5%」は確保したいものです。
何回か申し上げていますが、節税を意識しすぎると、この事業の貯金である当期純利益は少なくなります。
したがって、過度な節税は「単なる無駄使い」に近いものであるということを心得ましょう。
(5)損益分岐点分析
損益分岐点分析とは、「損失」と「利益」が分岐する点の売上高のことをいいます。
つまり、収支トントンの売上高のことです。これが実際の売上高よりはるかに低ければ、高利益体制と言えます。
赤字であればこの損益分岐点の売上高は実際の売上高より高くなります。
その求め方は簡単です。
費用のうちの固定費を、1-変動費比率(=限界利益率)で割ればよいだけです。
概算的には
販管費±営業外損益を売上総利益率で割ればよいだけです。
それを実際の売上高で割れば「損益分岐点比率」が求められます。
この損益分岐点比率は高くても90%、できれば80%以下にさせたいものです。
今回は自社の『損益』の見方を勉強しました。
その要点は
1.決算書の「損益」は5年間程度を一覧にしてみたいものです。月次損益は前年同月・前年同期でチェックしましょう。
2.損益計算書は予算とも比較してみましょう。そのためには最低でも売上高と売上原価と販管費の3つは予算を作りましょう。
3.売上高と比較して各項目を見れば、自社の収益体制が見えます。結論は営業利益は10%以上確保するということでした。
4.損益には5つの利益がありますが、大事なのは営業利益と当期純利益の2つです。過度な節税は無駄使いに繋がります。
5.損益分岐点を知ることで、自社の利益体質がわかります。損益分岐点比率が80%以下になるように経営努力しましょう。
以上です。
今回の「420万社の経営者に役立つ会計の見方損」はこれで終了となります。
また、新たな経営コラムを開始しますので、おたのしみに!
会計を駆使することは会社の防衛力を強くすることである!