608.収益改善 戦略は必要か

2023年3月18日

これまで中小企業を念頭にして「収益改善」について掲載してきましたが、

最後に規模も小さく人材も少ない中小企業においても「収益改善に戦略は必要か」というテーマについて考えてみたいと思います。

 

1 収益改善に戦略は必要か

「戦略」とは、簡単にいえば「営業のやり方を考えて実行する」ということです。

何も有名な経営戦略やマーケティング理論を参考にして営業戦略を考えることだけが戦略ではありません。

そう考えると、非常に営業環境が複雑に激しく変わる情報過多な現代において営業のやり方をさほど考えることなく

事業を展開していくことは大変無謀だと言えます。

たとえ自分一人の事業でも少人数の事業でも、現代において事業を行う以上、別に大上段に構えなくても戦略や営業のやり方を

考えることは必須です。

ありていに言えば、昔は人口も増える一方で経済規模も大きくなる一方でしたので、思い切って事業を起こす勇気さえ持てば

何とかなったのでしょうが、それももう遥か昔の話です。

いまは人口も減りだしており、さらに人口構成も歪になり、加えて社会全体から昔と比べれば貧しさもなくなり、

もう社会の前提条件が全く違っています。

このことは、いまから事業を起こす人だけでなく、むしろすでに長く事業を行っている人ほど頭を切り替えなくてはならない

ことなのです。

それは何故でしょうか。

それはいま申し上げてきたとおり、これまでと経営を取り巻く枠組みが違ってきているからです。

そのことを「パラダイムシフト」と言います。

いまは昔と経営を取り巻く枠組みが違ってきている!

 

 

2 パラダイムシフトとは

パラダイムとは、「常識とされている思考の枠組み」のことをいいます。

シフトとは、「変わる」とか、「移る」ことをいいます。

つまり、これまでの当たり前だった枠組みが変わってしまっているということです。

日本の経済はこれまで「人口増加」と「生産性の向上」という2のことを前提に成り立ってきました。

人が市場が増えて、欲する人が多くなるので、作れば売れる。

意識するかしないに関わらず、人は増えていくので作れば売れると、ごく自然に思い込んで経営というものを捉えてきました。

しかしそれがいま、「豊かさ」「人口減少」「高齢化」というこれまで経験していないことが起こり出しているのです。

そのうえ長寿化が進み、いまや「人生は百年」と言われるようになりましたが、その一方で年金が減額され「将来不安」が広がり、

人口減少以上に消費が減退するという事態が起こっています。

そしてさらに2020年から「新型コロナウイルス」の影響があったわけです。

新型コロナウイルスに関しては収まる方向に向かっているようですが、これとて先はわかりません。

つまり、非常に激しいパラダイムシフトが起こっており、漫然と経営をしていれば経営できる時代は終わっているのです。

激しいパラダイムシフト下にあり戦略は必須となっている!

 

 

3 中小企業の戦略の基本はニッチと差別化

これまでもいくつかの戦略理論を紹介して来ました。

それぞれ、表現の違いはあるかもわかりませんが、経営資源が少ない中小企業の取るべき戦略の基本はニッチと差別化です。

誰も進出して来ないような小さな市場で、顧客と十分スキンシップを図り、経営資源を集中するということです。

品数よりも品揃え、間接よりも直接販売、そして小回りの利くサービスをスピーディに確実に! そんなイメージです。

ポーターはそのようなことを『集中戦略』と呼んでいました。つまり、地域一番店を目指すということです。

またそのようなプロセスで辿り着く市場のことを『ブルーオーシャン』(青い海)とも呼んでいます。

 

 

4 ニッチと差別化で『市場浸透』

ニッチと差別化でまず成すべきことは、『市場浸透』であり、深堀りです。

一見さんではなく、お得意さんです。

その過程でくみ取った顧客ニーズで新たな商品開発を心がけることで、深み生まれ幅が生じてきます。

アンゾフはそれを『市場浸透』から『新商品開発』そして『新市場開拓』さらに『経営の多角化』とモデル化しましたが、

その中でも中小企業として最も基本的なことは『市場浸透』と『新商品開発』です。

またここまでが普通の中小企業でも辿り着ける『ブルーオーシャン』でもあります。

それ以上は、ごく一部の企業だけが中堅企業化あるいは大企業化してやっていくのでしょうが、当然リターンも大きくなれば、

リスクも大きくなります。

さらには人材も必要になってきます。

 

 

5 いつまでも続く活力ある事業体としていくために

小さな成功でも続けて行くと何とかうまくいっているので、経営も技術も現状の延長線上を辿ってしまうことが多くなります。

そのことを「強み伝いの経営」といいますが、

やがてそれが「型」となり、いつの間にか社長の指示待ち企業体質にさせ、保守的な組織風土を育てていきます。

そしてやがて時代や社会との乖離が大きくなり出し、やがて事業は廃れていくという流れになってしまいます。

しかし事業はたとえ少人数であっても、その従業員の人生そのものとその家族の方の人生も預かっているわけです。

さらにお客様や取引先に対する責任もあります。

その意味では企業は「ゴーイングコンサーン(Going Concern)」を目指さなくてはなりません。

 強み伝いの経営や技術開発に終始するのではなく

企業経営は経営者ではなくお客様を見る経営をしていく必要がある!

 

そこで重要なことは、その取り組もうとしていることが「持続的イノベーション」なのか、「破壊的イノベーション」なのかを

ハッキリ認識して対応を変えていくことです。

 

戦略理論は数多くありますが、いずれもが専門の学者や実力ある経営者が考案したものなので、参考になることは必ずあります。

もし「あまり参考にならない」と思われるのであれば、それは自分の読み込みが足らないと謙虚に理解されるべきかだと思います。

そしてより実務の中で活すのであれば、それらを自社なりに、また自分なりにカスタマイズしていく必要があります。

なぜなら、たとえ同業種であっても同一の企業は一つとして無いからです。

その意味では「当社であればどういうことになるのだろう?」と常に問いかけ、戦略理論を理解する姿勢が大切だと思われます。

戦略理論は常に自分自身に問いかける!