666.経営を強くする BSを読みこなす④
2024年7月12日
資金繰りの改善は、経営にとって大変重要なことだ。なので、ここまでのことをまとめてみる。
1 これからの経営環境
2020年から始まったコロナ感染も終息に迫り、異常だった経営環境からそれまでの通常の経営環境に戻りつつある。
「通常に戻る」ということは、コロナ禍の特別なぬるま湯状態からふつうの湯の熱さに戻るようなものである。
ぬるま湯に体が慣れきってしまうと、突然通常の熱さの湯に入ると体が驚いて、熱くてしょうがないように、
経営もそれなりにそのことを注意していないと、経営の危機が高まってくることもあるということだ。
現に倒産件数は増えており、これからもますます増えると言われている。
通常に戻るとは、危機が高まるということ!
2 BSとPLの位置付け
そこで、会計を経営に活かすことが重要になってくる。
何故か? それはいろいろな経営環境の変化に備えるのための資料は会計資料しかないからだ。
PLは「営業成績を表す」とよく言われるが、経営環境が平穏なときは営業成績だけに気をつけていれば経営は続けられる。
その意味では「PL重視は平時の経営」と言える。
それに対し、経営環境が厳しい局面に入ったときには、常にBSによって自社の経営状況を把握し、舵取りしていく必要がある。
したがって「BS重視は非常時の経営」と言われる。
これからしばらく、経営環境は大きく揺れるので、BS重視で、自社の経営を的確に操縦する経営手腕が求められる。
経営環境が変わるときは、BS重視で非常時の経営を行う!
3 BS分析は経営状況を示すインジケーター
しかしBSを読むには、数値を眺めているだけでは読むことが出来ない。
その数値をいろいろな項目と比べて、初めてその数値が示していることがわかるようになる。
このことを「分析」というが、BS分析は経営状況を示すインジケーターであり、
経営にとっては羅針盤であり、コックピットのようなものである。
読むとは数値をみることではなく、数値を比べることである!
4 経営の司令塔である経営者はBSを読めねばならない
組織にはいろいろな役割があるが、自社の方向性や問題点の是正方針を判断するのは間違いなく経営者の役割だ。
したがって、そのためにも経営者はBSが読めなければならない。
BSは経営進路方向の状況を示している。だから経営者は、BSが読めなければならない。
BSは経営の舵取りの方向性や問題を示している!
5 1社の中小企業は小さくとも、日本全体の雇用の7割を供給している
中小企業1社の従業員数は少ないかもしれないが、それでも全体では、日本の雇用の7割を支えている。
したがって、各中小企業経営者にはそう簡単に潰してはいけない責任があり、使命があると思う。
中小企業は日本の雇用の7割を提供している、その気概を持とう!
6 改善は永遠に続けなければならない
さらに経営改善にはこれで終わりということがなく、企業が続く限り、経営改善に取り組まなければならない。
なぜなら、内外の経営環境が変わり続けるからだ。
したがって、改善は終わりのない旅のようなものであり、それがゴーイングコンサーンへとつながる。
その一丁目一番地が「資金繰りの改善」だ。
経営改善の最重要課題は「資金繰り改善」!
7 資金繰り改善とは手元資金と当座資産の貯えの十分性を確認し是正すること
資金とは手元資金のことであり、加えて拡大解釈すれば、近く資金になる可能性が大きい当座資産が加わる。
したがって、手元資金と当座資産を近い将来生じる資金需要と比べて、その十分性を確認し、問題があれば是正していくことが
資金繰り改善だ。
資金繰り改善とは、手元資金と当座資産の十分性の確認と是正だ!
8 確認のバロメーターは、売上高・流動負債・銀行借入金・負債・固定資産・運転資金との比較
資金の十分性を確認するときに、比較対象となるものが、売上・流負・借入・負債・固資・運資などだ。
1.売上高とは、企業にとっての生活費だ。 生活費は少なくとも向こう3か月分ぐらいは手元に置きたいものだ。
2.流動負債とは、近く支払わなくてならない債務合計だ。 この程度は手元資金として持たないと経営は不安だ。
3.銀行借入金とは、数年かけて銀行に返済する借金だ。 返済がシビアなので、常に借入金と手元資金等とは比較確認する。
4.負債とは、事業で借りている他人資本の合計だ。 他人資本と自己資本のバランスなど、大局に立って管理したいものだ。
5.固定資産とは、事業設備であり長く運用するので資金化されにくい。 自己資本や固定性資本とのチェックをしたいものだ。
6.運転資金とは、売買活動で必要な資金のことだ。 どれほど要るものなのか常に把握し、手元資金と比較しておきたい。
資金確認のバロメーターは、売上・流負・借入・負債・固資・運資の6項目だ!
9 具体的な資金繰り改善方法は各社で考えるしかない
資金繰りにだけに関わらず、経営に関する改善策というものは、他社の事例は参考にはなるが、物真似だけでは改善できない。
たとえ同業者であったも、経営規模や人員・人材そして経営者と、すべて違うので、結局は真似することはできないのだ。
したがって、自社で智慧を出し、自社で考え、そして自社で実行していくしかない。
「奇跡のⅤ字回復」や「必ず良くなる改善方法」という話はよくあるが、そんなものはまずあり得ない。
他社の真似では改善できない、改善方法は自社で考えよう!
10 改善に対する「抵抗」は織り込み済み
何かしら改善しようとすると、経営者自身にも、また従業員にも、必ず抵抗が生じる。
そんなことはできません、そんなことは無理です、などという心のセリフだ。
しかし、このことはごく当たり前のことであり、それによって後退したり、うろたえたりする必要はまったくない。
なぜなら、改善は過去否定から始まるからだ。
過去があって問題が生じているのだから、その過去を改めなければならない。
改善には抵抗やあるいは辞職なども付き物だが、これもどこでも起こっている至って普通の現象だ。
だから、そこを乗り越えなければ、改善はできない。
逆に、そのためズルズル先延ばししていると、やがて切羽詰まった状況になり、ますますハードルは高くなる。
したがって、二進も三進もいかなくなってしまうことが、現実にはよくあることだ。
抵抗感に対する躊躇が、二進も三進もいかせなくさせる!
11 資金繰り改善のための対処項目は決まっている
やり方はいろいろあるが、実は、資金繰り改善のために改善しなければならない項目は決まっている。
それが、手元資金を増やすことであり、売上債権を減らすことであり、棚卸資産減らすことであり、固定資産を減らす・
流動負債を減らす・銀行借入金を減らす・固定性資金を増やす・純資産を増やす・売上高を増やす・営業利益を増やすなどの
10項目だ。
この10項目が改善できれば、自社の資金繰り状況は一変する!
12 資金繰り改善項目、改善のための施策
改善項目と施策は、次のとおりとなる。
1.手元資金を増やす
経費節減、債権期日回収、売上アップ、利益の最大化、その他流動資産の削減、融資申込などをすれば、手元資金は増える。
2.売上債権を減らす
売上債権の期日回収、回収期限の短縮化などすれば、売上債権は早期に手元資金となり、売上債権はあまり増えることはない。
3.棚卸資産を減らす
売れるから仕入するという姿勢では、最後には必ずデッドストックが生まれることになる。
その考え方から販売計画に基づく仕入に切替えれば、棚卸資産は必要以上に増えなくなる。
「次回入庫までお待ちください」と言える勇気を持つことと、そんなことはできないという抵抗感に勝つことが大切だ。
4.固定資産を減らす
遊休固定資産の処分、設備投資採算計画策定とPDCAをすれば、不要な設備はなくなり、固定資産は必要最小限度にできる。
5.流動負債を減らす
販売計画による仕入の見直しと経費節減をすれば、買入債務と未払を減すことができ、流動負債を減らすことができる。
6.銀行借入金を減らす
リスケによって月々の返済額を少なくすれば、手元資金はそれだけ多く残ることになり、減らした効果と同じ効果を得られる。
7.固定性資金を増やす
リスケによる短期借入金と長期借入金の一本化をすれば、長期借入金という固定性資金を増やし、月々の返済も抑えられる。
8.純資産を増やす
黒字経営の継続、無理ない節税などをすれば、繰越利益剰余金の最大化が図れ、自己資本である純資産を増やすことができる。
9.売上高を増やす
既存顧客の満足度向上、新規売上高の具体的目標設定とPDCAマネジメントなどにより、毎年増収を図る。
顧客満足度とは「顧客が感じた価値ー顧客の事前期待値」である。
したがって、顧客の事前期待値に応えるだけでは、顧客満足度はゼロ、つまり当たり前であることを知る。
顧客満足度=お客様が感じた価値ーお客様の事前期待値
10.営業利益を増やす
高付加価値化による販売価格のアップと在庫管理による不良在庫の一掃による原価抑制による売上総利益の最大化を図り、
さらに冗費節減を加えることよって、営業利益を増やすことができる。
自社ならではの具体策を考え、資金繰りの改善を実現する!