515.会計によるリスク管理法⑤ 経営資金

2021年5月15日

リスク管理観点から会計を捉えるシリーズ第5回 経営運転資金

 

 ますます悪化しているコロナ感染状況ですが、事業に対してどのような悪影響が現れてくるのか予測することは難しく、

したがって「守りの経営」への舵取りが重要となっています。

「リスク管理観点から会計を捉えるシリーズ」の第5回は、経営において特に重要な『経営運転資金のリスク管理』がテーマです。

 

1 運転資金とは

 「運転資金」という用語は、曖昧であり、理解することがなかなか難しい用語です。

その意味するところは、おおよそ「毎日の事業に必要なおカネ、資金」というようなことですが、

事業といっても、どこまでの範囲のことを指すのかによって、その運転資金の意味も変わってくるので、

理解を難しくさせているのだと思われます。

 ここでは、ひとつは「毎日の売買に関する運転資金を『営業運転資金』」と定義し、もうひとつを「毎日の経営に関する運転資金

を『経営運転資金』」と呼ぶと定義して運転資金について考えてみます。 今回はその後半、第2回です。

 

 

2 毎日の事業経営に関する運転資金『経営運転資金』

(1)運用している『経営運転資金』とは

 毎日の経営で運用している『経営運転資金』は、会計のどこに示されているのでしょうか?

そのカギは「ワン・イヤー・ルール」です。

1年以内に資金化できる資産を『流動資産』といいました。それ以上の期間をかけて資金化できる資産は『固定資産』でした。

 したがって、毎日とは1年以内で運用を繰り返ししているとも言えますので、毎日の経営で運用している資産とは

『流動資産』のことを指します。

ただし『現預金』は運用とは言えませんので、現預金を除いた流動資産が運用している『経営運転資金』となります。

 具体的には、売上債権、たな卸資産、短期貸付金、仮払金、仮払消費税などとなります。

これらすべてが、毎日の経営でおカネを回して運用している『経営運転資金』です。

 

(2)調達している『経営運転資金』とは

 では、反対に、毎日の経営で調達している『経営運転資金』とは何でしょうか。

そうです、負債にも「ワン・イヤー・ルール」は適用されていますので、『流動負債』ということになります。

流動負債には毎日の経営の中で調達しているあらゆるもの、買入債務、短期借入金、未払金、前受金、預り金、仮受消費税などが

集計されています。

 したがって、現預金を除く流動資産を流動負債で賄えていたなら、「経営運転資金は回っている」ということになります。

 

 

3 『経営運転資金』の考え方

 運用している経営運転資金が、調達している経営運転資金で賄えていたなら、「ひとまず安心」ということになります。

このことを算式で表すと、次のようになります。

 

経営運転資金の要調達高 =(流動資産ー現預金)- 流動負債

 

 これがプラスであれば、経営運転資金の「不足」であり、要調達高となります。通常はほとんどの場合、不足となります。

いい方を変えれば「(短期に返済しなければならない)負債に頼る経営はしていない」ということです。

ということは、普通は「自己資本に頼る経営活動をしている」ということです。

 

 そこで次のようなチェックもしましょう。

 

経営運転資金に対する手元資金の余裕率 = 現預金 ÷ 経営運転資金不足額 ×100

 

これが100%を割るようになると「要注意」です。 少なくとも、常に100%超にはしておきたいものです。

 

 

4 「経営運転資金」のリスク管理

 では、経営運転資金のリスク管理をどのように考えればよいのでしょうか?

 

(1)経営運転資金の要調達額と手元資金のバランスを常に把握する

 「現預金を除く流動資産」と「流動負債」を比べ、現預金を除く流動資産の方が多いということは、ある意味仕方ありません。

なぜなら、経営運転資金はなるべく、自己資本か、それともそれに近い固定負債を合わせて、賄うべきものだからです。

問題は不足する経営運転資金に見合うだけの手元資金が十分あるかどうか、ということです。

 

 どの程度の手元資金があればよいのか、ということは業種・業態で変わりますので、一概には言えません。

まさしく、経営者の判断が問われるということです。

業種・業態を無視して一般的に考えれば、不足額と同額以上の現預金があれば、とりあえず安心なのかもわかりません。

 

(2)経営運転資金の要調達額をなるべく少なくする

 「現預金を除く流動資産が流動負債より多いのは仕方がない」とはいいましたが、

しかしなるべくなら、不足額は少なくしたいものです。 そこで算式を振り返りましょう。

算式は、「経営運転資金の要調達高=(流動資産ー現預金)-流動負債」でした。

この要調達高を小さくするためには、左辺を小さくするか、右辺を大きくするか、のどちらかになります。

 

 右辺を大きくするために「やたら負債を増やせばよい!?」なんてことはナンセンスであることはわかります。

そうすると、課題は左辺「流動資産ー現預金」の運用している経営運転資金をいかに小さくするかです。

 

 となると、「流動資産」を少なくするか、「現預金」を多くするか、ということになります。

つまりそれは、仮払消費税を除いて、売上債権やたな卸資産、短期貸付金、仮払金など、なるべく少なくするということであり、

また現預金を高めるということです。

その具体策を練って、現預金以外の流動資産はなるべく少なくする、現預金はなるべく厚くする、という経営を志向するという

ことです。

 

(3)早めの運転資金対策をする

 さらにリスク管理として大切なことは、常に早めの「運転資金繰り対策」を講じることです。

政府のコロナ対策のように、常に後手後手に回るようなことにならないようにしなくてはなりません。

常に経営運転資金の先行きを予測し、問題が近づいて来ていると判断したなら、すぐに金融機関に相談してみるべきかと思います。

 

ここでもうひと言!

 営業運転資金、経営運転資金とくれば、お気づきの方も多いかと思いますが、あと「設備投資資金」というものもあります。

固定資産の購入である設備投資は、「銀行借入をして購入することが当然」と思い込んでおられる方も多いかもわかりませんが、

中小企業であればあるほど、少しでも自己資本割合を高めて設備投資である固定資産購入をしたいものです。

 そこで、このチェックポイントは次の3点です。

第1チェックポイント⇒ 設備投資は自己資本割合を少しでも高めて行う

 その具体的な方法は、減価償却費相当の金額を準備預金に振り替えて、少しでも手元資金を貯めることを心がけます。

第2チェックポイント⇒ 自己資本による現在の固定資産調達状況を常に把握する

 固定資産に占める自己資本の割合は  固定資産 ÷ 純資産 ×100 =固定比率  で確認できます。

 この固定比率を50%超になるように、経営マネジメントを心がけます。

第3チェックポイント⇒ 適正資本による現在の固定資産調達状況を常に把握する

 固定資産に占める適正資本の割合は  固定資産 ÷(純資産+固定負債) ×100 =固定長期適合率  で確認できます。

 この固定長期適合率は必ず100%未満になるように、経営マネジメントを心がけます。

 

 この中で一番大事なことは、設備は必ず入替える時が来ますので、減価償却費分を手元資金の中で積み立てていくことです。

 

 

つづく・・

 

戦略を考えるにあたって重要なことは、『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いの外、『思い込み』に囚われて生活や仕事をしています。

そしてその結果が「いまである」ということを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。

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