582.わかりやすく 増える社会保険料

2022年9月10日

日本は長寿化によって社会保障費が増大し、少子化によってその負担額は増えざるを得ない状況だ。

その結果、社会保険料は個人・企業ともに、応分に応じた増額を負担をしなければならない。

そのような背景のもと、来月、2022年10月から社会保険料がさらに増額されようとしている。

前々回の当コラムでも「わかりやすく 社会保険料の改正」と題して、改正についてはお伝えしたが、

今回は具体的に10月からどう変わるのか、「増える社会保険料」と題してわかりやく紹介する。

 

▶社会保険の適用が拡大

来月10月から社会保険(健康保険及び厚生年金保険)の適用対象者の範囲が拡がる。

それによって新たに適用対象者となった本人は社会保険料を負担しなくてはならなくなるが、しかしそれはいずれ恩恵を受ける

可能性がある負担だ。

しかしその半分を負担する企業としては、雇用している責任として致し方がない面はあるが、経営的には大きな負担となる。

したがって、しっかりとした経営手腕が問われることになる。

社会保険の適用拡大はしっかりとした経営手腕が求められる!

 

従来は、法人企業と、5人以上の従業員がいる個人事業者(但し、農業・漁業は除く)が対象だった。

しかしこの10月からは士業の個人事務所も加わることになる。(これまで士業が加わっていなかったことが驚きだ!?)

つまり、強制適用事業所の範囲が拡大されるわけだ。

 

問題はここからだ。

社会保険に加入しなければならなかった人は、もともと、正社員とその4分の3以上の時間勤務をするパート・アルバイトだった。

しかし2016年、従業員501人以上の大企業に関しては、労働時間が週20時間以上30時間未満のパート・アルバイトも加入対象と

なった。

それが来月、2022年10月からは、従業員101人以上の企業にも適用されることになった。

つまり、従業員規模は5分の1となったわけだ。そうすると、多くの中小企業が該当するようになり、いま大騒ぎとなっている。

しかし2年後の2024年10月からは、それが51人以上まで拡大されることが決まっているので、いよいよ中小企業も全社社会保険に

加入しなければならない時代となっている。

社会保険の強制加入は2024年10月からは従業員51人以上の企業にまで拡大される!

 

 

▶加入事務所での対象者要件

加入対象者要件は次の通りとなる。

 ①週の所定労働時間が20時間以上

 ②2カ月を超える雇用見込みがある

 ③月額賃金が8万8000円以上

 ④学生でない

学生以外の多くのパート・アルバイトが加入対象に該当する可能性がある!

 

 

▶社会保険の加入で本人の収入はどう変わる

では、社会保険加入対象になれば、本人の収入はどう変わるのか、考えてみよう。

設例として、夫の扶養範囲内(年収130万円未満)で、週20時間以上勤務する主婦で考えてみる。

(1)年収105万6000円から社会保険に加入

これまで、年収が130万円未満であれば、夫が勤務している企業で国民年金や国民健康保険料を払ってくれていた。

年収が130万円以上になれば、夫の社会保険から外れ、主婦自身が国民年金などに加入して保険料を支払うことになっていた。

それがこの10月からは、月額賃金が8万8000円以上であれば、健康保険と厚生年金保険に加入しなければならなくなる。

年収ベースで105万6000円(=88,000円×12)以上であれば、月額社会保険料は12,000円ほどとなり、給与からその額が天引き

されることになる。

尤も、同額を企業が負担しているので、本人負担はあるけれど、将来的な保障やいざという時の保障は手厚くなるという大きな

メリットがある。

 

(2)手厚い保障の内容

将来的な保障とは、「老齢年金」や障害を負った時の「障害年金」、あるいは亡くなった時の「遺族年金」のことだが、

それらは国民年金だけの場合は基礎年金部分のみであった。

しかし、社会保険に加入後は、2階建てといわれる厚生年金部分が加算される。

また、いざという時の保障とは、業務外のケガや病気の時などには健康保険から「傷病手当金」として1年6ヵ月間、

給与の約3分の2を受け取ることが出来るようになる。

さらに女性の場合は、産前産後休業の最大98日間、「出産手当金」として、給与の約3分の2が受け取れる。

 

(3)注意事項

社会保険に加入して、扶養から外れる場合は、配偶者の企業へ扶養を外す手続きが必要となるので、覚えておこう。

また逆に、社会保険料の負担を避けるために社会保険に加入しないと判断した場合は、週20時間未満で勤務することが

必要となることを覚えておこう。

なお、これまで自身で国民健康保険と国民年金に加入していた人が、社会保険加入対象者となり、

健康保険と厚生年金保険に加入した場合は、企業が健康保険料と厚生年金保険料の半分を負担するので、

個人で負担する社会保険料は下がり、かつ保障が拡大するというメリットも出てくる場合もある。

 

 

▶扶養範囲内で働く人の注意点

扶養範囲内で働く人の「これまで」と「2022年10月から」を比較すると、次のようになる。

 

(1)保険料の負担

これまでは、年収130万円まで本人負担ナシ、130万円を超えれば本人負担で国民健康保険と国民年金に加入しなけばならない。

それに対して、来月10月以降は、年収105万6千円までは本人負担ナシ、105万6千円を超えれば企業と本人が折半し、健康保険と

厚生年金保険に加入しなければならない。

 

(2)年金の支給

これまでは、「基礎年金」だけであった。

それが来月10月以降は、社会保険に加入すれば、基礎年金の上に「厚生年金分」が積まれ、厚生年金部分の年金が増えることに

なる。

 

(3)扶養でない人の保険料の負担

これまでは、本人が負担し、国民年金と国民健康保険だけであった。

それが来月10月以降は、厚生年金保険と健康保険に加入すれば、その保険料は企業と本人で折半となるので、

本人負担分は減少することになる。

 

 

これからは働き方も多様化し、それに連れて社会保険や税制なども変わるが、企業の使命と本人の働く目的が大切だといえよう。