578.わかりやすく 働き方改革
2022年8月12日
再更新日:2022.09.13
急激な円安とエネルギーコストの上昇、そしてそれらをもらたしていると思われるロシアによるウクライナ侵略と中国の台頭・・。
一方、国内に目を向ければ、収まらないコロナ感染者数と安部元総理暗殺の要因ともなったといわれる統一教会の問題などに報道の
目は向いており、いま日本の社会構造を変えようとする変革が実施あるいは準備されているのに、あまり報道されなくなっている。
しかしそれらの変革は事業に大きな影響を確実に与えるので、仕事や経営のやり方を変えないと事業継続は出来なくなってしまう。
そこで今回は、改正個人情報保護法、インボイス制度に続いて、『働き方改革』を取り上げる。
『働き方改革』は2019年4月に施行され、すでに3年6カ月が経っている!
▶働き方改革とは
最近、マスコミに取り上げられることが少なくなった『働き方改革』だが、しかし改革はスケジュール通りに進められている。
そもそも、その目的は次のとおりだ。
1.労働環境を大きく見直す →長時間労働を是正する
2.働く意欲を持つ人に働きやすい社会をつくる →多様で柔軟な働き方を実現する
3.労働人口を増やし生産性を上げる →雇用形態に因らない公正な待遇を確保する
つまり、競争力が落ち、かつこれからの少なくなる一方の労働人口を踏まえた、日本経済の再成長戦略でもある。
これまで労働力として迎えることができなかった人たちを、労働環境を変えて迎え入れるとともに、働く人のやる気が出る仕事と
賃金を上げることで労働人口を増やし、再び生産性を高めようとする改革だ。
したがって『働き方改革』は非常に重要な制度改革であり、労働基準監督署などが先頭に立って、その制度定着を図っていくものと
思われる。
『働き方改革』は制度定着に向けてますます指導強化されていく!
もう、「人を安く雇う」とか、「人を雇てやっている」とか、「社長はえらい」とかなど、そんなことは疾うの昔(とうのむかし)
の話なのです。
▶働き方改革の概要
『働き方改革』は、いまから3年前の2019年4月に施行された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」だ。
略称「働き方改革関連法」とも呼ばれる。
早や、3年6カ月が経とうとしている。
なお、働き方改革関連法は、
労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法、パートタイム労働法、労働派遣法、労働時間等設定改善法、じん肺法、雇用対策法の
8労働法を改正する法律の総称です。
一部の法律は、中小企業の準備期間を考慮して、施行が先延ばしされていたが、いまはそのほとんどが大企業・中小企業問わず
施行されている。 その働き方改革関連法の概要は次のとおりだ。
(1)時間外労働(残業)の上限再設定
残業時間の上限が、設け直されたということです。
これまでは、1ヵ月間では45時間、年間では360時間が上限であった。
しかしその制限に抜け穴があり、事実上は制限なく残業させることが可能であったと言われる。
そこで『働き方改革』では、残業時間の上限を「月45時間、年間360時間」を原則とし、特別な場合でも年間6ヵ月を限度に
「月100時間未満、年間720時間、複数月平均80時間」が上限として改正された。
この上限規制はすでに大企業・中小企業問わず、適用となっているので要注意だ。
残業時間は月45時間、年間360時間以内が基本原則!
特別でも年間720時間・単月100時間未満・複数月平均80時間が上限!
(2)年次有給休暇の取得
有給休暇が「年10日間以上ある従業員」に対しては、最低でも5日間取得させることが、どの企業にも義務付けられた。
有休は最低でも年5日取得させる!
(3)勤務間インターバル制度の推進
インターバル制度とは「連続勤務を強要してはいけない」という制度だ。
具体的には、前日と翌日の勤務の間に、一定時間の休息確保が求められるようになった。
もう、連続の徹夜勤務は強要できない。
如何なる事情があろうと、日付をまたぐ連続勤務は強要できない!
(4)中小企業「時間外割増率猶予措置」の廃止
労働基準法では、1日8時間、週40時間を超えて従業員を働かせた場合、残業に対して「25%以上」の割増賃金を支払うことが
義務化されている。
月60時間超の残業に対しては、さらに「50%以上」の割増賃金を支払うことが義務化されている。
このうち、「月60時間超に対する50%以上の割増賃金」は、いま現在は中小企業に対して「25%」に据え置きされている。
しかし、来年2023年4月からは、大企業と同様「割増率50%」が義務化される。
これだけがいま現在、猶予されている唯一の『働き方改革関連法』だ。
「時間外割増率50%」の猶予は2023年3月まで、4月から「50%」になる!
(5)産業医の機能強化
産業医の機能強化とは、経営者は産業医に必要な情報を提供し、産業医の勧告を衛生委員会に報告しなければならないという
制度です。
経営者は産業医に情報提供をし、勧告を衛生委員会に報告する義務がある!
(6)同一労働同一賃金
同一労働同一賃金とは、同じ仕事なら、たとえ契約形態が正社員とパートであっても、同じ報酬を支払うという制度です。
つまり、正社員と非正規労働者とで、待遇差をつけてはいけないということだ。
さらに、派遣労働者の派遣先又は同種業務労働者との均等待遇を実施することや、正社員との待遇差の内容や理由を説明することが
義務化されている。
社員とパートであっても、同じ労働であれば同じ賃金でないといけない!
(7)高度プロフェッショナル制度の創設
高度プロフェッショナル制度とは、一定の収入(1075万円以上)がある従業員に、高度な専門性知識が必要とする業務に従事させ
る場合は、本人同意があれば、労働時間及び休日・深夜の割増賃金等の規定から適用除外できるという制度だ。
他の働き方改革と比べると、少し逆行しているような気もするが、制度主旨を正しく理解して、活用することが大切だ。
高度プロフェッショナル制度は本人同意があれば労働時間等の適用を除外して
仕事の能率を上げることも可能!
(8)「フレックスタイム制」清算期間の延長
フレックスタイム制度の清算期間は、いままでは1ヵ月単位であった。
それがこの改正によって、「3ヶ月間」に延長できるようになった。
これによって、多様で柔軟な働き方の実現が図れる。
フレックスタイム制度の清算期間延長はすでに始まっている!
こうやってあらためて「8つ」の働き方改革関連法を確認すると、中小企業の「時間外割増率猶予措置」以外はすべて施行開始され
ていることがわかる。 あなたの会社は対応できてますか?
▶ 働き方改革で定義する「中小企業」とは
『働き方改革』では、一部、企業規模で施行時期が違うが、「中小企業」とはどのように定義されているのか?
『働き方改革』の主管省庁である厚生労働省では、次のように定義している。
上表「常時使用する労働者数」とは、常態的に使用している労働者人数のことを指す。
したがって、臨時的な雇用目的のパート・アルバイト以外は、すべて「常時使用する労働者数」に含まれる。
上記の定義は、資本金”または”ということなので、パート・アルバイトまで含む労働者数によって、意外と大企業と分類される
中小企業が多いかもわからない。
この『働き方改革』の背景には、国際社会と比べて「生産性や賃金が低い」といわれている日本の企業に対して
1.生産性をあげさせる
2.労働者の労働時間を減らさせる
3.労働者の賃金を下げない、否、むしろ上げる などがあるといわれている。
したがって、この『働き方改革』を追従的に「対応しなければいけない」と消極的に捉えるのではなく、
「働き方改革を機会に会社のあり方を変える!」、そして「永続的に続く事業にする!」と、前向きに捉えて変革させていく
ことの方が、正しい『働き方改革』の捉え方だと思われる。
世の中は変化している、よって経営も変えて行かねばならない!