16.効率性分析の種類

2009年9月5日

効率性とは
効率性分析とは、調達し投下した資本が効率的に運用されているかどうかということです。たとえば、3千万円の資金調達をしてA社とB社はそれぞれ事業を始めたとします。A社はそれで売上を4千万円上げました。B社はそれで売上を3千万円あげました。はたして皆さんはどちらの会社が優秀だと思いますか?
最終的な利益の話はしていませんので、利益的にはわかりませんが、しかし、同じ3千万円を投下して事業を始めたなら、より多くの売上高を上げた方が効率的だと思いますよね。これが効率性分析です。
事業目的は社会に貢献することですが、その成果が売上高であり、利益だと言えます。如何に少ない資金で大きな利益を稼ぎ出すかが良いビジネスモデルだと言えます。効率性分析は主に、資本あるいは資産と売上高や利益を比べて判定します。

効率性に関する分析
(1)会社全体の効率性を見る
①総資本回転率
この指標は効率性分析の中でも一番ベーシックなものです。総資本、これは(繰り返し言いますが)社長さんが調達された自己資本と他人資本からなる事業資金です。この事業資金で材料や商品を含めた資産を購入し、営業経費と人件費、その他を費やしながら、営業活動を行い、売り上げて行くわけですが、この総資本回転率とは成果の売上高と最初の調達資金(総資本)とを比べて、総資本何倍の売上高を上げたかと言うことです。
例えば、総資本回転率が2.0であれば、調達資金を運用して2倍の売上を上げたということです。一般的には、1.5であれば“優良”、0.7以下であれば“危険”と言われています。しかし、販売不振のトンネルが続く現在、安売り傾向が強い現在、1.5の総資本回転率を確保することはなかなか難しいことです。
総資本回転率を高めるためには売上高を伸ばす必要がありますが、これだけ厳しい経営環境の中、むしろ如何に総資本をスリムにするかということがポイントになります。総資本のスリム化とは、具体的には銀行借り入れを減らすことです。また、効率をあげるとはスピード経営を行うということであり、ターゲットを絞りに絞り込み、絞り込むことによってターゲットをより具体的に鮮明化し、キャッチコピーやアピールポイント、デザインあるいはサービス等を高め他社との差別化を図ったり、オンリーワン企業になるということです。
②総資本利益率
この指標は一般的には「収益性分析の指標」と言われていますが、効率性の指標でもあるのです。つまり、総資本回転率の分子を「売上高」から「利益」に置き換えることによって、調達資金の利益効率性が評価できると考えられます。「一体、この調達資金でどのくらいのリターンを稼いでいるのか」ということです。いくら売上が多くとも利益がなければビジネスモデルとしては成り立ちません。現在、総資本利益率は業種を問わず軒並み2%を割り込み、1%前後から飲食業界においてはマイナスという状態です。バブル前後の時には平均4~5%あったわけですから、このことからもいままでと同じような経営管理では事業が難しくなっているということがお分かりになるかと思います。
いま会計ブームではありますが、その意味では会計の仕組みを知ることが重要なのではなく、その結果レポートされた会計資料を経営陣が活かせるかどうかという、“会計レップ能力”とでもいえる会計資料の活用力が重要だということです。
(2)会社ミクロの効率性を見る
会社のマクロ的効率性は上記の二指標で判定できますが、ミクロ的効率性を見るには「回転期間」と呼ばれている指標を見ます。
回転期間とは、簡単に言えば売上何日分に相当する資産や負債を持っているかということです。経営に問題がなければ、資産が少ないことに越したことはありません。何故ならば、調達資金が少なく済むからです。調達資金が少なく済むということは、自己資本の割合が高くなる可能性が高くなるということであり、ひいては固定負債が少なく済むということです。ということは有利子負債が抑えられますから、安定した経営ができることになります。
①売上債権回転期間
売上債権とは、売掛金と受取手形のことです。売上債権回転期間とは、売上何日分に相当する売上債権額があるかということです。
例えば売上げてから(納品してから)翌月に請求し、その翌月に手形を受取り、受取手形の期日が1ヵ月後であれば、売上げてから現金化して入金されてくるまでに“3ヶ月!”もかかるということになります。極端に言えば、3ヶ月間お金が入ってきませんから、3ヶ月間の給与や経費、あるいは仕入資金は別に用意しなければなりません。このことを“運転資金”といいますが、もし1日あたりの平均売上高が10万円だったら900万円も運転資金が必要となります。一般的には、売上債権回転期間は40日程度ですが、もっと短縮できる方法は必ずあると思います。
その糸口は「いままでがこうだったから」というこれまでの経験の上に立って考えないということです。
②買入債務回転期間
買入債務とは、支払手形と買掛金のことです。買入債権回転期間とは、売上何日分に相当する買入債務額があるかということですが、売上債権回転期間と裏腹の関係となります。
買入債務回転期間が仮に60日あるということは、60日間無利子で資金を借りていると同じことになります。つまり長ければ長いほど、自社にとって好都合となります(ずぅ~と永遠的に伸びれば“ただ”ということになる?)。しかし、そんな自己本位の会社は必ずうまく経営はできません。売上債権回転期間を短縮したいと自社が考えているのと同様、仕入先企業も考えており、それは自社にとって買入債務回転期間が短くなるという形で現れてきます。
取引先同士が協力し合って、ウィンウィンな関係を作ることが本当に大事なことだと思います。
③棚卸資産回転期間
会社の金食い虫が意外と棚卸資産に多いことは、ご承知のとおりです。品切れしないようにと考え、ついつい多めに仕入れをしてしまいがちとなります。
在庫は、売れていない状況だということです。その在庫のための支払はとっくに済んでいます。また倉庫の賃料も必要になります。業種によってはさまざまな保管料も必要となります。さらにそのために短期借入でもしていれば、金利もかかっています。本当に棚卸資産、在庫は金食い虫ですね。平均的には飲食業や生鮮食料品店等を除けば、14日前後というところです。
この在庫を減らすためにはどうすればよいのでしょうか?意外と総資本回転率のところで述べた「ターゲットを絞りに絞り込む」ということが効果を生みます。何故なら、仕入商品の絞り込み(品種の絞込み)ができるからです。それと計画経営、経営計画をしっかり立てると同時に、その計画に基づいて欲張らない(ボリュームの絞込み)ということです。

以上、この他にもさまざまな回転期間がありますが、説明した3つの回転期間がどの会社にとっても大事な“回転期間の王様”というところでしょうか。このほかの回転期間も考え方は同じですので、ぜひ自社にとって気になる回転期間については調べてみてください。

次回からは一つ一つの財務分析について、“実務的に”(筆者は会計について正しく知るよりも、少々粗くても直感的に会計がわかる力が経営陣にとって重要だと思っています)その見方と結果の改善の仕方(これがまたまた重要)を説明していきたいと思います。 どうぞ、お楽しみに・・

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