457.会計で経営力を高めるシリーズ 未払金等

2020年3月28日

第8回会計で経営力を高めるシリーズ『未払金、未払費用』

 

1 未払金と未払費用の違い

 どちらの用語も「未払」という言葉で始まっていますが、どう違うのでしょうか。

 また、分けることにどのような意味があるのでしょうか。

 会計学的にはその違いについて、難解ですが詳しく説明されていますが、ここでは実務的な説明を行います。

 

(1)未払とは未だ代金を支払っていないもの

 まずひとつは、どちらも役務の提供をすでに受けていながら、その代金を支払っていない状況のことを指します。

 例えば・・ 事業用の車両を購入し、納車はされているが、まだ代金は支払っていない。

       水道や電気・ガスを使い、その請求書は届いているが、まだ引落されていない、あるいはまだ支払ってない。

 いろいろあります。

 

(2)いずれも負債の流動負債に表示される

 いずれも「負債」の科目であり、かつ「流動負債」に属して表示します。

 つまり、未払は、他人から資金を「調達」している状態であり、かつ早々に支払わなければならない「債務」ということです。

 

(3)未払金と未払費用の区別

 未払金と未払費用との区別は、一過性のモノか、それとも、継続性のモノかで、判断します。

 ・一過性のモノの例

  車両など固定資産の購入、事務用品や消耗品の購入、ウェブサイトの制作費、役員からの借入、などは「未払金」です。

  ただし、支払が未確定(役員借入など)の場合や1年を超える場合(固定資産の購入など)は、固定負債に属する

  「長期未払金」に計上します。

 ・継続性のモノの例

  給料(月末締め翌15日支払など)、社会保険・労働保険料(当月分を翌月納付するため)、借入利息(当月分を翌月に支払う

  ため)、水道光熱料(当月分を翌月に支払うため)、通信料(当月分を翌月に支払うため)、リース代(当月分を翌月に支払う

  場合)、広告宣伝料(当月分を翌月に支払う場合)、などは「未払費用」です。

  ただし、コピーなどのレンタルは「賃借料」として計上します。

  また、売上原価に関係するものは「買掛金」に計上します。

 

「未払金」か「未払費用」かは、一過性のモノか、継続性のモノかで判断する!

 

 

(4)未払金と未払費用に分けることに、どのような意味があるのか

 税金のための会計(税務会計)や金融機関等に提出する決算書のための会計(財務会計)であれば、

 未払金と未払費用を区別しても、利益や所得は変わりませんから、意味はありません。

 しかし、会計で経営力を高めようとする会計(管理会計)をするのであれば、区別をしなければなりません。

 何故なら、そうしないと「読み取れる情報」が少なくなるからです。

 

「未払金」と「未払費用」に分ける意味は、会計で経営力を高めるためにある!

 

 

2 未払金・未払費用の管理の仕方

   未払金  残高1,000,000円

   未払費用 残高2,000,000円

 これだけで、何か掴めますか?

 未払金が100万円あることはわかります。また同じく、未払費用も50万円あることがわかります。

 ただそれだけです。

 未払金や未払費用の中に、具体的に何がいくらあるのか?とか、前年と比べてそれぞれが増えているのか減っているのか?など

 全くわかりません。

 それで「経営をコントロールする」といっても、土台、無理な話です。

 船舶で例えれば、こんな海図で安全な航行をすることはできません。

 

 そこで前回の「借入金」と同様、内訳管理をすることが、経営管理するうえでは大切なのです。

 こんなイメージです。

 (イメージ例) 流動負債 未払金             1,000,000円      前年同月  300,000円

              〔内訳〕事務用消耗品費    200,000円      〃     200,000円

                  備品・消耗品費    300,000円      〃     100,000円

                  ウェブサイト制作費  500,000円      〃         0円

         流動負債 未払費用          1,750,000円      前年同月 1,530,000円 

              〔内訳〕給料        1,000,000円      〃     950,000円

                  社会保険料      140,000円      〃     120,000円

                  労働保険料       10,000円      〃      10,000円

                  借入金支払利息     20,000円      〃      20,000円

                  水道光熱料       40,000円      〃      30,000円

                  通信料         30,000円      〃      20,000円

                  リース代        130,000円      〃      100,000円

                  広告宣伝料       90,000円      〃      30,000円

                  地代家賃        250,000円      〃      220,000円

                  ガソリン代       40,000円      〃       30,000円

 これであれば、何が具体的に増減しているのかわかりますので、コントロールすることができます。

 

未払金・未払費用は「内訳管理」で、経営力をアップ!

 

 

3 未払の状況を判断する 

(1)売上高と比較して判断する

 未払金・未払費用とも結局はコストですので、コスト・パフォーマンス(コスパ)を上げる必要があります。

 つまり、売上高に対してどのくらい占めているのかということです。

    (未払金+未払費用)÷ 売上高 =未払金・未払費用対売上高比率

 基本的には「未払金・未払費用対売上高比率」は増やさないことが大事です。

 

(2)未払金は事前確認が必要

 未払費用は継続的に発生するという特徴があり、年度ごとの金額変動は少ないと言えます。

 しかし、未払金は一過性の性質がありますから、年度によって大きく金額が変動すると考えられます。

 したがって、未払金を計上するような取引に対しては、事前に経営の状況などを踏まえて、

 「いま購入しなければならないのか?」と確認する必要があります。

 

未払金を計上する取引は実行前にいま一度確認をしてみる! 「必要なのか?」

 

 

 

このようなことを考えながら会計資料を見ていると、会計で会社が徐々に強くなってきます。

どうでしょうか、会計は意外と楽しいもので、経営に役立つものだと思われませんか。

少しでもそのように思われてきたのなら、それだけ貴社の経営力が高まって来ていることを示しています。

会計を楽しみながら、荒波に強い会社になるよう取り組みませんか!?