22.債務償還力③ギアリング

2009年10月26日

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財務分析解説コラム(6) 当社の債務償還能力は大丈夫?自己資本、何倍の他人資本を利用しているのか -ギアリング比率-
前回は債務償還能力の『インタレスト・カバレッジ・レシオ』について説明をしました。今回は債務償還能力の第3回目、『ギアリング比率』について説明します。

ギアリング比率とは
前回のインタレスト・カバレッジ・レシオに引き続き、今回も横文字の「ギアリング比率 Gearing Ratio」です。う~ん、難しそうですね。
ギアとは、皆さんもよくご存知の、自動車のギアのギアです。ギアはもともと動力を伝える仕組みであり、歯数のちがう歯車を組合せて、減速や増速に用います。総資本(会社が事業のために調達した資金でしたね)にもよく似たことがいえます。総資本には、他人資本と自己資本がありましたね。全く自己資本が無い会社には他人はお金を貸しませんね。会社としては、自己資本を元手に必要資金を調達しなければなりません。この構図はギアの連動(リング)とよく似ており、「自己資本」というギアで、「他人資本」というギアを動かすと例えられます。従って、ギアリング比率は次のような計算式で求めます。
計算式:ギアリング比率=他人資本(負債の部合計)÷自己資本(純資産の部合計)
会社の自己資本(自己資金)に対して、何倍の他人資本(借入)を使用しているか、負債の割合を示す比率となります。またギアリング比率のことを、ギアリングレシオとかレバレッジ比率、負債比率ともいいます。

ギアリング比率の見方
一概にどうであれば良いとはいい難いですが、中小企業であれば、原則、低ければ低いほど「良い」と考えて良いと思います。「低い」(つまり100%以下)とは、他人資本より自己資本の方が多いということですから、少なくとも財務体質は安定しているといえます。ただ、経営の積極性や効率性から評価すれば、評価は低くなります。儲かっている会社であれば「もっと資本を大きくして儲ければ良いのでは」ということになるからです。これとよく似た財務分析値に「自己資本比率(自己資本÷総資本)」があります。ギアリング比率が100%ということは、他人資本=自己資本ということですから、自己資本比率は50%ということになります。従って、「ギアリング比率が低い(他人資本<自己資本)」ということは、自己資本比率が高いということなので、金融機関からの評価は高くなります。

ギアリング比率を改善するには
計算式から考えれば、他人資本を減らすか、自己資本を増やすかということになります。
(1)他人資本を減らしてギアリング比率を改善する
具体的には、支払債務などの支払サイト(期間)を短縮する、借入金などの有利子負債を削減するなどが考えられます。支払債務の支払サイトを短縮するとは、支払手形や買掛金を減らすことであり、支払い条件の交渉や仕入数量の検討、仕入商品の絞込みなどがあげられます。借入金の削減とは、遊休資産などがあれば売却して早期返済することなどが考えられます。
(2)自己資本を増やしてギアリング比率を改善する
自己資本を増やすとは、一番の王道は利益拡大による内部留保の積み増しです。利益拡大とは、まず「売上-利益=経費」の考え方(残ったのが「利益」だという考え方ではなく計画した「利益」を確保するために経費を抑えるという考え方)を徹底し、経費管理を行うということです。さらに原価率を抑え、売上総利益を増やすことです。そしてさらには売上高を拡大するということです。売上高拡大に関しては、現在は少子化によるマーケット収縮化の時代です。従って、単純にいえば、販売地域を拡大するというのが基本になります。国内でいえば、地元からエリアへ、エリアから全国へという考え方になり、さらに海外進出へということになります。海外もこれからの成長地域である東南アジアがターゲットとなります。「我が社は中小企業だから海外進出なんて無理」なんて考え方は固定観念です。いまはインターネットを活用すれば、簡単に海外進出はできます。
また小手先の対応とはなりますが、役員借入を資本金に組み込むというのもひとつの改善策となります。しかし、これはギアリング比率自体が改善されても、実態は何も変わってはいないということになります。

いかがでしたか、自社の債務償還能力についてご理解いただけましたか。チョッと理屈がわかれば意外と簡単です。では、ここで債務償還能力のおさらいです。
『債務償還年数』とは、借入金を会社本業の利益=営業利益で、何年で返済できるかということでした。 なんとか10年以内で返済できるようにしたいものですね。
『インタレスト・カバレッジ・レシオ』とは、営業利益と支払利息の比率で、営業利益が支払利息の何倍かを見る指標でした。 10倍以上が理想的、1倍以下は危険(当たり前!)、3~6倍は欲しいところですね。
そして今回の『ギアリング比率』とは、負債と純資産の比較で、低いほど財務体質が良いということでした。 できれば100%内に抑えたいところです。

ずいぶん乱暴な説明をしましたが、経営で活かすためにはこの程度で十分だと思います。
これからは時代は大きく変わり、『膨張の時代』から『収縮の時代』に入っています。だから「これまでと同じことをやっていてはダメ」ということです。会計に対しても同様です。いままで社長さんが読めなくともさほど困ることになりませんでした(なぜなら膨張時代でしたから)。しかしいまからは収縮の時代です。社長さんが会計が読めないと、倒産の淵がすぐそこに迫っているのに、気づくことすらできません。
時代は違っているのです。自社にちょっとしたチェンジというスパイスをふりかけましょう。

次回もお楽しみにしてください・・