202.覚えなくとも読める財表-5

2015年1月7日

第4回 覚えなくとも読める財務諸表 -現金・預金の読み方-

今回からは財務諸表(月次試算表や決算書)の一つ一つについて読み方をご紹介します。
ところで、財務諸表は貸借対照表と損益計算書から成り立っていると思われている読者が多いと思いますが、
実務的には『総資産』『総資本』『損益計算』の3つから出来ていると理解されたほうが良いと思います。
総資産は「会社の財産状況」を表します
総資本は「会社の資金の出所」を表します
損益計算は「会社の営業成績」を表します
それらを組み合わせて会社の経営状況が判断でき、改善の処方箋を読み取ることができます。

できればこのことを覚えておいてください。いつの日か、理解の手助けになることがあると思いますので・・・。

 

試算表や決算書を見ると、最初に「現金」や「当座預金」「普通預金」「定期預金」、少し間を置いて「有価証券」などの文字が
目に付くと思います。現金・預金を併せて『現預金』と呼び、有価証券を加えて『手元流動性』と呼びます。
さて、それぞれの金額は試算表や決算書を見ればわかりますが、果たしてどう判断すれば良いのでしょうか。

 

そこで思い出してほしいのが「日常の生活感覚で判断するればよい」という言葉です。
会社だから、事業だからといって特別なことはありません。それが私たちの商売です。
家計感覚でダメなものは商売でもダメなのです。

 

では、日常での手持ち現預金の額を何で十分か、不十分か、判断しますか?
何で十分か、不十分か、判断しているのか考えれば、会社の現金・預金を判断することができます。
1ヶ月の生活費、借金の返済額・・・。ぜんぶ正解です。
そうです、経営者のあなたが思われる『尺度』で現預金を測ればよいのです。
ここで一般的な尺度を3つご紹介しましょう。

 

1.平均月商と比べる
平均月商とは、家計でいえば、1ヶ月の生活費であり、1ヶ月の収入に当たります。
その何ヵ月分の現預金があるかによって、安心度のバロメーターとなります。
経営では安心度のことを『安全性』という言葉で統一されています。
1ヶ月分の現預金があれば、取り合えず安心ということになりますが、安全性という観点からは3ヶ月程度は目指したいですね。
これが『評価』となります。

経営分析ではこのことを『手元流動性比率』と呼んだりしています。

 

2.借金と比べる
借金とは、家計でいえば、ローンということになります。会社でいえば、借入金です。
借入金と比べてどの程度の現預金があるかによって、安心のバロメーターとなります。
借入金の状況(残り返済期間など)などによって違いはあるかと思いますが、ざっくり考えれば2割から3割程度の現預金は持っていたいですね。
例えば1千万円借り入れた場合、5年で返済するのであれば、元金だけで月約17万円、年200万円の返済となります。
2~3割ということは200万円から300万円の現預金が手元にあるということですから、まずは安心ですよね。
このあたりのことをどう判断するかは、まさしくあなたの経営スキルです。
なお、借入というと返済のことばかり考える経営者が多いようですが、目的は稼ぐために借りるわけです。
したがって、借入のパフォーマンスを考える必要があります。
つまり、借入(設備投資)採算計画が重要であることをつけ加えさせていただきます。

経営分析ではこのことを『現預金対借入金比率』と呼んだりしています。

 

3.短期債務と比べる
短期債務とは、家計でいえば近く支払わなくてはならない、クレジットの支払や保険の支払あるいは子供の塾代などです。
会社でいえば、買掛金や未払金あるいは短期借入金などです。
短期債務には翌月に支払うものから1年以内に支払うものまでが含まれていますから、現預金が100%以上あればそれは理想的ですが、一般的には50%前後程度は持ちたいところです。

経営分析ではこのこと『現預金比率』と呼んだりしています。

 

このように現預金を見れば、自社の安全性や資金繰りについてもある程度、読むことができます。
他社と比べたり(TKCの事務所であればできます)、過去と比べて、自社の現況を判断することも大切ですが、
一番重要なことは経営者として『自社の指標』を持ち、常にそれを目指してインプルーブ(改善)することです。