538.閑話 インボイス制度の申請が始まる

2021年10月29日

『インボイス制度』、この言葉を聞いたことがある方は多いと思います。

このインボイス制度が2年後、2023年10月1日から始まります。

 

そのインボイス開始にあたって

『適格請求書発行事業者』の登録申請がこの10月1日から始まっています。

今回は「新.財務諸表」の閑話として、この『インボイス制度』をわかりやすく紹介します。

 

 

1 インボイス制度とは

日本においては、2023年10月1日から事業者を対象に始まる、消費税の新しいルールなのです。

何が新しいルールなのかといえば、それは「何でもかんでも仕入税額控除ということにはならない」ということです。

現在は、どの事業者でも、売上のときに預っている消費税から仕入などのときに支払った消費税を引くことができ、

事業者はその差引額を消費税の納付額として納付する仕組みとなっています。

この預っている消費税のことを「仮受消費税」といい、逆に支払っている消費税のことを「仮払消費税」といいます。

そして、消費税の納付額は「仮受消費税ー仮払消費税」で計算できます。

しかし、2年後の2023年10月1日からは、そうも行かなくなります。

 

 

2 インボイスとは”申請登録した事業者”が発行する請求書のこと

”申請登録した事業者”のことを『適格請求書発行事業者』といいます。

2023年10月からは、この適格請求書発行事業者の請求書に基づいた仮払消費税でないと、消費税は引けなくなります。

 

たとえば、売上が1000万円、仕入が300万円、経費が100万円であった場合・・・

 (1) 仮受消費税   100万円(売上1000万円×10%)

 (2) 仮払消費税    40万円(仕入300万円×10%+経費100万円×10%)

 (3) 消費税納付額   60万円(仮受消費税100万円ー仮払消費税40万円)

   が、いまの消費税納付額の計算です。

しかし、経費がすべてインボイスでなかったら・・・

 (1) 仮受消費税   100万円(売上1000万円×10%)

 (2) 仮払消費税    30万円(仕入300万円×10%)

 (3) 消費税納付額   70万円(仮受消費税100万円ー仮払消費税30万円)

   となり、70万円を消費税として納付することになります。

したがって・・・

事業者としては、適格請求書発行事業者から仕入などをしないと、預かった消費税から税額控除ができなくなります。

つまり、事業者は適格請求書発行事業者から仕入や経費購入をしようとする動きになってきます。

 

 

3 さらに詳しく

①商品を買ったり、サービスを受けたりしたときに支払うのが「消費税」です。

②国に消費税を納付するのは、顧客から消費税を預かった「事業者」です。

③消費税納付額は、売り上げた時に預った消費税から、仕入などで支払った消費税を引いた、「差額」となります。

④仕入などで支払った消費税が引けることを「仕入税額控除」といいます。

⑤インボイス制度が始まると、その仕入税額控除は、

 適格請求書発行事業者からの請求書(インボイス)でないと仕入税額控除ができなくなります。

 

 

4 インボイス制度が与える影響

『適格請求書発行事業者』の登録さえ済ませば事業への影響はなさそうに思いますが、そう単純な問題ではないのです。

 

(1)免税事業者のままでは適格請求書発行事業者への登録はできない

 年間の課税売上が1000万円以下の事業者は、消費税の納付が免除されています。

 したがって、免税事業者は適格請求書発行事業者申請登録時に、課税事業者として登録するのか、

 登録せずに免税事業者のままでいるのか、二者択一を迫られることになります。

 簡単にいえば2023年10月以降は、免税事業者は一般の消費者と同じ立場になります。

 

(2)財務省の試算

 免税事業者448万のうち、161万ほどが課税事業者となるのではと試算されています。

 その理由は、

 課税事業者を選べば消費税と納めなければならないが、免税事業者のままだと取引先が仕入税額控除ができないので、

 取引先から敬遠されたり、値下げを求められる可能性があると考え、4割弱の免税事業者が課税事業者になるとされています。

 その主な職業は、

 大工の一人親方、フリーランスライター、デザイナー、インストラクター、運送事業者などがあげられています。

 

 しかし、一般消費者向けの飲食店や小売店であれば、いままで通りでも問題がないのでしょうか?

 法人客が占める割合が高ければ、飲食店も小売店でもそういうわけにもいきません。

 

(3)インボイス制度導入の背景

 これは一にも二にも「益税対策」であり、「課税の公平性」です。

 いまの状況では、消費税を請求しているのに、消費税を納付しない免税事業者が多くいるからです。

 そこのところの透明性を高めて、適格請求書発行事業者登録制度によって適格請求書発行事業者を世間に公表するわけです。

 つまり、免税事業者はそもそも消費税を納付していないわけですから、免税事業者の売上には消費税は含まれないことを

 明確にする狙いがあるといわれています。

 

インボイス制度が始まるまで、あと2年・・・。

免税事業者はこの2年間で経営を改革することが迫られているといえます。