659.会計の基本知識 読み方の体系 4/4

2024年5月24日

 『読み方の体系』第4回は「債務償還能力」「成長性」「損益分岐点」の読み方だ。

 

1 融資の返済能力を知る「債務償還能力」

 「債務償還能力」とは、借入金を返済する状況のことを指す。

事業には銀行から融資を受けることがままあるが、借りたならそれは返済しなければならない。

もし返済できなければ銀行取引が停止となり、事業を続けていくことは難しくなる。

 

そこで少し、ここで現実的な返済ということについて考えてみよう。

「おカネを借りる」ということは、原則的に手元のおカネだけで足りないので、借りたお金を足して機械などを購入するわけだ。

したがって、その購入した機械などをテコにして、最低でも借りた元金と返済金利を加えた利益が出ない以上、

返済する原資が足りないので、借りれば借りるほど、「経営は苦しくなる」ということである。

つまり、おカネを借りて設備を入れるということは、通常の利益に加えて元金と利息以上の利益が出ないと採算が取れない。

ここの感覚が、多くの経営者において鈍いところがある。

設備投資をして、ただ単に通常の利益が出ればよいと考えている経営者があまりにも多い。

借入をして設備を入れるということは

通常の利益に加えて元金と金利以上の利益が出ないと採算が合わない!

 

そうならないようにするためには、それぞれの企業規模にとって高額な設備投資をする場合、「設備投資採算計画書」を作成する

ことが大事だ。

採算計画を作成することによって、新しい設備を入れてどのくらいの売上が増えないといけないのか、どのくらいの利益が増えない

といけないのか、ハッキリ認識できる。

そして「債務償還能力」は、ある意味、事業継続の生命線とも言える。

では、そんな「債務償還能力」をどう読めばいいのだろうか。

 

 ①ギアリング比率     (%) =負債÷自己資本×100

  ギアリングとは馴染みのない用語だが、その意味は「2つのギアの関連度合い」ということだ。

  2つのギアとは、負債と自己資本のことをいい、自己資本に対する負債の割合を「ギアリング比率」という。

  考え方によっては、自己資本をもとにして借入(負債)を起こしているとも考えられるので、

  ギアリング比率は大きいほど、自己資本を活かしているとも考えられる。

  事業にはどうしても資本が必要であり、自己資本だけでは足りない場合は、仮にこのギアリング比率が大きければ、

  少ない自己資本で大きな事業ができることになる。

  したがって、ギアリング比率は、設備投資がかかる事業にとっては特に重要なファクターだ。

  しかし、「借りられるならいくら借りて良い」というわけにはならない。

  借入には必ず返済が伴うので、通常は300%以下(つまり自己資本比率が25%ということになる)、

  全事業平均では80%程度という統計数値がある。

  一般的に不動産企業などはこの「ギアリング比率」が非常に高く、だからバブルが弾けると倒産する不動産企業が多くなる。

 

 ②債務償還年数      (年) =有利子負債÷減価償却前営業利益

  債務償還年数とは、返済に要する年数のことをいう。

  まず、返済総額は有利子負債となる。そして返済原資の最大値は、減価償却を差し引く前の営業利益になる。

  つまり、借入金を返済可能な原資全額で返済した場合の最短返済期間を計算している。

  最短期間だから、算出された債務償還年数で返済を完了させることは、現実的には難しい。

  だからあくまでも参考値だが、それでも一般的には10年未満に抑えるべきと考えられている。

  なぜなら、10年先のことは事業が続けられているのかどうか、もうわからないからだ。

 

その他にも、前回説明した「借入金対月商倍率」なども参考になる。

ただここで是非とも認識しておきたいことは、営業利益や経常利益が「赤字」は、借入金返済原資が無いということだ。

だから、事業はなんとしてでも赤字を避けなければならない。

赤字は借入金返済原資が無いということを認識する!

 

 

2 事業の成長性を知る「成長性」

 収益率もあるし、回転率も高く、生産性も十分・・。そして、安全性も高く、返済にも問題がないとくれば、

最後に確認しておきたいことは、事業の「成長性」だ。

このコラムの冒頭でも言っているように、事業は成長し続けねばならない。

なぜなら、事業が続くと、それなりに事業規模が大きくなり、人員は増え、事業にまつわるコストを増加して行くからだ。

では、その「成長性」をどのように確認すればよいのか。

 

 ①前年売上高比率     (%) =当期売上高÷前期売上高×100

  常に、前年売上高比率は伸ばしたい。下がれば、粗利益額も下がり、前年と同じような経営や従業員の処遇はできなくなる。

  そういう前年売上高比率100%超の結果を得るためには、その過程で、前年同月売上高比率や前年同期売上高比率なども

  常に確認しながら、最終的に前年売上高比率が100%超になるように経営していくことが大事だ。

 

 ②前年一人当り人件費比率 (%) =当期一人当り人件費÷前期一人当り人件費×100

  事業は従業員やその家族などの生活を預かっていると言える。

  その従業員の生活を預かる以上、また士気を向上させていくうえでも、前年一人当り人件費比率は伸ばしていきたい。

企業も増収増益が大切なら、従業員の給与も増収増益が大切!

 

  事業と同様に、従業員の生活も年々家族構成や環境など変わっていくので、生活費は年々増えていくことが道理となる。

  それを賄っていくためにも、人件費のアップは欠かせないし、させていきたいものだ。

  なお、この一人当り人件費は、役員を除いて考えることが望ましい。

 

 ③経常利益増加額    (千円)=当期経常利益-前期経常利益

  基本的に経常利益が繰越利益剰余金となり、自己資本に組み込まれていく。

  年々、事業の成長に伴って事業資金が多く必要となるので、当然のことながら、資本も多く必要となってくる。

  そのためには、経常利益の増額が必須だ。

 

 

3 自社の収益構造を知る「損益分岐点」

 最後に自社の収益構造を知る方法を説明しよう。

収益構造を知って改善して行かないと、いつもまでも規模の拡大だけを目指すことになり、いずれは限界が来ることになる。

そのことを避けるためにも、収益構造を常に改善していくことが重要だ。

その読み方が「損益分岐点」である。

 

 ①損益分岐点売上高   (千円)=固定費÷限界利益率

  損益分岐点売上高とは、文字のとおり、損と益が分岐する点の売上高のことだ。

  これを超える売上高になれば、黒字経営となる。これを下回る売上高になれば、赤字経営となる。

  考え方は、必ずかかる費用である固定費を、直接原価(変動費)を除いた限界利益率で割り戻せば、

  損益分岐点売上高が計算できることになる。

  損益分岐点売上高が低ければ低いほど達成しやすいので、高収益企業と言える。

 

 ②損益分岐点比率    (%) =損益分岐点売上高÷実績売上高×100

  損益分岐点比率とは、損益分岐点売上高の実際売上高に対する割合のことだ。

  損益分岐点売上高が高ければ、損益分岐点比率も高くなり、損益分岐点売上高が低ければ、損益分岐点比率も低くなる。

  船舶で喩えれば、損益分岐点比率が低ければ転覆しにくい船舶となり、高ければ転覆しやすい船舶となる。

 

 ③経営安全率      (%) =100-損益分岐点比率

  経営安全率とは、損益分岐点売上高に陥るまでの売上減少許容率である。

  つまり、20%であれば、2割売上が落ちても、赤字にはならないということになる。

  経営環境はいろいろ変わっていくので、優良企業は経営安全率50%程度を目指すことが多いと言われている。

 

 ④限界利益率      (%) =限界利益÷売上高×100

  限界利益率とは、固定費を回収するパワーだ。

  限界利益率が高いと、早く固定費が回収でき、黒字経営にしやすくなる。

 

 ⑤年間固定費      (千円)=総費用-変動費

  固定費とは、極端に言えば、売上高がゼロであってもかかる費用のことと説明されることも多いのだが、

  言い換えれば、売上高増減の影響を受けない費用のことをいう。

  または変動費を除いた費用がすべて固定費である。

 

 ⑥固定費増加率     (%) =当期固定費÷前期固定費×100

  固定費を増加させないように、あるいは減額させて経営が出来れば、収益改善はされる。

  だが、人件費はそうもいかないので、人件費を除く固定費を全員で減らす改善活動が重要だ。

  しかし削減には限界があるので、究極的には利益を増やし続けるためには、売上アップと限界利益の増加だ。

収益を改善するためには固定費の削減は限界がある。

よって売上アップと限界利益のアップに軍配は上がる!

 

 

この辺りの指標中から自社にとって重要なものをいくつか選び、経営を続けると、経営手腕(スキル)が向上し、経営改善できる。