48.セグメント情報③責任制度

2010年5月3日

財務分析解説コラム(32)
セグメント情報 -部署別業績責任会計制度-

月次試算表を見て、この勘定科目に何を計上していたのか、分からなかったことがありませんでしたか?
決算書ではそこまで表示することは求められていません。求められていないということは法的に求められていないということです。つまり、外部報告書としてそこまで報告する必要がないということです。中小企業にとって外部とは『税務署』と『金融機関』です。そのような法的要求に応じて作成する会計を制度会計、あるいは財務会計といいます。
一方、内部管理的には細部まで分かるようにしたいものです。そのような考え方で作成する会計のことを管理会計といいます。分かり易くいえば経営のための会計、経営会計といっても良いかと思います。
第3回目の今回は、前回の部門別損益管理のグレードアップ版とも言える『部署別業績責任会計制度』について説明します。

1.部署別業績責任会計制度とは
部門別に管理する目的とは、内部的に考えると二つあります。ひとつは自社のセグメント情報(細分化情報)を知りたいということです。ふたつめは同時に業績評価に活用したいということです。前者だけの目的であれば、前回説明した部門別損益管理で十分です。しかし、後者のように業績評価にも活用したいということであれば、評価項目(責任)と権限委譲を明確にしなければなりません。部署別業績責任会計制度とは次のような仕組みです。
①部署別 ⇒利益責任単位(プロフットセンター)を明確化にする
②業績  ⇒利益責任単位に目標利益を設定する
③責任  ⇒各経費に対する裁量権の設定する
④会計制度⇒会計処理ルール(共通費の配賦基準や内部振替制度など)を決定する

2.部署別業績責任会計制度の目的
この制度の目的は二つあります。ひとつは経営状況の問題発見のためです。二つには社員モラール・士気の向上のためです。なお、成果配分制度は部署別業績責任制度を活かすための制度です。また利益責任単位とは、利益を上げていくために戦略上の意思決定を行う最小事業単位のことです。

3.経費の区分と裁量権
この部署別業績責任会計制度を機能させるためには、経費の区分と裁量権の設定が重要です。まず経費は部門(プロフィットセンター)経費①と本社(コストセンター)経費②に大別されます。
さらに部門経費は個別経費③と共通費④に分けられます。個別経費とは部門単位に計上できる経費です。個別経費はさらに部門責任者に裁量権があるもの⑤とないもの⑥に分けられます。
共通費とは部門経費であることは間違いありませんが、部門単位個別には計上できない経費のことです。この共通費と本社経費には配賦の有無と配賦する場合は配賦方法を決めねばなりません。

4.5つの責任利益
部署別業績責任会計制度には5つの責任利益があります。ひとつは限界利益です。これはご承知のとおり売上高から変動費を差し引いたものです。2つめは達成利益です。達成利益とは限界利益から裁量権個別を差し引いたものです。3つめは貢献利益です。貢献利益とは達成利益から裁量権なし個別費を差し引いたものです。4つめは部門利益です。部門利益とは貢献利益から共通費を差し引いたものです。5つめは経常利益です。これらを図示すると次のようになります。

売上高                            <5つの責任利益>
▲変動費
限界利益
経費                  →▲⑤裁量権あり
→③個別費                達成利益
→▲⑥裁量権なし
→①部門経費                        貢献利益

→▲④共通費(配賦の有無・配賦方法)
部門利益

→▲②本社経費(配賦の有無・配賦方法)
経常利益

5.評価の方法
これらの部署別業績責任会計制度を活かすためには「成果配分制度」が必要であることは、すでに述べたとおりです。ではどのように評価するれば良いのでしょうか。それが5つの責任利益と関係があります。 まず、部門社員、彼らには限界利益と部門利益で評価します。次に部門管理職、彼らには達成利益と貢献利益で評価します。そして部門責任者には貢献利益と部門利益で評価します。最後に本社スタッフ彼らには部門利益と経常利益で評価します。
ここでのポイントは1つだけです。職責に応じた目標で評価するとともに共通の目標でも評価するということです。自分さえよければ良いという考え方にならぬよう、チームワークでも評価するということです。この場合、部門利益がチームワーク評価になります。

今回は少し難しかったですか。
しかし、何度も言うように、経営環境は新しい時代を迎えようとしています。いまはその過渡期ですから変化も激しいわけです。新しい時代を迎えるには、新しいマネジメントを採用しなければなりません。
組織の活性化はこれからの時代に大変重要です。これまでの護送船団方式の経済成長モデルであった戦後復興型の高度成長モデルは終わりました。私たちは成熟社会のステージに移行し、これからはそれぞれの努力に応じて成果が変わる時代です。従って全社一丸のモチベーションや働き甲斐というものがに重要です。
会計を決算・申告、税務署や銀行のためだけにせず、経営のために活かすという姿勢をもって取り組みことが大切です。
次回もお楽しみに・・