366.マーケット戦略 成長マトリクス戦略

2018年6月9日

マーケット戦略 アンゾフの成長マトリクス

現代は売上を増やすことが難しい時代となっている・・。
いろいろなモノが溢れ、さまざまなモノも存在し、そのうえ市場は高齢少子化し、人口自体も減少し始めたからだ。
さらにそのような状況下で、将来に対する不安感から消費は減退化しており、かつ多様化し、経済格差も顕在化している。
非常に複雑な現代社会模様だ。
だから「頑張る」とか「まじめに働く」というだけでは、もう思いどおりに売上は増えなくなっている。
そこで従来からの企業経営に加えなければならないことは、「販売の工夫」であり、そのことを『販売戦略』という。
このことは小さな企業・ビジネスほど強く求められている。
そこでこれから、『マーケット戦略』という統一テーマで、いろいろな収益拡大の考え方をご紹介し、
小さなビジネス企業の売上高拡大のヒントに供したい。

 

アンゾフの成長マトリクス戦略

第3回目の今回は、『アンゾフの成長マトリクス戦略』だ。
この成長マトリクス戦略は『製品・市場戦略』とも呼ばれる、さまざまな企業に応用できる成長戦略だ。
この考え方は「経営戦略の祖」といわれる経営学者アンゾフ博士が1957年に提唱した企業成長戦略理論であり、
古典的理論であるだけに、われわれ中小・小規模企業が経営の工夫を考えるにあたって、もっとも使える考え方の一つだ。
ぜひ、この考え方を応用して、自社の成長する道すじを考えて見たらどうだろうか。

 

1 販売戦略の切り口を4つに分ける

ヨコ軸に自社の商品・サービスなどの軸をとり、既存商品と新規商品に分ける。
タテ軸は市場とか顧客の軸をとり、同じく既存市場又は既存顧客と新規市場又は新規顧客に分ける。
そうすると次のようなBOXが4つできる。

アンゾフ成長戦略

この考え方を活用する上で注意すべきことは2点。

①あまり文字づらに囚われないこと
 ヨコ軸は端的に言えば、自社の「仕事」ということだ。
 タテ軸は自社の「顧客や顧客層あるいは商圏」ということだ。
 自社に合ったイメージで捉えれば良いと思われる。
 あまり文字づらに囚われると、発想が固くなるので、気をつけよう。
②これは成長戦略であること
 この考え方はあくまでも「成長」、つまり「売上を増やす」ことが目的だ。
 ここを忘れないようにしたい。
 決して、フォローの在り方やこれからの仕事の在り方を考えることではない。
 あくまでも売上を増やすにはどうするか、がテーマだ。

アンゾフは既存顧客に既存商品をという箱『市場浸透戦略』と、既存顧客に新規商品をという箱『新商品開発戦略』、新規顧客に
既存商品をという箱『新市場開拓戦略』、新規顧客に新規商品をという箱『多角化戦略』に分けて、企業の成長戦略を考えることを提唱している。

 

2 基本的な考え方

(1)市場浸透戦略

市場浸透戦略とは「いまの顧客に、いまある商品を、さらに販売していく」ということだから、提案の仕方を変えるとか、組合せを考えるとか、が中心となる。
たとえば、ふとんクリーナーの「レイコップ」は元々は小型掃除機がコンセプトであったが、さっぱり売れなかったそうだ。
しかし、ふとん専用掃除機として提案をし直したなら、爆発的に売れ出したことは有名な話だ。
市場浸透戦略とはこのような考え方をいう。
きっと私たちの仕事にも、そんな捉え方を変えることで、増収につながることがあるのではないのだろうか。

(2)新商品開発戦略

新商品開発戦略とは「いまのお客に、新しい商品を、提供する」ということだから、新しい製品を作るとか、商品を仕入するとか、新しいサービスを始める、ということが中心となる。
ただ、いまの時代に重要なことは、モノやサービスよりもどのように説明するか、どのように提案するか、どのように見せるか、といわれている。
新しい商品を陳列するだけで売れた時代は戦後の昭和50年までの話だ。いまは豊かな成熟社会となっている。
そのことをもっと気づくことが大切だ。

(3)新市場開拓戦略

新市場開拓戦略とは「新しいお客に、新しい市場に、自社のモノを販売する」ということだから、提案の仕方や見せ方、そして販売チャネルなどが大切になってくる。
一番わかりやすい方法はインターネットを利用して販売エリアを拡げる、あるいは海外進出をするということだ。
しかし、ことはそう簡単にはいかない。確かにインターネット上に公開すれば理論上は日本中の誰もが、あるいは世界中の誰もが
見られるようになるが、実際はなかなか見つけでもらえない。つまり、見つけてもらえる道筋を同時に考えなければならないということだ。
お店をオープンしても、お店へ行く道がなければお客は来ないと考えれば、理解できる。

(4)多角化戦略

多角化戦略とは「新しいお客に、新しい商品を販売する」ということだから、多角化というネーミングで呼ばれている。
しかし、あまり多角化という言葉に囚われないほうがいいように思われる。
いまコンビニエンスストアがどんどんその方向に進化している。
日用品から食材、調理食品、金融、流通、医薬品と、どんどん新しい商品・サービスそして新しいお客を開拓しているが、この先、EV自動車時代になれば、燃料も供給しようとしている。
その結果が経営の多角化になるのか、それとも業務領域の拡張ということになるのか、それは結果次第である。
したがって、新顧客-新商品についてはそのように考えた方がよいと思われる。

 

3 戦略の基本的な順番

「必ずこの順番でやる」というルールはないが、それでも経営の工夫には行なうべき基本的な順番というものがある。
それはまず、いまのお客さまを大事にすることである。つまり、『市場浸透戦略』が第1優先となる。

第2優先はいまのお客に新しい商品を提供する『新製品開発戦略』だ。
それだけ新規市場および新規顧客を開拓することは難しいということをアンゾフはいっている。
特に中小・小規模企業の場合、まだお客に実現出来ていないことも多くあり、市場浸透を採ることによって「差別化」に通ずることになってくる。さらにその差別化が、新規市場開拓にもつながるという相乗効果もある。

第3優先は既存の商品を新しい市場に提供するという『新市場開拓戦略』だ。

そして最後になるのが『多角化戦略』だ。これは先ほども説明したとおり、結果的にそうなると考えた方がよさそうである。

 

4 市場浸透戦略とは、自社の「高付加価値化戦略」である

市場浸透戦略とは、いまの顧客に未だ購入されていない既存の製品・商品・サービスを販売していこうという考え方であるから、
これまでと同じ方法ではダメだということである。
提案や説明、サービスあるいは顧客密着度などを考え直し、より付加価値を高めて、既存の顧客に接触する必要がある。
したがって、その意味では市場浸透戦略は、製品・商品・サービスの再付加価値化、つまり『高付加価値化戦略』といえる。

 

5 新製品開発戦略とは、『差別化戦略』である

次に、いまの顧客に新しい商品を販売するということは、新しい顧客ニーズに対して、同業者とは異なる新しい商品を提供して
収益を拡大していこうという考え方だ。
したがって、その意味では新製品戦略とは『差別化戦略』に他ならない。

 

6 新市場開拓戦略とは、市場浸透戦略と新製品開発戦略の実績を持って『市場拡大する戦略』である

既存商品を既存顧客に浸透できていない状況では、新しい市場に売ることはできない。
新しい市場を開拓できる必要条件は、市場浸透もできており、かつ新しい商品も提供できていることであり、
それだからこそ、初めて新しい市場が開拓できるのである。
いまのお客さまを満足させられないまま新しい市場開拓をすることは、ザルで水をすくうことと同じである。
したがって、その意味では新市場開拓戦略とは、市場浸透と製品開発の実績を持って行なう『市場拡大戦略』であるといえる。

※インターネットは必須
ここでインターネットについて考えたいと思う。
既存商品を既存市場に浸透させるためにも、まして新しい市場を開拓するにはインターネットによるウェブ戦略が必須だ。
ホームページやインターネットショップにネット広告を絡めると、新市場開拓の成功確率をかなり引き上げることができる。
これまで、中小・小規模企業にとって新市場開拓はコスト的にもかなり困難なものであったが、インターネットが利用できるようになって、中小・小規模企業にとっても実現可能なものとなっている。
インターネットを活用すれば、全県から、県外から、日本全国から、さらには全世界から、コストをあまりかけずに受注することが可能になる。
また「市場縮小化」は日本国内だけの特有の出来事であって、世界は人口増と経済発展によってますます市場拡大していることも
事実だ。したがって、中小・小規模企業であるほど、インターネットをもっと重要視し、使いこなさなければならない。

 

7 多角化とは、結果の戦略

大企業の場合には、蓄えられた資金と豊富な人材をもとに、異なった事業領域で事業を展開し、多角化戦略を取ることは可能だ。
しかし、中小・小規模企業には残念ながらそのような資金力も人材力もない場合が多い。
したがって、中小・小規模企業における多角化戦略とは、「結果の戦略」と考えてよいのではないかと思われる。
市場浸透を展開し、それを新商品開発に結びつけ、その実績をもとに新市場開拓に取り組み、その結果次第では分社的な多角化も
検討できる。

 

 

この成長マトリクス戦略は非常にオーソドックスな戦略理論であり、幅広い事業に活用できる。
収益拡大ナシには継続的な事業は成り立たず、収益拡大は企業経営にとって避けられない、永遠の課題だ。
そんなときに、この成長マトリクス戦略は大きなヒントを与えてくれる。
その教示はもっと現在の仕事を「高付加価値化」して、顧客ニーズに応えることによって「差別化」し、
新しい顧客・市場へ挑戦することだ。

 

 

 

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