112.黒字経営 3つの効果比較

2012年10月19日

9.損益分岐点を下げる3つの方法の効果を比べる

前回は収益力を上げる、改善する考え方について説明しました。「収益力を上げる、改善する」とは、言い換えれば損益分岐点比率を下げるということです。「損益分岐点比率を下げる」とは早く利益が出始めるということです。その考え方には3つあると紹介しました。一つは固定費を下げる、もう一つは変動費を下げる、そして売上高を上げるです。
今回はどの考え方が一番効果があるのか、説例で確認したいと思います。

説例は次のとおりです。
売上高   20,000万円(100.0%)
変動費   11,680万円( 58.4%)
限界利益   8,320万円( 41.6%)
固定費    8,220万円( 41.5%)
経常利益     100万円(  0.5%)
損益分岐点比率  98.8%
このような会社が「固定費、変動費比率、売上高それぞれ5%改善した」という条件でその効果を測定したいと思います。

ちなみに、この説例モデルはTKC経営指標に収録されている約22万5千社の平均像なんです。
平均年商は約2億円。それを100円とすると、変動費は58.4円、限界利益は41.6円になり、固定費が41.5円なので、んと利益は0.5円しかありません。
借入返済は利益からしなくてならないのに、これじゃとても借入返済はできません。これが中小零細企業の実態です。そして損益分岐点比率はほぼ収支トントンの98.8%です。もし売上が1.3%減れば、それで赤字転落です。
まずこの実態をよく知ってください。中小零細企業はともかくもっと儲けなければなりません。「儲け」は会計によってコントロールさえすれば確実に改善できます

(1)固定費を5%削減できた場合
売上高   20,000万円(100.0%)
変動費   11,680万円( 58.4%)
限界利益   8,320万円( 41.6%)
※ここまでは変化はありません。次の固定費が5%減らせたというわけです。すると以下は次のとおりになります。
固定費    7,809万円( 39.1%)
経常利益     511万円(  2.5%)
※固定費が5%、411万円削減できたので、その分が利益として増えます。そして損益分岐点は次のように変わります。
損益分岐点比率  93.9%
※分析分岐点比率は4.9%改善できました。

(2)変動費比率を5%抑制できた場合
売上高   20,000万円(100.0%)
※変動費比率は5%下がり、53.4%となりますので、変動費を逆算します。
変動費   10,680万円( 53.4%)
限界利益   9,320万円( 46.6%)
※変動費が減りましたので、その分、限界利益は増えました。
固定費    8,220万円( 41.1%)
経常利益   1,100万円(  5.5%)
※固定費は変わりませんが、限界利益が増えたので、経常利益は1,100万円に増加します。そして損益分岐点は次のように変わります。
損益分岐点比率  88.2%
※分析分岐点比率は10.6%改善できました。

(3)売上高を5%増やせた場合
売上高   21,000万円(100.0%)
※売上は1,000万円増えましたので、変動費比率は変わりませんが、変動費はそれに比例して増えます。
変動費   12,264万円( 58.4%)
限界利益   8,736万円( 41.6%)
※売上・変動費とも変わりましたので、限界利益も変化します。
固定費    8,220万円( 39.1%)
※固定費は変化しませんが、売上は増えたので構成比だけは変化します。
経常利益     516万円(  2.5%)
※限界利益が変化した分、固定費は変わりませんが、経常利益は影響を受け、416万円増加します。そして損益分岐点は次のように変わります。
損益分岐点比率  94.1%
※分析分岐点比率は4.7%改善できました。

どうですか、同じ割合の改善であれば、その効果は 変動費比率 ⇒ 固定費 ⇒売上高 という順になります如何に変動費の抑制、固定費の削減が大事か、ご理解いただけたかと思います。


ご質問等はインプルーブ研究所まで。お気軽に。