95.財表基本知識 主資産科目

2012年9月30日

7.主なB/S資産科目の見方

ここからは具体的に代表的な勘定科目の見方について説明します。
第1回目は貸借対照表(B/S)の資産科目について説明します。

資産科目には流動資産に属する科目、固定資産に属する科目など多くありますが、日常的に確認しなければならない勘定科目は次の3点です。
(1)現金・預金
①上場企業であれば、あまりに現預金が多ければ「資金を活かしていない消極的経営」と批判されるかも知れませんが、中小企業においては多ければ多いほど安全性が高い経営と判断されます。しかしながら中小企業と言えども会社の規模はいろいろありますので、「これ以上の現預金があれば良い」とは一概に言えません。
②そこでその尺度として「平均月商」を基準に現預金の有り高を量ります。そのことを『手元流動性比率』と呼びます。
③理屈は、月商とは家計で喩えれば生活費みたいなものです。手持現預金が向こう1ヶ月の生活費もないようでは心許ありません。会社も同様です。手持現預金が月商1ヵ月分もないようでは経営的に心許ありません。まして災害でもあれば会社の活動は数ヶ月ストップしてしまいます。そこで手元流動性比率は3ヶ月分程度は欲しいということになります。
④もし1ヵ月分の現預金もなければ経営課題と捉え、現預金を増やす工夫、経営をしなければなりません。
※そのほかにも銀行借入金と比べて見ることも有効です。

(2)売掛金
①売掛金は債権ですが、多くあれば良いというものではありません。会社には回収するルールがあります。例えば、翌日に売上回収する会社ならば、月末には前日分の売上分しか売掛金はないはずということになります。一般的には翌月回収だと思いますが、そうであれば月末の売掛金は当月分の売上高分しかないという理屈になります。それより多くある場合はおかしい、つまり売掛回収していないということになります。
②そこでその尺度として「平均日商」を基準に何日分の売掛金があるのか量ります。そのことを『売掛金回転期間』又は『売掛金回転日数』と呼びます。
③理屈は先ほど言ったとおり、翌月回収ならば基本的には30日前後分の売掛金しかないはずです。意外と売掛金残高が多い中小企業が多いのが現状です。
④もし45日以上の売掛金があれば経営課題と捉え、売掛金を期日通り回収する工夫、経営をしなければなりません。

(3)棚卸資産
①棚卸資産とは在庫のことですが、在庫切れを起こさない限り、在庫は少なければ少ないほど良いといえます。
②そこでその尺度としてこれも「平均日商」を基準に何日分の在庫があるのか量ります。そのことを『棚卸資産回転期間』又は『棚卸資産回転日数』と呼びます。
③理屈は業種にもよりますが、あまりにも多くの在庫を持つと不良在庫につながったり、売れ残りとなってしまいます。現在は流通も発達していますから、1週間分から2週間分程度あれば十分だと思います。
④もし2週間以上もあれば経営課題と捉え、棚卸資産を減らす工夫、経営をしなければなりません。

分析値名などはまったく覚える必要はありません。それよりも問題を発見するために何と何を比べて見ればよいのかということを理解することが重要です。今回のことをまとめると次のようになります。
現預金は  現金・預金÷平均月商(年商÷12)  で確認します。
売掛金は  売掛金  ÷平均日商(年商÷365) で確認します。
棚卸資産は 棚卸資産 ÷平均日商(年商÷365) で確認します。

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