649.直接原価P/Lの詳細 CVP分析

2024年3月8日

今回は「CVP分析」を紹介したい。

いろいろな側面から「損益分岐点」を考えることによって、事業の収益力が改善できるからだ。

そこで、CVP分析とは「損益分岐点分析」とも呼ばれる、売上を生み出すためにかかるコスト、販売量をもとに利益を算出し、

「損益分岐点はどこなのか?」を分析する考え方だ。

CVPは「Cost(コスト)」「Volume(販売量)」「Profit(利益)」の各頭文字をとっている。

コスト、販売量、利益の関係を明確にすることで経営に活かそうとする。

 

 

1 「損益分岐点」とは

損益分岐点とは、売上を生み出すための総コスト(変動費+固定費)と、売上高が同じ金額となる点のことをいう。

つまり、収支トントンとなる売上高のことだ。

損益分岐点になる売上高を「損益分岐点売上高」といい、次の計算式で算出できる。

損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率

 

損益分岐点では利益が「ゼロ」になるので、各企業は利益を出すために、損益分岐点売上高より高い売上高を目指す。

損益分岐点より少ない売上高ならば「赤字」となるので、早急に改善策を考えなければならない。

 

 

2 CVP分析の目的

CVP分析を行う目的は下記の2つがあると言われている。

①損益分岐点売上高を把握して、利益を出すための最低販売数量や目標利益を達成するために必要な販売数量を明確する

②コストの特性を明確にして、経営改善点を見つける

 

①損益分岐点売上高を把握して、利益を出すための最低販売数量や目標利益を達成するために必要な販売数量を明確するとは?

このことは言い換えれば赤字を防ぐためであり、あるいは赤字から黒字へ転換するためだ。

仮に販売数量が多くても、かかるコストが多ければ、損益分岐点売上高は高くなり、利益を出すことは難しくなる。

②コストの特性を明確にして、経営改善点を見つけるとは?

自社の損益分岐点を知るためためには、売上にかかるコストをまず「固定費」と「変動費」に分ける必要がある。

このことがコストの特性を明確にし、経営改善につなげられるようになる。

 

 

3 CVP分析を行う前に押さえたいコストの特性

CVP分析を行う際にポイントとなるのが、「固定費」と「変動費」の分け方、見極め方だ。

この2つのコストの特性や違いを押さえて、的確な分析を行えるようにする必要がある。

※そもそも分析とは、どこまで行っても考え方に左右され、その意味ではシミュレーションであり、正確な分析というものはない。

 したがって、分析はあまり正確性に拘るのではなく、シンプルに、だからこそ本質が見える分析をすることが大事だ。

 

(1)固定費とは

固定費とは、売上や生産量に関係なく発生するコストと説明される。

換言すれば、すぐに無くしたり減らしたりできないコストとも言え、売上高がどうであれあまり左右されず、

だからこそ経営者あるいは職場の肚決め一つで、大胆にコスト削減も可能なコストでもある。

具体例としては、オフィス賃料、人件費、福利厚生費、水道光熱費、通信費、減価償却費、広告宣伝費、交際費などが挙げられる。

固定費は売上高の増減に関係なく常にかかるコストなので、削減効果も大きいとは言えるが、しかし固定費合計よりも大きな効果は

出ないという意味では「限界」がある。

 

(2)変動費とは

一方、変動費とは、売上や生産量の増減に比例して増減するコストのことを言う。

生産量や売上高が増えれば増えるほど、変動費は増加する。

具体例としては、材料費や仕入高はどの業種でも共通だか、輸送費や荷造包装費など、業種によって変わってくるものもある。

よく議論されるのは外注加工費で、変動費とも言えるが、考え方では本来人件費でもあり、そう考えると固定費とも言える。

性質的にはいわゆる直接原価でもないので、固定費として考えた方がシンプルかもしれない。

また、人件費のうちでもアルバイト代や残業代なども変動費として分類する企業も多いが、これも時代の流れ的には固定費として

考えた方がよいと思われる。

いずれにせよ、管理会計の世界の話で、各社で取り決めをすればよい。

変動費の削減は固定費に比べると影響が少なかったり、削減自体が難しかったりする面があるが、しかし売上に対する比率なので

その削減効果は実は大きく、無限大とも言える。

一般的には、そのやり易さから「固定費削減」や「固定費の変動費化」が優先されるが、

実は変動費の改善は『限界利益率』という企業にとって「儲ける力」の改善でもあるので、変動費の改善は重要だ。

特に赤字経営に悩む企業においては、必ず変動費の改善ができる余地があると断言できる。

 

 

4 CVP分析で算出する指標

CVP分析はいくつかの指標を算出して、経営改善の方向性を検討していく。

(1)限界利益

限界利益とは、売上高から変動費を差し引いたもので粗利で、売上げることによって得られる利益のことだ。

商品や製品、サービスの1単位が売れるごとに得られる利益が『限界利益』であり、各企業の付加価値とでも言える特徴がある。

限界利益=売上高ー変動費

 

限界利益の中身には「利益」だけでなく「固定費」も含まれる。

たとえば、売上高が100万だとして、変動費が60万円であれば、限界利益は40万となる。

しかし小売などで考えると、同じ商品、同じような商品であっても、必ずしも限界利益は同じにはならない。

小売店のブランドとか、ディスプレイとか、立地条件やサービスの仕方で限界利益は変わってくる。

したがって限界利益は各企業の『付加価値』だとも考えられる!

 

その限界利益40万円は、さらに「固定費」と「利益」に分けられる。

仮に、限界利益の大半を固定費が占めているようであれば、利益は出にくい状態になる。

しかし、だからと言って、何でもかんでも固定費を削減するということにはならない。

現代は固定費を人件費とその他固定に分けて経営する時代だ!

 

そこのところをわからない経営者が多く存在することも事実だ。

未だに「給料を出してやっている」と思う経営者が多く、だからチャンスも多くある。

 

(2)損益分岐点比率

損益分岐点比率とは、売上高に対する損益分岐点売上高の割合を表すパーセントだ。

実際の売上高に対して損益分岐点売上高の割合が高ければ、損益分岐点比率は高くなる。

損益分岐点比率が高いということは、利益が出しにくい収益体質を示す!

 

逆に損益分岐点比率が低ければ、売上高が下がっても赤字になりにくいと考えられる。

損益分岐点比率=損益分岐点売上高÷実際の売上高×100

 

一般的に損益分岐点比率は低いほど良く、少なくとも80%以下にはしたいものだ。

 

(3)経営安全率

経営安全率とは、実際に得られた売上高と損益分岐点売上高の差を示す。

差異が「+」であれば黒字、「ー」であれば赤字だ。

基本的に経営は黒字であると考えれば、損益分岐点売上高から離れているほど、経営状況には余裕がある。

経営安全率=100%ー損益分岐点比率

 

仮に、損益分岐点比率が90%であれば、経営安全率は10%となり、売上高が10%超落ちれば、赤字になることを示す。

現在の中小企業の損益分岐点比率は95%程度と言われ、多くの中小企業が赤字経営に苦しんでいることを表す。

 

 

5 CVP分析でわかること

(1)コスト構造

CVP分析ではコストを「変動費」と「固定費」に分けて考えるので、自社のコスト構造がどのようになっているのか、

あるいはどこからコスト削減に手をつけるべきかがわかるようになる。

また、コスト・販売数量・利益の関係が明確になるので、コストが利益に与える影響も把握しやすくなる。

どの程度の数量を販売すべきなのか、現在の販売価格が妥当かどうか、などについても見えてくる。

さらに、利益を出すためにどのくらいコストを抑えるべきなのかがわかれば、コスト意識を持った経営ができるようになる。

なお、限界利益を増やすには、変動費比率を下げることも重要だが、値上げではなく、新しい価値を付けて販売価格を見直すと

考え方も大切だ。

販売単価を上げるには値上げだけではない!

 

(2)収益性

CVP分析は、損益分岐点比率や経営安全率などから「収益性」の問題も判断できる。

収益性は、経営の安全性にもつながる重要な要素だ。

事業ごとにCVP分析を行えば、採算の取れる事業とそうでない事業もわかるようになる。

収益性が低い場合は、付加価値も含めた販売価格の見直し、かかっているコストのどこを削減すべきか見えるため、対処ができる。

仮に、それでもなお、収益性改善が見込めない場合には事業撤退も考えることになる。
CVP分析はその意思決定の材料にもなる。

 

(3)営業の変化とコストの変動

営業とは、生産活動や販売活動のことであり、変動費でもある。

CVP分析で、営業を変化させた場合、販売数量とコストの変動をシミュレーションすることによって、

これまでになく、バランスの取れた営業活動が可能になる。

 

 

 

このように損益分岐点分析をまた違う角度からとらえることによって、より理解が深まり、実務応用可能なものとなる。

中小企業経営もいまやどんぶり勘定や気持ちだけでは継続させていくことは徐々に難しくなっている。

少し科学的な観点から経営を見つめ直すことも大切なことだと思われる。