287.420万社の経営者に役立つ会計の見方 セクション7

2016年11月26日

セクション7 総資産の見方 -その3ー

 3 運転資金の見方

総資産の見方3回目は「運転資金の見方」です。

 

(1)運転資金とは

運転資金とは、「日常の会社運営に必要な資金」という意味です。

では、その日常の会社運営に必要な運転資金とは、どこに示されているのでしょうか?

それはB/Sの『負債』に示されているのです。

 

(2)広義の運転資金

ひとつの運転資金は、負債の『流動負債』です。

流動負債とは、1年以内に支払うことを条件に他人から調達している資金でしたね。

会社はこの流動負債をもとにして、「日常の会社運営に必要な、いろいろな資金使途を賄っている」とも考えられます。

このことを「広義の運転資金」といい、『流動負債』のことを指します

では一方、日常の会社運営に必要な資金の使途とは何なのでしょうか?

それが『現預金を除く流動資産』です。

現預金を除く流動資産は、1年以内で運用して、現預金化できる使途と言えます。

したがって「現預金を除く流動資産」と「流動負債」を比べることによって、

調達しなければならない不足している「広義の運転資金額」を掴むことができます。 計算式化すると次のとおりです。

 広義の運転資金要調達額 = 現預金を除く流動資産 - 流動負債

◆この数値がマイナスであれば、自社の広義の運転資金には余裕があるということになります

◆逆にこの数値がプラスであれば、使っている方が多いということになりますので、要調達高が発生します。

◆この要調達高が手元の現預金で賄えているのであれば自社で資金繰りはできますが、賄えなければ外部から資金調達を

 しなければなりません。

大企業であれば市場から直接資金調達することも可能なのでしょうが、中小企業はそうもいきませんので

金融機関からの短期借入金を申し込み、資金調達をすることになります。

したがって、経営者である私たちは、毎月この『広義の運転資金要調達高』を確認し、資金需要を予測しなければなりません。

事前に資金不足を予測することで、逼迫した状態ではなく金融機関に融資申込できますので、借入も起こしやすくなります。

 

(3)狭義の運転資金

もうひとつの運転資金は、流動負債の中の『買入債務』です。

買入債務は金利を支払う必要がない、日々の売買活動で他人から調達している資金とも言えます。

この買入債務をもとにして、会社は「日々の売買活動に必要な資金使途を賄っている」とも考えられます。

このことを「狭義の運転資金」といい、『支払債務』のことを指します。

では一方、日々の売買活動に必要な資金の使途とは何なのでしょうか?

そうですね、それは『売上債権』と『棚卸資産』です。

売上債権と棚卸資産は、売買活動で現預金を得ていくための使途と言えます。

したがって、「売上債権+棚卸資産」と「買入債務」を比べることによって、

売買活動を行うために調達しなければならない狭義の運転資金額がわかります。 計算式化すると次のとおりです。

 狭義の運転資金要調達額 = (売上債権+棚卸資産) - 買入債務債

◆この数値がマイナスであれば、売買に関する運転資金には余裕があるということになります。

◆逆にこの数値がプラスであれば、使っている方が多いということになりますので、要調達高が発生します。

◆この要調達高が手元の現預金で賄えるのであれば自社で資金繰りはできますが、賄えなければ先ほどの説明と同じで、

 外部から資金調達をしなければなりません。

たとえば、売上が急激に伸びている会社があるとします。

すると当然のことながら仕入等が増えて行きますので『買入債務』は増加していきますが、

売上債権の回収期間が長かったり、そのために多くの在庫を持ったりするとどうなるでしょうか?

『売上債権』と『棚卸資産』はますます多くなり、「狭義の運転資金要調達高」が急激に大きくなっていき、

手元の現預金だけではまったく賄えなくなってしまいます。 これが「黒字倒産」の構図です。

したがって、経営者である私たちは毎月この『狭義の運転資金要調達高』を確認しなければなりません。

事前に売買活動の運転資金要調達高の増加を察知することで、対応策も十分に検討することができます。

 

(4)自社の売上100万円当たりの要調達率を知る

では、運転資金が苦しくならないように、その自社の体質を知る方法はあるのでしょうか?

それが「運転資金要調達率」というバロメーターです。

要するに「うちの会社は100万円売上が増えるとどのくらい運転資金を増やさなければならないのか」という指標です。 

これは先ほどの運転資金要調達高を年商で割ればわかります。

 売買活動の運転資金要調達率 = 狭義の運転資金要調達高 ÷ 年間売上高

 経常活動の運転資金要調達率 = 広義の運転資金要調達高 ÷ 年間売上高

◆この値が大きければ大きいほど要調達高は大きくなります。

 たとえば、売買活動の運転資金要調達率30%ということは「売上が100万円増えれば、運転資金は30万円必要です」

 ということです。

いずれにせよ、ここから学べることは「現預金を除く資産は極力小さくせよ」ということです。

会社や事業を大きくすることは経営者の夢ですが、それは決して必要以上に資産(外見)を大きくすることではないのです。

資産(外見)を大きくするということは、「それだけ大きなリスクも抱えている」という言い方もできます。

 

 

今回は自社の『運転資金』の見方を勉強しました。

その要点は

 1.運転資金には「広義」と「狭義」の2つある。

 2.それが「流動負債」であり、「買入債務」である。

 3.運転資金使途にも2つあり、それが「現預金を除く流動資産」であり、「売上債権+棚卸資産」である。

 4.それらを比較することで、運転資金の不足額(要調達高)が把握できる。

 5.それを手元の現預金と比較することで、自社の運転資金状況が把握できる。

 6.自社の運転資金のバロメーターは運転資金要調達率である。

 7.安全な経営とは、現預金を除く資産を極力少なくすることである。   以上です。

 

次回は、総資産の見方 その4 固定資産の見方 をご紹介します。 おたのしみに!

                                                   (次回へつづく)