274.黒字と赤字、どこが違う⑦

2016年8月31日

第7回 黒字企業と赤字企業の「経営分析結果の違い」(4)

今回は損益・収益性の違いを見てみましょう。

経営分析結果については、No.271のコラムを参照ください。

 

4.損益・収益性の違い

 優良企業と赤字企業の損益で気が付くことは、売上高営業利益率や売上高経常利益率が大きく違うことは当たり前のことですが、
その源泉はまず、『No.38 売上総利益率』にあります。 優良は34%・赤字は28%と、6%の違いがあります。
赤字企業の平均年商が1億2千万円あまりですので、6%というと720万円の差があることになります。
これだけ粗利益に差があると、営業利益に対する影響が大きいことが理解できます。
 では、その原因はどこにあるのでしょうか。
売上総利益率の裏返し「売上原価率にある」というのは当たり前過ぎて、原因としての掘り下げが浅すぎます。
No.270のコラムをよく見てください。
赤字企業と優良企業の平均P/Lが出ていますが、よく見ると商品仕入原価の構成比はさほど違いがありません。
実は製造原価に、売上総利益6%の差の秘密があるのです
製造原価は、材料費・労務費・外注加工費・その他の製造経費に大別されますが、ここが優良企業と赤字企業では大きく違うということになります。

 次に販管費を見ます。『No.42 売上販管費率』は5%ほど、優良企業が少なくなっています。
金額では、優良企業の販管費は1億1千万円と赤字企業の4千万円の約3倍ですが、売上高比率では少ないということです。
つまり、優良企業は売上高が大きいので比率は低いですが、販売費・一般管理費にはしっかりお金はかけているということです。

 そこで売上高を見ましょう。しかも一人当たりの売上高を。
No.43 売上高(月)/人』を見ますと、180万円対100万円、ほぼダブルスコアです。
これだけ違いますと、一人当たりの人件費(優良は43万円、赤字は28万円)も含めて、しっかり販管費をかけられます。
しかしこの一人当たりの売上高の違いは、優良企業の社員は月間180個売っているのに、赤字企業の社員は月間100個しか
売っていないと、単純生産性の違いだけと捉えるのではなく、付加価値が大きく違うと捉えるべきかと思います。
付加価値とは、必ずしも製品性能・機能・デザインだけでなく、おもてなし度(応対・整理整頓・ディスプレイなど)も含めたものであることを理解すべきかと思います

 最後に収益構造を表す『No.48 損益分岐点』を見ましょう。
優良企業は83%、収支トントンまで17%売上が落ちても持ち堪えられます。
一方、赤字企業は、赤字ですから109%です。あと10%程度、売上を伸ばさないと収支トントンにはなりません。
その理由は限界利益が売上100円に対して43円しかないのに、固定費が47円もかかっていることにあります。
さて、どうしますか?
具体策はそれぞれ企業で実状が違いますので、個々に考えるしかありません。
そして考えるだけではなく、実行に移すということです。 この流れをマネジメントと呼びます。
いま、マネジメントが必要でない企業はありません。 お分かりいただけました?

 

 最後に『No.2 企業件数構成比』と『No.37 雇用人数シェア』を見てください。
優良企業はこの統計資料上は9千社、4%しかなく、赤字企業は13万4千社、60%もあります。
さらにそこで働いている人は、優良企業では17万人、6%ですが、赤字企業では134万人、47%もおられます。
赤字企業は多くの人を雇用し、雇用上の社会貢献は大きいものがあります。
その経営者である社長さんは他人を雇用した以上、大きな責任・使命があります。
ぜひ、会計をもとに、自社の姿を客観的に捉えていただき、必ず改善すべきところがある筈ですので、改善されて永続企業として
成長されていくことを願います
意外とこのようにマネジメントされれば、経営は簡単なものではないか、とも思います。

 

 

<損益・収益性のまとめ>
(1)赤字企業は売上原価(特に製造原価)が多い。
(2)赤字企業は価格競争に挑んでいる場合が多い。(?)
(3)赤字企業は限界利益以上の固定費がかかっている。
(4)赤字企業の経営改善の社会的意義と社会的貢献度は非常に大きい

 

 

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