541.新.財務諸表9 まとめ

2021年11月21日

8回に渡って「新.財務諸表」を掲載してきましたが、財務諸表を経営に活かすヒントになったでしょうか?

少しで参考になれば幸いです。

今回はそのまとめをお送りします。もしわからないところがあれば、各コラムを振り返って、見てください。

 

1 財務諸表の概要(コラムナンバー532)

 ①財務諸表は自社の経営成績を表し、P/Lはこの1年でいくら儲けたのか、B/Sは自社の財政状況を明らかにします。

 ②上場企業においては、財務諸表は利害関係者に報告するものですが、一般中小企業においては経営者に向けた報告書です。

 ③作成にあたってはその客観性を保つためにも、企業会計原則に沿って、7つの原則を守らねばなりません。

 

2 貸借対照表が表すもの(コラムナンバー533)

 ①B/Sは、資金の運用と資金の調達を表します。

 ②資金の運用は総資産と呼ばれ、1年基準によって、流動資産と固定資産に分けられています。

 ③流動資産はその流動性(換金性)によって、さらに、当座資産、棚卸資産、その他流動資産に分けられています。

 ④固定資産はその形状によって、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産に分けられています。

 ⑤資金の調達は負債・純資産と呼ばれ、負債は他人資本であり、純資産は自己資本を示します。

 ⑥負債も1年基準によって、流動負債と固定負債に分けられています。

 ⑦純資産は資本金と、P/Lの利益を積み上げた繰越利益剰余金のことです。

 

3 負債が表すもの(コラムナンバー534)

 ①負債とは、資金調達の出所を示し、そのすべてが他人資本です。

 ②流動負債とは、日々の営業活動を通じて得た資金調達であり、1年以内に返済する他人資本の集まりです。

  したがって、営業負債と呼ぶこともできます。

 ③固定負債とは、基本的には設備投資のために得た資金調達であり、1年以上をかけて返済する他人資本の集まりです。

 

4 純資産が表すもの(コラムナンバー535)

 ①純資産とは、昔は資本と呼ばれていましたが、そのすべてが自己資本です。

 ②自己資本は最初は資本金だけから始まりますが、その後、事業を続けて得た利益である繰越利益剰余金が加わります。

 

5 資産が表すもの「前編」(コラムナンバー536)

 ①当座資産は、現金、預金、受取手形、売掛金などから構成されます。

 ②現預金は資金の運用というよりも、余剰資金という色彩が強く、手元資金とかキャッシュとも呼ばれるものです。

 ③現金は企業にとってポケットマネーですから、多額の現金を手元に置いておくものではありません。

 ④預金は将来の使途(賞与、納税、設備投資など)別に分けて管理することが、資金繰りに強い会社にできます。

 ⑤受取手形と売掛金は合わせて売上債権と呼ばれますが、受取手形はなるべく無くすようにしましょう。

 ⑥売掛金は月々そんなに大きく変動するものではありません。

  もし、大きく変動するようなら、それは何らかの問題があることを示していますので、調査します。

  また、売掛金は期日通りに回収することが、不良債権化させない秘訣です。

 

6 資産が表すもの「後編」(コラムナンバー537)

 ①固定資産は、基本的には生産に関係する設備のことです。

 ②また、減価償却できる償却資産と、できない非償却資産に分けることもできます。

 ③減価償却費に相当するキャッシュは運転資金として使うのではなく、積み立てて次回の設備投資資金に充当するマネジメントが

  大切です。

 ④10万円未満の機器類は消耗品費、10万円以上20万円以下のものは一括償却資産として経費計上することが可能です。

 ⑤固定資産は回転率と固定長期適合率でマネジメントすることが重要です。

 

7 損益計算書が表すもの(コラムナンバー539)

 ①P/Lは1年間の事業活動の純利益を表すとともに、どこでその増減が生じているのか、プロセスがわかります。

 ②プロセスとは、売上高、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益です。

 ③そのプロセスの増減をもたらすのが、営業活動、売上原価、販管費、営業外損益、特別損益、法人税等です。

 ④売上高とは、事業資金の源泉であり、顧客の支持や取扱い商品等の価値評価を表します。

 ⑤売上原価や販管費は事業資金の使途であり、それを少なくできれば資金は多く残せることになります。

 ⑥P/Lを作成するにあたっては、3つの原則(発生主義・総額主義・費用収益対応)を守ることが大事です。

 ⑦P/Lは、営業損益、経常損益、純損益の3つの枠組みから出来ています。

 

8 損益計算書を読む知識(コラムナンバー540)

 ①全部原価計算と直接原価計算の違いを知りましょう。

 ②管理会計P/Lの基本フォーマットは、売上高、限界利益、可処分利益、営業利益、経常利益です。

 ③その増減をもたらすものが、マーケティング、直接原価(変動費)、人件費、固定費、営業外損益です。

 ④棚卸資産の増減は、売上総利益の増減に大きな影響を及ぼします。

  したがって、棚卸資産を支障のない限り減らすマネジメントが黒字経営と赤字経営の岐路となります。

 ⑤従業員の士気を高めるためにはいろいろな要素がありますが、そのベーシックなものは労働分配率です。

  経営方針は、企業が良くなるための方針だけではなく、同時に従業員が良くなる方針を明示することが大切です。

 ⑥減価償却費は資金の流出を伴いませんが、それを次回の設備投資資金として蓄積することが大切です。

 ⑦損益の改善策は、売上拡大、付加価値アップ、人件費拡大、固定費削減、マーケティングの組み合わせです。

 ⑧管理会計P/Lを活用して、必要売上高の試算をすることが大切です。

  その基本は、『必要固定費(総経費+人件費+利益+返済額)÷見込み限界利益率』です。

 

 

これらの基本知識をベースに体験で蓄積された知識と知恵を駆使して経営技術を磨けば、

どのような経営環境が訪れようとも、それらの荒波を乗り越えられる経営ができるようになります。