138.会計識字力 決算BS読み方

2013年11月16日

第15話 社長としての決・算・貸借対照表の見方

前回の「社長としての月・次・貸借対照表の見方」は大きな反響をいただきました。今回はそれに引き続く、「決・算・貸借対照表の見方」です。
決算ですから、今回の視線は長期的な視点となります。過去の実績から少し先の将来までの姿を連想し、講じるべき打ち手などを考えます。

1.決算B/Sのどこを見ればよいのか
決算B/Sも図式化すると月次B/Sと同様に下図のようになります。
bs-ver21

左側の「総資産」は資金運用、財産の状況を示しています
右側の「総資本」は資金調達、資金の出所を示しています
これ、B/Sを読み解くうえでのポイントです。よく理解してください。
表示順番は「流動性の配列」といって、総資産は上に表示されている資産ほど、早く資金化できる資産になっています。総資本も上に表示されている債務ほど、早く返済しなくてはならない債務になっています。
さて、社長であるあなたはどこから見ていますか?

(1)まず、会社にとって一番大事な『収益力』を点検する
企業である以上、儲けないと存在価値はありません。企業の究極的目的は稼ぐことです。
収益力は『営業利益』を『総資本』と比べることでわかります。
 【収益力】 = 営業利益 ÷ 総資本 × 100
専門用語では『総資本営業利益率』と呼んでいます。
(2)次に『資本活用度』を点検する
調達している資金である『総資本』はどうせなら有効に使いたいものです。
資本活用度は『売上高』を『総資本』と比べて測ります。
 【資本活用度】 = 売上高 ÷ 総資本
専門用語では『総資本回転率』と呼んでいます。
(3)事業の資金力『手元資金力』を点検する
収益力もある、資本活用も適正であれば、次は事業の資金力を点検する必要があります。
事業の資金力は『現預金』を『平均月商』と比べて確認します。
 【手元資金力】 = 現預金 ÷ 平均月商
専門用語では『手元流動性比率』と呼んでいます。

ここまでが基本事項となります。あまりB/Sがわからない場合でも、何とか努力してこの3つぐらいは決算のときには確認しましょう。

(4)当座の安全性『支払力』を点検する
当座の債務を支障なく支払うことができれば事業としては安心です。
短期的な安全性は『当座資産』を『流動負債』と比べることでわかります。
 【支払力】 = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100
専門用語では『当座比率』と呼んでいます。
(5)『設備投資力』を点検する
事業を継続するためには適切な設備投資が必要です。
設備投資力は『固定資産』を『固定負債・純資産合計』と比べて確します。
 【設備投資力】 = 固定資産 ÷ (固定負債+純資産) × 100
専門用語では『固定長期適合率』と呼んでいます。
(6)安全性の根本『自己資本力』を点検する
事業安全性の根本は『自己資本』の割合です。
自己資本の割合は『純資産』を『総資本』と比べることによってわかります。
 【自己資本力】 = 純資産 ÷ 総資本 × 100
専門用語では『自己資本比率』と呼んでいます。
(7)『借入金依存度』を点検する
借入金は中小企業にとって大事な資金源です。しかし過度の借入は経営を苦しくします。
借入金の依存度は『借入金合計』を『平均月商』と比べて確します。
 【借入金依存度】 = 借入金合計 ÷ 平均月商 × 100
専門用語では『借入金対月商倍率』と呼んでいます。
(8)『借入金利率』を点検する
過度な借入、無理な借入は金利となって現れてきます。
借入金利は『支払利息』を『借入金合計』と比べることによってわかります。
 【借入金利率】 = 支払利息 ÷ 借入金合計 × 100
専門用語では『平均借入金利率』と呼んでいます。

ここまでを決算書で見れば、おおよその自社の姿が見えてきて、課題もハッキリします。その課題を次期の経営計画の中で解決すべく折り込み、実行して行けばこれまでに無いような安定した経営ができるようになります。

いかがですか、このように決算B/Sで判断して行けば、これまでの成行き経営やどんぶり勘定ではなく、理路整然とした科学的な経営ができることになります。また早め早めに変化が捉えますので対応も早くなります。これが財務諸表が経営の羅針盤とかコックピットといわれる所以です。経営も感と経験だけでなく、科学的に経営する時代です。