622.会計の基本『簿記』②

2023年8月5日

 さて、インボイス制度の開始まで2カ月を切り、全国で460万件あるといわれている免税事業者のうち、

約100万件がインボイス発行事業者として申請して、課税事業者になるそうです。

そうなると事業継続が苦しくなる事業者が増加するうえに、コロナ時の借入金返済も迫られますので、

廃業や倒産する事業者が激増することが予測されます。

そこでいまこそ、足元の経営状況をしっかり把握して、適切な経営判断を行う事業運営が求められています。

もう、どんぶり勘定では経営はできません。

会計を『経営管理』のための業務として位置づけし直し、しっかりとした経営を行いましょう。

もうどんぶり勘定では経営はできない!

 

■前回の復習

 前回は簿記の前に会計資料の構造について説明しました。

会計資料は「B/S」と「P/L」から成りますが、それは「会社の財政状況」「会社の経営成績」などという抽象的なことを

表しているのではありませんというお話をしました。

B/Sは「資金の調達」とその「資金の運用」について貨幣価値に基づいて表しています。

同様に、P/Lも「資金の源泉」と「資金の使途」について貨幣価値に基づいて表しています。

だからこそ、それらを読み解き、分析することで、自社の経営状況がわかり、さらに打つ手についても考えられるのです。

会計資料は資金運用・資金調達・資金源泉・資金使途それぞれについて貨幣価値で表している!

だから自社の状況がわかり、打つ手が考えられる!

 

 簿記では、さらにおカネの動きを「左右両眼」で捉え、左を「借方」、右を「貸方」と呼びます。

『資金運用の増加』と『資金使途の増加』は「左」に、『資金調達の増加』と『資金源泉の増加』は「右」に表し、

それぞれその逆は減少を表します。

このことさえ理解できれば、ほぼ簿記はマスターしたことになります。

 簿記は資金運用と資金使途の増加は「左」、資金調達と資金源泉の増加は「右」に表す!

 

 さて、今回は、それらのことを基本にもう少し詳しく『資金運用』『資金調達』『資金源泉』『資金使途』について見てみます。

 

 

第2講 『資金運用』『資金調達』『資金源泉』『資金使途』の内容

(1)資金運用

 資金運用とは、調達した資金を「どのような形で保有しているのか」ということです。

その区分はおカネ(資金)になるまでのおおよその期間によって、『流動資産』と『固定資産』に大別されます。

 その大別は「ワン・イヤー・ルール」で、決算日後1年の間に資金化できる可能性のある運用を『流動資産』、

1年を超える運用を『固定資産』にします。

 さらに流動資産は『当座資産』『棚卸資産』『その他の流動資産』に分類され、当座資産は現預金の『手元資金』と売掛金などの

『売上債権』が含まれます。

少しややこしいかもわかりませんが、会計資料を読み解く・分析するうえで重要な知識ですので、理解しましょう。

       総資産=流動資産+固定資産+繰延資産

       流動資産=当座資産+棚卸資産+その他の流動資産

       固定資産=有形固定資産+無形固定資産+投資その他の固定資産

       当座資産=手元資金+売上債権

 

(2)資金調達

 資金調達とは、資金を「どのような形で持ってきたか」ということです。

自社で都合できたものを『純資産』、それ以外の方法で都合したものを『負債』といいます。

また、自他で分類して、純資産は『自己資本』、負債は『他人資本』という言い方もし、併せて『総資本』といいます。

 負債は、おおよその返済期間で『流動負債』と『固定負債』に大別されます。

大別は資産と同じく「ワン・イヤー・ルール」で、1年の間に支払期限が到来するものを『流動負債』、1年を超えるものを

『固定負債』にします。

 純資産は自己資本ですが、中小零細企業であれば、『資本金』『繰越利益剰余金』『当期純利益』に大別されます。

少しややこしいかもわかりませんが、資金運用と同様、会計資料を読み解く・分析するうえで重要な知識ですので理解しましょう。

総資本=負債(他人資本)+純資産(自己資本)

           負債=流動負債+固定負債

           純資産=資本金+繰越利益剰余金+当期純利益

 

(3)正しく区分することが大切

 会計資料を読み解いたり分析したりするうえで、上記の区分を正しくすることが大変重要です。

読み解いたり分析したりする前提は、この区分が正しくされているということが前提になっているからです。

 例えば、正しく区分されてあれば、

・『流動負債』を元に『固定資産』を購入してはおカネの使い方としておかしいことがハッキリ理解できます。

・また『流動負債』は1年以内に返済しなければならない他人資本なので、その運用はできれば比較的早く資金化できる

 『流動資産』に運用することが望ましいことも理解できます。

・もっと堅実に考えれば、『流動負債』は極力『当座資産』で運用しておきたいという考えも理解でできます。

・特に区分するうえで注意しなければならないものは『借入金』です。

 短期・長期の2区分だけではなく、ぜひとも『1年以内返済長期借入金』を交えて区分しておきたいものです。

これもすべて正しく区分できていてこそできる判断です。

     会計資料を経営に活かすには

ワン・イヤー・ルールに基づいた区分が正しくされていることが前提です!

 

(4)資金源泉

 資金源泉とは、「資金の源、資金の元」という意味です。

資金源泉には『売上高』が大部分を占めますが、あとは雑収入などの『営業外収益』が含まれます。

売上があってこそ、請求書を発行すれば『売掛金』となり、やがて期日が来れば口座に振り込まれ『預金』になります。

 この売上から預金に含まれるまでの期間のことを「サイト」と呼びます。

通常、掛売であれば当月分の売上を月末に請求し、翌月25日を支払期限としていれば、翌月回収なのでサイト「1」になります。

この回収期間をいかに短く、そして確実にさせるかが、大変重要です。

資金源泉は「仕入」ー「在庫」ー「売上」ー「売上債権」ー「預金」という流れになるが

大事なことはこの流れの期間を如何に短縮するか、確実に回収するか、です!

 

(5)資金使途

 資金使途とは、「売り上げるためのおカネの使い途」です。

売上を上げるためにはいろいろな費用が必要になりますが、簿記ではそれをいくつかに大別しています。

それは、「売上原価」「人件費」「販売費」「一般管理費」「営業外費用」です。

 この区分を正しく行うことで各段階の利益が正しく掴めます。

          売上総利益 =売上高ー売上原価

          処分可能利益=売上総利益ー人件費

          営業利益  =処分可能利益ー(販売費+一般管理費)

          経常利益  =営業利益ー営業外費用+営業外収益

このように各段階の利益を把握して、自社の販売活動のどこに問題があるのかがわかることになります。

 また資金(おカネ)が減少する要因はこれだけでなく、借入返済などでも減少しますので、このことを注意することが大事です。

社外流出=経常支出+財務等支出

      注1:社外流出とは、資金が会社から出ることをいいます。

      注2:経常支出とは、『経常損益』で支出する資金という意味です。逆の用語は『経常収入』といいます。

      注3:財務等支出とは、経常支出以外の支出する資金という意味で、借入金返済や固定資産購入などがあります。

        逆の用語は『財務等収入』といいます。

 

これらのことがわかってくると、会計の読解力が高まり、経営分析ができるようになってきます。