345.会計活用のエッセンス⑨

2018年1月5日

第9回 「固定負債」の読み方・見方

 今回は「固定負債」の読み方です。
固定負債とは前回の長期借入金も含め、基本的には設備投資のために調達した固定性他人資本です。

ですから固定負債の使途・運用を管理することが大事で、自己資本と合わせてすべての設備投資(固定資産)がこの固定性他人資本を賄えているかどうか、ということが読み方のポイントとなります。

では、そんな固定負債の具体的な読み方・見方をご紹介します。

 

1 固定負債の概要

 もう一度、固定負債の概要をおさらいしましょう。

(1)固定負債とは設備投資するために調達した資金

 固定負債とは、長期間にわたって返済できる固定性他人資本と言えます。

他人資本ですから借金であることには間違いありませんが、長い期間で返済すればよいので、固定資産に運用する資金の調達として最適です。

(2)固定負債の主な科目

 長期借入金、長期未払金、役員借入金などがありますが、長期未払金と役員借入金は表現が違うだけで、同意語と考えて良いかと思います。この両者はいずれも経営者が会社に提供している資金である場合が多く、その意味では他人資本に区別はされていますが実質的には自己資本とも言えます。

 しかし一方では、経営者が自分のお金を事業に注ぎ込まなければならないほど資金繰りが苦しいという見方もできますので、会社の資金繰りの悪さを示すものであるという見方もできます。

 そういう意味では、なるべくないようにする方が望ましいと言いますが、そもそも借入金がある時点でそうだとも言えますので、さほど気にすることはありません。むしろ、銀行借入よりは役員借入の方が経営的には安全という見方ができます。

 ただし、個人と会社を区別する観点からは、なるべく長期未払金や役員借入金はない方が望ましいと言えます。

 

 2 固定負債の読み方・見方

 以上のことを予備知識として、月次試算表から固定負債に関する状況を読みましょう。

(1)固定負債の使途適正度を読む

 固定負債は基本的に設備投資のために調達した資金です。逆に言えば、設備投資は自己資本と固定負債内でしていることが望ましいということなります。

  固定資産 ÷(固定負債+純資産)×100 =X%   ☚固定長期適合率

   ※設備投資(固定資産)の財源として固定負債に純資産も加えます。

   ※固定資産には繰延資産もあるのであれば、それも加えます。

もし、この「固定長期適合率」が100%を超えるようであれば、明らかに問題です。100%を超えているということは長期運用する固定資産を、短期に返済しなければならない流動負債でも当てがっていることになるからです。
わかりやすく言えば、住宅を一部カードローンを当てがって取得しているようなものです。普通、そんな無茶はしないでしょ?

経営も同じです。できれば、この固定長期適合率は次の設備投資もありますから、70%~80%程度には抑えたいものです。

(2)長期借入金を読む

 長期借入は設備投資のために金融機関から借りる融資ですので、返済期間は5年とか、7年とか、長い期間で返済できる他人資本です。それを念頭に長期借入金は次のように読みます。

 (長期借入金+1年以内返済長期借入金)÷ 平均年商 =Y年分   ☚長期借入年商倍率

長期借入金の最長返済期間は一般的に7年程度ですので、この長期借入年商倍率はそれ以上あれば、ちょっと無理しているのではと判断できます。 

 さらに、返済予測を読みことも重要です。

 (長期借入金+1年以内返済長期借入金)÷(営業利益+減価償却費) =Z年分   ☚長期借入金返済完了期間  

最大に多く見積もった「借入金の返済原資」は、営業利益と減価償却費です。これがもし「7年」を大きく超えるようであれば、明らかに現状の返済能力から考えれば、借り過ぎです。早急に返済期間を延ばす交渉をするか、利益を増額させる戦略・戦術を立てる必要があります。

 

 

 このように固定負債も月次試算表から読めるようになると、調達資金の運用が適正となり、運用が適正になれば財務体質の強化につながり、安定した会社経営ができるようになります。
もし、少しでもそのようなことを始められたあなたは、きっとあなたの会社をインプルーブ(良く)していけます。
さらに堅実な経営していければ、会社は発展します。なぜなら、会社の発展は堅実継続の結果だからです。

 

 

現在はただ一生懸命、商売・仕事をしていれば事業が継続できる時代ではありません。

それだけ世の中の変化は激しく、早くなっています。それが、高度成長後の現代、成熟社会だと思います。

ぜひ、いま一度経営というものを考え、創意工夫と実行でさらなる発展を目指しましょう。

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