253.景気に負けない経営管理-1

2016年3月20日

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事業とは、自社の事業に投資を繰り返して、成長を成し遂げていくものです。その投資の内容を表しているのが、月次試算表あるいは決算書の貸借対照表「資産の部」です。
では、その資産の状況をどのように判断すればよいのでしょうか?
多くの企業は毎月、貸借対照表を作成しながらも、その見方を誰からも教えられず、ただ手もとに置いているだけの場合が多いようです。

 

そこで今回からは、その主な資産の判断の仕方について、わかりやすく説明して行きます。

ぜひ、毎月の貸借対照表を読み解きながら、自社の資産状況に問題がないのかチェックをし、景気などに負けない、逞しく永続的に事業を経営していきましょう。

 

 

■景気に負けない経営管理 第1回「手元資金の判断」

1 手元資金とは

事業は手元資金が途切れれば、継続することができません。したがって、手元資金の管理は大変重要なことです。
では、手元資金とは何でしょうか?

書籍ではいろいろ説明されていますが、実務の手元資金とは「現金」と「預金」の合計のことです。
その手元資金の状況を判断するためには、毎月の貸借対照表に記載されている現金残高と預金残高に間違いがないことが前提となります。

預金は預金通帳と照合すれば確認できますが、問題は現金です。客観的に照合するものがありませんので、日々の現金残高を確認できるものを作成する必要があります。それが「現金出納帳」です。
現金出納帳はできる限り毎日作成し、そして実残高と確認することが重要なのです。

 

2 手元資金の適性を判断するモノサシ

では、手元資金はどのくらいあれば適性と判断できるのでしょうか。
そのモノサシはいろいろありますが、そのいくつかを紹介します。

■モノサシ1 『平均月商』

平均月商』とは、いってみれば、会社の生活費です。会社は平均月商の中で毎日の生活をしているとたとえることができます。
平均月商から、毎月の仕入れ代金を支払い、人件費を支払い、その他経費を支払い、そして将来の事業のための「貯蓄」を残さなくてはなりません。その貯蓄のことを「利益(営業利益や経常利益)」といいます。

したがって、平均月商と比べて手元資金残高を確認することには、大きな意味があります。
では、どのくらいあればよいのでしょうか。

もちろん「多い」に、越したことはないわけですが、安心して事業をしていくためには、最低でも平均月商2カ月分ほどの手元資金は必要なのではないのでしょうか。
この基準は、経営者の皆さんがそれぞれお考えになればよいことですが、この基準を持つことがマネジメント・経営です。

しなしながら、月商1カ月分の手元資金もないのであれば、やはり心許ありませんから、最低でも1カ月分以上の手元資金が常にあるように経営する努力をすべきかと思います。

このことを専門的には「手元流動性比率」と呼んでいます。

 

■モノサシ2 『平均月次総費用』

いまほどの平均月商には貯蓄(利益)が入っていますが、それに比べて平均月次総費用(原価+経費)には貯蓄は入っていません。
したがって、平均総費用とは「最低限の生活費」ともいえます。
シビアに手元資金残高を判断したいときは、平均月次総費用と比べられるとよいと思います。

 

■モノサシ3 『借入金』

借入金とは、銀行からの借金のことです。
貸借対照表には、借入金は「短期借入金」、「1年以内返済長期借入金」、「長期借入金」の3つに分けて表示されています(ここでの説明は避けますが、この3つに分けて借入金を把握することは、経営上非常に重要です)。

これと手元資金残高を比べることも有効です。
借金があるのに、その返済原資である手元資金が少なければ、心許ないことは生活感覚でもわかります。経営も同じなのです。

この基準も経営者の皆さんがそれぞれお考えになればよいことですが、この基準を持ちながら経営されることはマネジメント上、非常に重要です。一般的に言えば、せめて、借入金額の3割程度の手元資金は持っておきたいものです。

ところで、借入金よりも多くの手元資金がある状態のことを「実質無借金経営」といいます。
上場企業の多くはそれを一つのベンチマーク(指標)にしていることも覚えておきたいことです。一般的に、上場企業は中小企業より多くの資金を持っているわけですが、そのような上場企業でも「実質無借金」という指標をもってマネジメントしているわけですから、私たちもそれを目指して経営したいものです。

 

■モノサシ4 『総資産』

総資産とは、事業で投資運用している資産の合計額です。
この総資産の何割程度の手元資金があるかということも重要な判断基準です。

上場企業であれば手元資金の持ち過ぎは、時には投資家より「資金の有効利用をしていない」と批判の対象にもなりますが、中小・小規模企業の場合は投資家はいませんので、安全性の面からあればあるほど良いといえます。

では、総資産に対してどのくらい手元資金があればよいのでしょうか?
この基準も経営者の皆さんがお考えになればよいことですが、平均月商の2カ月分程度の手元資金を持つということから逆算すれば
最低でも33%程度は持つことがが理想だと思われます。
総資産1億円であれば、3300万円程度の手元資金ということになります。

 

このほかにも人件費や支払債務など、いろいろなモノサシが考えられると思いますが、これで手元資金残高は管理すべしというルールはありません。経営者の皆さんが自社の特性に合ったモノサシで管理されれば良いと思います。
但し、モノサシは一つではなく、二つ三つは持たれたほうが良いと思います。

 

 

重要なことは、モノサシはどれであってもよいわけですが、この先行き不透明で変化が早い、いまの時代は「そのようなモノサシでマネジメントしなければならない時代である」ということを経営者の皆さんが認識されることです。
現在は事業にしっかりマネジメントすることが求められている時代です。