121.借入金依存度対策

2012年12月7日

8.借入依存にならないための対策
これまで借入依存体質になってしまう原因は 1.運転資金不足 2.設備資金不足 3.借入返済資金不足 の3つであると説明してきました。
今回はそうならないための対策を紹介します。

(1)対処療法
まず、3つの原因に対する対処療法を端的に紹介しましょう。
①運転資金不足の対処療法
運転資金不足に陥る原因は、買入債務に対して売上債権・棚卸資産が過大になり過ぎると運転資金不足が起こると説明しました。つまり、自社で運転資金不足を解消する方法は2つです。
一つは在庫を減らすことです。
もう一つは売上債権を減らすことことです。
在庫を減らすにはどうするか。これまでよりも一回の仕入量を減らすことです。
売上債権は期日とおりに回収することが大事です。そんなことはわかっているって?わかっているだけじゃなく、ぜひ動きましょう。
自社で具体的に何ができるかは経営者として皆さまにお考えいただきたいと思います。そしてその閃きを実行しましょう!

②設備資金不足の対処療法
これは明らかに無理な設備投資にあるといえます。売上が芳しくないのに、果たしてその設備投資で売上改善できるのかをよく考えてみることです。その前にいろいろやるべきことがあったということが圧倒的に多いというのが私どもの経験です。ですから、まず設備投資は思い止まりましょう。しかし、どうしても設備投資をすると意思決定する場合は、設備投資採算計画を策定し、その計画と実績をチェックすることが大切です。「PDCAマネジメント」というと、何か軽く聞こえたり、自社には関係ないと思われがちですが、プランに対する実行・検証・打開策というマネジメントは非常に大事です。

③借入金返済資金不足の対処療法
これはともかく営業利益、経常利益を増やすということです。そのためには売上原価率を抑え、販売費及び一般管理費を削減するということです。これも私ども経験値的に言えば、売上原価率は5%程度、販売費及び一般管理費は相当額が削減できるはずです。そのほかに売上単価を上げることを考えるという方法もあります。また併せて、それらの計画を持って、金融機関にリスケジューリングを依頼することも大変重要です。

(2)借入依存にならないための対策
次に借入依存にならないための対策を説明します。
①手元資金を増やす
ともかく手元資金(現預金)を増やすことです。増やすためにはどういう行動を起こせばよいのでしょうか・・考えてみてください。
1)経費削減
経費を抑えれば、それだけお金が残ることになります。ここで大事なことは大きな削減ももちろん大事ですが、実際は小さな削減が積もり積もって大きくなるということです。金額の多寡に関係はありません。ともかく無駄な経費は削りましょう。
2)売掛金の回収
何回も云いますが、まず期日通りに回収することが大切です。次に期日を短縮できないか、一部現金回収ができないかなども考えます。
3)在庫の圧縮
在庫を極力減らします。在庫を減らすということは、当然のことながら仕入も減りますので、仕入代金の支払額も減ります。また在庫が減ればデッドストックも必然的に減ります。大事なことはどうすれば在庫を減らすことができるかということです。一番簡単に成果が出る方法は1回当たりの仕入数量を減らすことです。
4)チェック方法
新聞などを見ると「実質無借金経営」という言葉をよく目にします。実は借入金というのは大企業以上に中小零細企業にとっては重要な資金源です。なぜなら、大企業には市場から直接、資金を調達する方法もありますが、私たち中小企業にとってはそういうことはできず、強いて云えばあとは役員借入しかありません。したがって、銀行からの借入金(つながり)は大事にする必要があります。
その意味では借入金をゼロにすることはあまり得策ではないと思います。ただ、いつでも借入返済ができるような態勢作りをすることは銀行からの信用を得るためにも重要なことです。それをチェックする方法が「実質無借金比率」という指標です。求め方はカンタン、次のように求めます。
実質無借金比率=現預金÷銀行借入金
これが1.0であれば借入金と同等の現預金を保有していることになります。できれば、常に0.5ほどにはしたいものです。

②黒字経営化を図る
借入依存症に陥らない根本的対策は「黒字経営化」です。黒字経営にならないと返済原資は出てきません。そのためには次のことが大事です。
1)固定費を削減する
固定費を削減すれば粗利益(限界利益)によって賄う経費が減ることになります。つまり、減らした分だけ利益が多く残ることになります。
2)変動費比率を抑える
変動費比率を抑えると、その分、限界利益率が増えることになります。限界利益率が増えれば、それだけ固定費を回収するパワーが大きくなります。つまり、早く黒字化できることになります。
3)売上単価を上げる
売上単価を上げるとは単に値上げをするということではなりません。商品に新しいサービスを付けたり、商品の組合せによって付加価値を上げたりすることです。売上単価を上げるということは変動費の増加を伴いませんから、それだけ粗利益率を上げられることになります。つまり、変動費比率を抑えると同様、早く黒字化できることになります。
4)チェック方法
黒字経営化のチェックは「損益分岐点比率」という指標でチェックします。損益分岐点とは、損と益が別れる点、つまり採算がゼロ、収支トントンとなる点です。ですからその比率は低ければ低いほど、早く採算が取れますから良いということになります。求め方は次のとおりです。
まず損益分岐点を求めます・・  損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率
次に損益分岐点比率を求めます・・損益分岐点比率=損益分岐点売上高÷売上高×100
固定費とか限界利益率とか算出するのも面倒かと思いますので、便宜的な方法もご紹介します。
便宜的損益分岐点売上高=販管費÷売上原価率
便宜的損益分岐点比率=便宜的損益分岐点売上高÷売上高×100

損益分岐点比率は80%以下を維持したいものです。

大企業の多くは実質無借金比率は1.0前後、損益分岐点比率は70%前後を確保しています。このことはできるかできないかではなく、経営の安定性の上からもこの程度は必要だという判断に基づいてマネジメントされていることです。私たちは大企業よりも弱い存在です。であるならば余計にそのようなマネジメントが求められていると思うのですが・・いかがお考えになりますか?

ご質問等はお気軽にインプルーブ研究所まで。