663.経営を強くする BSを読みこなす②

2024年6月21日

 経営環境が厳しくなって来ると、一番大事なことは自社の資金状況を把握することだ。

なぜなら、資金が尽きれば事業は破綻するからだ。

1社1社の中小企業の従業員数は少なくても、総労働人口の7割を中小企業は背負っている。

だから、企業は簡単に破綻させることはできない。

中小企業は働く人に「重要な使命」を持っている!

 

 上場・大企業であれば、資金を調達する方法は多くあるが、中小企業は社長自らが資金を出すか、銀行融資に頼るしかない。

しかし、銀行は経営が苦しいときには資金協力はしてくれない。

晴れの日に傘を貸し、雨の降るときには傘を貸さないとは、昔からよく言われていることだ。

では、どうすればいいのか。

 それは自社の資金状況を常に把握し、常に資金状況を改善して行くしかない。

その経営の舵取りが大切であり、このことに関してはゴールはない。

そこのことを、B/Sは中小企業経営者に常に提示してくれている。

あとは経営者が見るのか見ないか、あるいは見ても読めないのか読めるのかだ。

中小企業の資金繰りの改善に終わりはない、常に改善の連続だ!

 

 

1 資金とは

 では、資金とは何か。

会計的には支払手段となる資産のことを指し、それは「現金」と「預金」になる。

そのことを会計では、「手元資金」とか「キャッシュ」と呼んでいる。

したがって、資金有り高とは現預金合計のことであり、あとは「売上債権」が手元資金に準ずる資金として考えられる。

会計では、手元資金に売掛金を加えたもののことを「当座資産」と呼んでいる。

よって資金管理とは、この手元資金と当座資産の貯えを、十分に吟味することだと言える。

資金管理とは手元資金と当座資産の貯えを十分に吟味すること!

 

 

2 どうすればよい? 吟味の仕方

 では、どのように手元資金なり、当座資産を吟味すれば良いのか。

それはそんなに難しいことではなく、企業の経営も家庭の生活もその根本は同じなので、家計感覚で考えるとよい。

では、家計はどのようにチェックしているのか。

 

(1)1カ月の生活費

 まず、毎日の生活を安心して送るためには、それなりに生活費の何カ月分かを蓄えているということが大切だ。

それならば、企業も同じである。

企業の生活費は「売上高」なので、その何カ月分かの手元資金や当座資産があれば、とりあえず安心して経営することが出来る。

 そのような見方を『手元流動性比率』と呼んでいる。

手元流動性比率(月)=手元資金÷平均月商

 

手元流動性比率は、少なくとも平均月商の3カ月分程度以上でありたいものだ。

仮に月100万円の商いをしているのであれば、300万円程度の手元資金を持つことが一つの目安となる。

目安の一つとして3カ月分程度ではあるが、手元資金はあればあるほど安心できる。

手元資金が多いことは、中小企業にとっては悪いことや問題になることは何もない。

ここが一般投資家や機関投資家が存在する。上場や大手企業との経営と大きく違う点だ。

中小企業経営は手元資金が多いことが重要!

 

(2)日々の生活における借金返済

 次に家計であれば、毎日の生活の中でキャッシュレスで買い物をすることも多い。

このキャッシュレスを企業経営の中で考え直すと、支払債務や未払あるいは預り金などの流動負債が該当する。

支払日がくれば支払わなくてはならないので、その支払額より十分な手元資金があれば、経営は安心してできる。

 そのような見方を『手元資金比率』『当座比率』『流動比率』などと呼ぶ。

手元資金比率(%)=流動負債÷手元資金×100

当座比率  (%)=流動負債÷当座資産×100

流動比率  (%)=流動負債÷流動資産×100

 

 手元資金比率とは、流動負債である短期返済債務と現預金のバランスである。

少なくとも手元資金比率は100%以上はないと経営は危ない。

 当座比率とは、流動負債と手元資金に売上債権を加えたバランスである。

売上債権は必ず回収できるとは限らないので、当座比率となると200%以上にはしておきたいものだ。

 流動比率とは、流動負債と当座資産に棚卸資産やその他流動資産を加えてバランスである。

流動資産には資金化できるまでまだまだ時間がかかる棚卸資産と、資金化できるかまだわからないその他流動資産が混じるので、

流動比率になると400%程度にはしておきたいものだ。

 これらは上位の見方の方が、内容を見れば、手堅いチェックになることが理解できる。

しかし、いずれも「100%あれば安心」という見方では、ちょっと心許ない。

いずれもそれ相当の余裕がないと、安心した経営はできない。

 

(3)借金の返済

 家計であれば、住宅ローンなどの大きな借金があることも普通のことだ。

これを企業経営で考えると、銀行からの借入金が該当する。

最近は銀行も対応が優しくなったが、それでも融資を返済しなくともよいという銀行はどこにもない。

いまでも返済が滞り続けると、いずれ銀行取引が停止され、商売を続けることは難しくなる。

その銀行借入に対する状況を『借入金平均月商倍率』や『債務償還年数』『ギアリング比率』などで経営状況の判断する。

          借入金月商倍率(月)=銀行借入金÷平均月商

          債務償還年数 (年)=銀行借入金÷年間営業利益

          ギアリング比率(%)=負債÷純資産×100

 

 借入金月商倍率は、銀行借入金が平均月商の何カ月分あるのかを見る方法だ。

道理では借入金は平均月商の3カ月分以内には抑えたいところだが、甘く考えても最大12カ月分以内には抑えておきたい。

 債務償還年数は、いまの銀行借入金を、最短で何年間で返済できるのかという試算だ。

最短の返済期間を計算するために、営業利益全てを返済に充てるという考え方をする。

赤字であれば営業利益は無いのだから、借入金の返済は1円も出来ないということなるので、赤字経営が如何に問題かは

認識しなければならない。

世間一般の中小企業は赤字でも平気な企業が多すぎると思われる。

赤字経営では借入金の返済は1円もできない!

 

できれば、いまの長期融資の返済期間が最大でも7年間程度なので、悪くとも債務償還年数は7年以内になっているように

経営はしたいものだ。

できれば、追加融資をお願いできる状態も考えれば、その半分の3~4年程度にはしておきたい。

 ギアリング比率は、自己資本の何倍にあたる他人資本があるかということだ。

言い換えれば、少ない資本で大きなビジネスを展開しているとも言えるが、現実的にはそんな前向きな状況はほとんどない。

借金まみれで、結果的にギアリング比率が高い場合が圧倒的に多い。

そういうところから考えれば、最大でも200%程度以内には抑えたいことろだ。

ギアリング比率200%ということは、つまり、自己資本比率が33%ということになる。

現在、中小企業の平均自己資本比率は改善されているが、それでも約40%なので、そこから考えれば想像すれば、

これは決して楽な目標ではない。

 

(3)未来必要資金の余裕を持つ

 家計でも、将来の子供たちの学費、あるいは住いの修繕、また大型家電の買換えなどが気になることが多くある。

これらは事業経営で考えると、設備投資できる余地にあたる。

その設備投資に対する余地は『固定比率』や『固定長期適合率』などで経営判断する。

        固定比率   (%)=固定資産÷純資産×100

        固定長期適合率(%)=固定資産÷(固定負債+純資産)×100

 

 固定比率は、固定資産に対する自己資金の割合を示す。

どの程度までが許容範囲かは一概には言えないが、それでもできれば、固定資産の半分程度は自己資金で賄いたいものだ。

半分程度ということは固定比率200%以下のことであり、その状況であれば追加固定資産投資できる余地もあるかもわからない。

 固定長期適合率は、固定資産を固定性資金で賄えているかを示す。

これが100%を超えていれば、固定性資金だけで設備投資を賄えていないことになるので、とても追加固定資産投資できる余裕は

ないということになる。

したがって、固定長期適合率は100%以下になっていないと、無理な設備投資を行っていることを伝えている。

設備投資は時とともに行う必要があるものだから、そのことを踏まえれば、常に50%以下にはしておきたいものである。

 

(4)販売・購買に関する運転資金の状況

 運転資金とは、日々商売を行っていくために必要な資金のことだ。

企業は毎日、販売と仕入を繰り返しているが、この売買活動にも当然のことながら資金が要る。

そのことをここでは「運転資金」と呼んでいる。

その『運転資金要調達高』や『運転資金要調達率』を把握し、資金状況を確認しておくことも大事なことだ。

        運転資金要調達高(千円)=(売上債権+棚卸資産)ー買入債務

        運転資金要調達率 (%)=運転資金要調達高÷年換算売上高×100

 

 運転資金要調達高は、毎日の売買活動に必要な資金を示している。

そんなことがわかるのか?と思われるかもしれないが、考え方次第でおおよその察しが付く。

考え方は、販売で運用している資産から、購買で調達している他人資本を引き算をすれば、

自己資本で用意しなといけない運転資金が計算できる。

これは少なければ少ないほど、運転資金の資金繰りが楽になることを示している。

しかし仮に、毎月毎月売れて売れて嬉しい悲鳴を上げている場合は現金商売でない以上、この運転資金要調達高がどんどん膨れ

上がってくるので、場合によってはいわゆる”黒字倒産”ということになる恐れもある。

 その運転資金要調達高を年間売上高で割ると、必要な運転資金要調達率が把握できる。

たとえば、運転資金要調達率が10%ならば、年商5千万円の場合なら、5百万円が運転資金として必要であることを示す。

したがって、手元資金は常に5百万円以上は用意しておかねばならない。

運転資金要調達率が大きすぎると黒字倒産になりかけないので要注意!

 

 

B/Sが読めるようになれば、これだけの手元資金に関するインジケーションが見えてくる。

読み方を考えることが大切で、計算式や計算は状況が読める程度でよい。

B/Sを読んで、自社を強くしていこう!