21.債務償還力②利益金利比較

2009年10月17日

財務分析解説コラム(5) 当社の債務償還能力は大丈夫?金利の支払能力を見極める -インタレスト・カバレッジ・レシオ-
前回は債務償還能力の『債務償還年数』について説明をしました。今回は債務償還能力の第2回目『インタレスト・カバレッジ・レシオ』について説明します。

債務償還能力とは
説明が前後しますが、前回から使っている『債務償還能力』という言葉について説明します。「債務償還(さいむしょうかん)」という言葉はたいへん難しい言葉ですね。債務とは、広辞苑によれば「他人に対して一定の給付(行為)をなすべき義務」と説明されています。また、給付とは、「財物を供給交付すること」です。これでもまだ難しいですが、つまり、「現金などを借りた人=他人に対して、契約等に基づいて=一定の、財物を与え渡すこと=給付する義務」を債務といいます。償還とは、「返すこと・返却のこと」です。これらをまとめると『債務償還』とは、「現金などを借りた人に対して、契約に基づいて現金などを返済する義務を、その返済義務とおりに返済すること」といえます。
重要なポイントは、借りたものをただ返せば良いのではなく、「契約書とおりに返済する」ということです。この能力のことを『債務償還能力』といいます。

インタレスト・カバレッジ・レシオとは
またまた難しい。しかも英語です。インタレスト(Interest)とは、たしか中学生の頃に「興味」とか「関心」という意味だと習いましたようね。そのとおりなんです、そのインタレストです。但し、ここでは「興味」や「関心」という意味ではなく、「利子」という意味です。カバレッジ(Coverage)とは、カバーするという言葉ととレンジという言葉の連語のようですから、「補う範囲」って感じですかね。そのとおりなんです。正確には、カバレッジとは「範囲」という意味を持つ言葉で、「適用する範囲、調査等でカバーした範囲」という意味などを持ちます。レシオ(Ratio)とは、「比率」という意味です。このように調べると、なんてことはありません。インタレスト・カバレッジ・レシオとは「利子を補う比率」とでも直訳できます。具体的には営業利益から利息は支払いますから、だいたい計算式も予想できるかと思います。
計算式:インタレスト・カバレッジ・レシオ=事業利益(営業利益+受取利息・配当金)÷支払利息・割引料
つまり、インタレスト・カバレッジ・レシオとは、「事業利益が支払利息等の何倍あるか」を見る指標です。もちろん、高ければ高いほど良い指標です。

インタレスト・カバレッジ・レシオの見方
インタレスト・カバレッジ・レシオは、会社の借入金などにかかっている支払利息の支払能力を見る指標です。会社の信用力を評価するための財務指標のひとつですので、格付をおこなう場合でも重視されます。特に金融機関においては、融資先の格付作業を行う際の代表的な指標の一つです。また会社としても、お金を借りたくても営業利益を超える利息を払っていくことはできませんので、会社の金利負担を判断・分析する上でとても重要な指標といえます。

インタレスト・カバレッジ・レシオを改善するには
インタレスト・カバレッジ・レシオは、平たく言えば「営業利益が支払利息の何倍か」を見る指標です。
この倍率が1倍ということは、受取利息・配当金がないと仮定すれば、営業利益と支払利息の金額が同じということになりますので、営業利益が金利の支払だけで全部吹っ飛んでいる状況です。ですから追加の借り入れ余裕は全くないと考えられます。さらに、1倍を切っている場合は、借り入れどころではなく、支払利息の支払すらできない状況です。
そこでインタレスト・カバレッジ・レシオを改善するにはどんな方策が考えられるでしょうか。具体的には次の2パターンに分けて考えられます。
(1)営業利益を増やして、インタレスト・カバレッジ・レシオを上げる
営業利益と増やすとは、売上総利益率の改善、つまり売上原価率を低減させることや、人件費及び経費の圧縮化や効率化によって営業利益率を改善することが考えられます。
売上原価率を低減させるとは、仕入交渉の検討であり、仕入数量の検討であり、在庫数量の検討ならびに実態の把握です。さらには売れ筋商品の絞り込みの問題でもあります。これらは一つ一つがたとえ小さな低減であっても、時間軸で考えるとたいへん大きな改善策となるので、こと細かく実施する必要があります。
人件費・経費の圧縮・効率化とは、経費節約と残業等の見直しです。具体的には経費節約額を積み上げる前に、「売上総利益-確保すべき営業利益=経費」という考え方で、いくら節約しなければならないのか金額算出をしてメスを入れるべきです。
(2)借入金を返済して、インタレスト・カバレッジ・レシオを上げる
借入金を返済するためには、返済原資を準備しなければなりません。そのためには、遊休資産があれば売却して借入金を返済するとか、割引を減らし割引料を減少させること、在庫一層セールなどが考えられます。
なお、インタレスト・カバレッジ・レシオの目安としては、10倍以上が理想的、1倍以下だと危険といえますが、中小企業の業種別平均値は次のとおりで、特に卸売業と小売業の低さが目立ちます。
建設業2.4倍/製造業4.1倍/情報通信業3.5倍/運輸業5.9倍/卸売業1.9倍/小売業1.3倍/不動産業3.4倍/飲食宿泊業3.3倍/サービス業4.3倍

いかがでしたか、難しい用語もその意味が掴めれば、意外とカンタンでしょ?
会計、財務分析は難しいと思い込んでおられる方も多いようですが、何度も言いますように「会計は、足し算・引き算と集計だけ」です。ですから決して難しいものではありません。また集計内容が分かれば、比べることによって、さまざまな意味付けができます。それを財務分析と呼んでいるだけです。
これからは時代は大きく変わり、『膨張の時代』から『収縮の時代』に入っています。よって、「これまでと同じことをやっていてはダメだ」ということです。会計も同様です。いままで読めなくとも膨張の時代でしたから、さほど困ることになりませんでした。しかし、いまからは収縮の時代ですから、会計が読めないと倒産の淵がそこに迫っているのに、気づくこともできません。
時代は違っているのです。「会計は会計事務所にお任せ」な~んて古い考えは捨て、自社にちょっとしたチェンジというスパイスをふりかけましょう。