15.成長性分析の種類

2009年8月31日

成長性とは
成長性分析とは、資本(調達し運用している資金)規模と売上規模から判定します。具体的には過年度と比較し、成長性が高い・低いを判定します。上場企業の場合は、成長性をマーケットに伝え、株価なり直接金融比率を高めていく必要がありますが、普通の企業の場合は株式を公開していませんから、取引先等から必ずしも成長性を大きく期待されているわけではありません。(そういえば、昔「♪大きいことはいいことだ」なんて歌がありましたね)。それよりも、安全性とか堅実性などに対する期待の方が大きいかもわかりません。

成長性に関する分析
(1)本業の成長性を確認する
①売上高伸び率 -当社は成長したか!?-
前年と当年の売上高を比較して、その伸び率を見る指標です。これまでは年10%以上の伸びがあれば優良といわれてきましたが、昨今では5%以上あれば優良といわれています。またこれだけ経営環境が激しく変化すると、前年比較だけでなく、2年、3年、4年、5年前と、5年比較する必要もあります。
②Zチャート -当社のトレンドはどうか!?-
これは下線に各月売上高線を、右上がり斜め線に累計売上高線を、上線に移動合計(移動合計とは月々1年間遡って集計するという意味です)売上高線をプロットすると、アルファベット「Z」のような線グラフが描けます。だからZチャートと呼びます。もし、毎月の売上がまったく売上変動がない超安定な会社は真っ直ぐな「Z」文字となり、成長性ナシの会社ということになります。また急激に毎月々、売上が伸びている会社は右肩上がりの「Z」文字となり、急成長企業と判断されます。さらに毎月・毎月、売上が減っている会社は右肩下がりの「Z」文字となり、衰退企業と判断されます。
この手法の応用で1年を1ヶ月と見立てて、過去10年ほどの売上高でZチャートを作成すると、自社の本業の成長性や衰退性がよく把握できます。
③利益伸び率 -当社の収益率はあがっているか!?-
利益には5つの利益があります。売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、税引後当期純利益でしたね。それぞれについて前期と比較して毎年10%以上伸びていれば優良といわれています。この中でも最も重要なのが、会社の付加価値利率とでもいえる売上総利益伸び率、会社の本業利益率とでもいえる営業利益伸び率、会社の経営利益率とでもいえる経常利益伸び率の3点です。
(2)会社規模の成長性を確認する
①総資本伸び率 -当社の規模は大きくなったか!?-
一概に、総資本(他人資本+自己資本)が大きくなったから「いい」とは言えません。しかし、総資本規模=リターン大の期待値と考えれば重要なことともいえます。前年の総資本と当年の総資本を比べ、0.5%以上大きくなっていれば、企業目的から考えて優良だといわれています。
②自己資本伸び率 -当社はより健全に規模が大きくなっているか!?-
会社規模の成長性は、自己資本が伴って大きくなっていることが理想です。自己資本が大きくなるということは、増資によることもありますが、内部留保(長年の利益積立)によっても大きくなりますので、事業が市場から支持を受けていれば、そのようになっていくからです。従って、少し気にした方がよいかもわかりません。一般的に10%以上の拡大があれば優良、マイナスは危険と判断されます。
③その他
製造業などであれば、有形固定資産あるいは固定資産伸び率などを確認します。また上場企業の成長性を確認する指標としては配当性向があり、当期利益の何%を投資家などに配当しているのかを表します。投資家からいえば、配当性向の高い上場企業は魅力的な企業となります。

以上で成長性に関する財務分析は終わりますが、私たちにとって身近で重要なのは「Zチャート」ではないのでしょうか。会計期間におけるZチャートによる管理、2期比較のZチャートによる管理、年間売上高による
Zチャートは意外と自社の状況に対して、早期に警告を発してくれると思います。

次回は効率性分析の種類について説明します。どうぞ、お楽しみに・・

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