75.月次試算表BSの活かし方

2011年6月21日

21世紀に入り、日本の経済環境は大きく変わりました。端的にいえば、日本の市場はこれまでの『膨張の時代』から、少子化社会に象徴されるように『収縮の時代』に入ったということです。したがって「これまでと同じことをやっていてはダメ」ということです。
企業経営においてもこれまでは月次試算表や決算書が読めなくとも、経済膨張の時代でしたから、さほど困ることにはなりませんでした。しかしいまは収縮の時代ですから、会計資料が読めないと経営の危機がすぐそこまで迫っているのに気づくことすらできません。時代は変わっている。会計資料を読みこなして、自社にちょっとした“チェンジ”というスパイスをふりかけよう。
今回は前回の月次損益計算書に続き、月次貸借対照表です。

月次貸借対照表のどこを見ていますか?
毎月、会計事務所より月次貸借対照表が届いたならどこを見ていますか?(毎月届いていないならアウトです。早急に事務所を変えましょう)
なかなか貸借対照表の見方は難しいかもわかりませんが、よく見てみましょう。
右側の負債と純資産は事業で費やしている資金の出所を表しています。
左側の資産は、その資金で運用している資産を表しています。
そのように理解すれば会社の安全性が確認できます。いまは非常に厳しい経営環境ですから安全性は大変重要です。

1.まず、手元流動性比率を確認する
ともかく事業を継続するには手元資金が必要です。手元資金のことを“手元流動性”といい、手元流動性比率は短期的な安全性を見るに一番重要な指標です。現金預金とすぐ売却できる有価証券の合計を平均月商
で割ります。なぜ、平均月商と比べるのか・・。それは売上が経営活動の資金の源泉だからです。売上何ヵ月分に相当する手持流動性があるのか。これが半月分もなければ、2週間売上がなければ経営が続けていけないことを示しています。月商2ヶ月分程度の手元流動性がないと会社の安全性としては少し気になります。
大企業は比較的容易に資金調達ができるので手元流動性は売上1ヶ月分程度もあれば十分だといわれていますが、中小企業の場合はそうもいきません。ぜひ、貸借対照表を見て、確認してみてください。

手元流動性比率=(現預金+有価証券)÷平均月商>1.7ヶ月以上で◎

2.当座比率を確認する
次に当座比率を確認します。当座比率とは現預金・受取手形・売掛金及び有価証券などから貸倒引当金を引いたすぐ資金化できる“当座資産”を、比較的短期間に返済しないといけない他人資本“流動負債”で割ったものです。流動負債は短期に返済しないといけない借金ですから、“流動負債という資金”はいつでも返済できる資産(当座資産)で使っていることが好ましいということです。これもぜひ、確認してみてください。

当座比率=(現預金+受手+売掛+有価証券-貸倒引当金)÷流動負債>90%以上で◎
但し、たとえ当座比率が90%以上であっても受取手形や売掛金の中に不良債権が無いか、確認する必要があります。

3.債務償還年数を確認する
第三の安全性確認の指標は債務償還年数です。債務償還年数とは、銀行借入金(有利子負債)を全額返済できるまでの期間を示します。銀行取引ができなくなったときに会社は倒産します。したがって、借りている融資額が返済可能な金額であるかどうかは確認しなければなりません。もし、異常に多いのであれば計画を持ってコツコツ返済しなければなりません。いまは中小企業金融円滑化法によって返済が延ばせていますが、これは単なる延命装置であって、それが取り外されたなら直ちに命が止まる中小企業が数多くあるといわれています。延命装置は来年4月に外される予定です・・。債務償還年数を把握して、計画性を持って返済していかなくてはなりません。一般的に金融機関からは「債務償還年数は10年未満が正常先」という判定がなされますので、10年以内にはしたいところです。

債務償還年数=有利子負債÷(年間営業利益+年間減価償却費)<10年以内で◎

会社の安全性、つまり倒産する危険がないかどうかを見る指標はまだありますが、この3つがまず基本です。検査結果を把握して、改善するための方策を練り、その方策を実行していくことが大事です。このような考え方をPDCAマネジメントといいます。いまどんな事業にもPDCAマネジメントは重要です。