575.リスクヘッジ仕訳 まとめ

2022年7月23日

再更新:2022.08.23

会計には、経営をリスクから守る仕組みがあり、そのことを「リスクヘッジ」といいます。

リスクヘッジとは、起こりうるリスクを事前に想定し、そのリスクに対応できる体制をあらかじめ取っておくことをいいます。

そこで、会計には次のような仕組みがあります。

1.資金の調達と資金の運用という面から企業の財政状況を貸借対照表として明らかにする

2.資金の源泉と資金の使途という面から事業の損益状況を損益計算書として明らかにする

3.損益計算書の当期利益が貸借対照表の繰越利益剰余金へ組み込まれ、B/SとP/Lを結び付けている

4.引当や償却あるいは棚卸などの特殊な仕訳をすることで、健全な経営へ導くためのリスクヘッジをする

このような仕組みで、会計は企業を健全な経営ができるようになっています。

 

《これまでの『リスクヘッジ仕訳』の目次》

  第1回 貸倒引当金

  第2回 その他の引当金

  第3回 減価償却費

  第4回 棚卸資産

  第5回 リース

  第6回 積立

 

以上のように、これまで6回に分けて『リスクヘッジ仕訳』を説明して来ましたが、最後にそのまとめをお届けします。

 

 

1 経営におけるリスクヘッジとは

(1)リスクヘッジとは

リスクとは「危険、危機」のことであり、自然や行為が生命・財産・生存環境などに損害を与える恐れのことをいいます。

一方、ヘッジとは金融用語で、「回避」という意味であり、リスクを減少させるためにとる行動のことをいいます。

 

(2)経営におけるリスクヘッジとは

したがって、経営におけるリスクヘッジとは、あらかじめ経営に対するリスクを予測し、それに備えることをいいます。

そしてそのためには、そのことを財務諸表に組み入れて、マネジメントを行うことが大事ということです。

 

では、経営におけるリスクとはどのようのものがあるのでしょうか?

経営におけるリスクとは起こる事象ではなく、資金が大幅に減少することをいいます。

資金が枯渇すれば経営は継続することが出来なくなり、逆に資金さえ続けば、どんなに業績が悪くなっても、

あるいは得意先が倒産しても継続することができます。

したがって、経営において「リスクに備える」とは、どのような状況が訪れても資金的に対応できるように備えておくことを

いうわけです。

そのことをいま一度、確認してください。

経営は資金さえ続けば継続できる!

 

2 リスクヘッジの具体的項目

(1)貸倒引当金

資金的に困窮するひとつの原因として考えられることは、得意先の突然の倒産です。

それによって、当てにしていた資金収入が無くなり、経営資金に大きな影響を与えます。

そこで、そのリスク回避できる備えが『貸倒引当金』でした。

貸倒引当金はあらかじめ資金回収が不能になることも想定し、ある一定額の売上債権が無いものとして経営する考え方です。

また税法上、「損金」として認められているのも中小企業の貸倒引当金だけですので、『貸倒引当金』は中小企業の特権という

言い方もできます。

したがって、備えのために「貸倒引当金の導入」を検討されれば如何でしょうか。

税法上、損金として認められているのは中小企業の貸倒引当金だけ!

 

(2)その他の引当金

さらに、将来必ず必要となる資金需要に対して、備えておくことも大切なことです。

それが『賞与引当金』や『退職給付引当金』でした。

特に、賞与引当金は管理会計上も大切なものです。

賞与引当金には次のようなメリットもあります。

 1.賞与引当金を導入することで、賞与支給を見越した月次業績管理が可能となります。

 2.賞与引当金を導入することで、毎月の賞与引当金を流動負債に計上しますので、真の財政管理ができるようになります。

 3.賞与引当金を導入することで、事前に賞与資金が見えてきますので、賞与資金を備えておくことが可能になります。

なお、退職給付引当金にも、同様の効果があります。

また『工事損失引当金』はそれとは若干色合いが違いますが、建設業等を営む企業にとって貸倒引当金と近い効果が得られます。

その他引当金で将来必ず必要となる資金需要に対して備えることも大切!

 

(3)減価償却費

『減価償却費』は、設備に対する投資額を、その設備を利用する期間全体で費用化して、損益計算できる効果があります。

さらに、月次費用化するために、『減価償却累計額』を利用することも大切なことです。

また、減価償却費分のキャッシュは、次回の設備投資に備えて積立しておくことも大切な考え方です。

減価償却費は設備投資を月次費用化して損益計算できる効果と

次回の設備投資の必要資金積立額を示している!

 

(4)棚卸資産

『棚卸資産』は正しい損益把握をするためのカナメです。

なかでも、製造業や卸売業あるいは小売業などにおいては、棚卸資産管理がいい加減だと本当の利益(儲け)はわかりません。

利益をわからず経営するなんて、これ以上危険で無謀な経営はありません。

棚卸資産は本当の利益を把握する上で最重要課題であり

リスクヘッジの中でも「基本中の基本」!

 

(5)リース

現代はある意味、なるべく固定資産を自社で持たないで経営する時代とも言えます。

そんな仕組みを支えているのが、『リース』ですが、実際は自社設備として活用している場合が少なくありません。

それなのに、B/Sにそれを表記しないで財政状況を把握していることは、経営判断を誤らせる大きなリスクでもあります。

それを避けるためにも、リース物件も『リース資産』として表記させることが大切です。

リース物件を資産計上しないと本当の生産性や資金使途状況は掴めない!

 

(6)積立

事業継続のカナメは、冒頭にも申しあげたように資金、おカネです。

この「資金」さえあれば、どれだけで厳しい経営になろうが、どれだけ売上が減ろうが、経営は続けられます。

したがって、資金が潤沢な経営を志向することが「最大のリスクヘッジ」なのです。

そこで大切なことは、将来の資金需要に対して、それなりの積み立てを行うことです。

将来の資金需要とは、近いところから挙げれば、賞与支給であり、消費税の納付であり、法人税等の納付などです。

少し遠い将来ですが、金額的にも大きいのが設備投資であり、さらに遠い先になるかもわかりませんが、退職金の支給です。

このような将来必ず必要となる資金需要に備えて、積立をしておくは非常に大切です。

これらをきちんと行えば、「非常に資金繰りに強い会社」として経営して行けます。

リスクヘッジで大切なことは将来の資金需要に対して積立を行うこと!

 

この1~6の各項目について、詳しくは目次に戻って該当する項目のところをクリックしてください。

それぞれのコラムが参照できるようになっています。

 

 

   このように、会計に対する理解が深まれば深まるほど、それだけ経営技術を向上させることが出来ます。

   つまり、会計のルールには、健全な経営をしていくための意味が隠されているのです。

   だから、科目の読み方や意味がわかれば、健全な経営をする道すじが見えてくるようになります。

   もう、どんぶり勘定や勘ははるか過去のもの、現代・近未来は管理会計と会計で読む力がいま問われているのです。

   会計はたのしい!