126.会計識字力 資産の読み方

2013年9月1日

第3話 貸借対照表(B/S) 資産

 今回は、貸借対照表の資産について説明をします。資産は第2話で触れたように、事業に要しているお金を何に使っているか(運用)を表しています。一般的には会社の財産と考えてもらってよいかと思います。

 お金の運用、財産は“流動資産””固定資産”の形で表現されています。

 流動資産とは比較的早く現預金化できる資産、財産のことを言います。たとえば、受取手形売掛金などの売上債権。期日が来れば預金口座などに振り込まれます。あるいは在庫である棚卸資産。やがては売れて、債権となり、そして預金口座へ振り込まれることになります。会計の世界では1年以内に資金化(現預金化)出来そうな資産を流動資産と言います。それに対してもっと時間をかけて資金化できる資産のことを固定資産といい、分けて管理するようになっています。

 さらに流動資産を詳しくみると、現金や預金などすでに資金の形になっているものや、もう販売もして、あとは入金を待つだけの売上債権などと、まだ売れるか売れないかわからない棚卸資産やはっきり支払時期がわからない仮払金などに分類することが出来ます。この前者の現金、預金、売上債権などを特に当座資産と言って、その他の流動資産と分けて管理します。

 ここで大事なことは、流動資産がいくらある、固定資産がたくさんあるということではなく、まず、「現金・預金がいくらあるか」ということです。現預金はいつでも支払いに使える資産です。ある程度の額は持っておきたいものです。では、どれくらいあれば安心なのでしょうか?これが家庭内のお話であれば、皆さんはどう考えますか。我が家には現預金が仮に100万円があったとします。100万円もあれば、1・2ヶ月の生活には不安はなそうです。そうです、大体の必要な生活費と比べて、手元のお金は十分かそうでないかで判断しています。では、会社における生活費とは何なのでしょうか?そうです。毎月の売上高です。毎月の売上高と比べて、2~3ヶ月分ぐらいの現預金があれば大丈夫と言えるのではないのでしょうか。
そこで、第一のポイントは現預金が毎月の売上高と比べてどの程度あるのか確認します。毎月大体売上が500万円あるのに手元には200万円程度の現預金しかなければ、仕入代金の支払いや給料の支払いなどに心配があります。

 次に売上債権(通常は売掛金)です。あなたの会社は売上代金をどのくらいで回収するのでしょうか?もし、翌月というのであれば、月末には基本的に売上1ヶ月分の売掛金しかない筈です。それが1.5ヶ月分もあるとか、2ヶ月分もあるとすれば、それはどういうことを示しているのでしょうか。そうです、約束とおりに売上代金の支払いを受けていないということです。
これが第二のポイントです。売上債権が売上の何日分、あるのか。社長のあなたが「うちは原則、翌月回収だよ」と思われているのであれば、売上30日前後分の売上債権しかないはずです。これが理論とおりでない会社が実に多いのです。ご存知ですか?売上債権も放っておけば「腐ってくる」ということを。つまり、不良債権化するということです。ある統計では3ヶ月も回収が滞っている売上債権の実に3割は不良債権化するというデータがあります。

 最後に在庫である棚卸資産です。これも売上高とくらべて確認します。今の時代、流通も非常に発達しているのですから、災害などのときを除けば、1ヶ月分の在庫は必要ないはずです。しかしながら、多くの会社は意外と多くの在庫を抱えています。在庫のモノは購入したものです。すでにお金は出て行っています。もし仮に仕入単価千円の商品が500個あれば、50万円が積んであるのと同じです。それが積んであるために不良在庫が発生したり、売れ残ったり、あるいはいつの間にか無くなったりしているのです。もし、机に1万円札がおいてあって、いつの間にか無くなっていたら大騒ぎですよね。それと同じです。在庫を多く持つということは基本的にはあまり良いことではありません。
これが第三のポイントです。

 さて、もう一度最後に、ご自分の会社の貸借対照表を見てください。
①現預金は売上と比べてどのくらいありますか?1ヶ月程度では不安です。

②売上債権はどうですか?社長のあなたが「当社は翌月回収だ」とおっしゃるのなら1ヶ月分の売上に相当する売上債権しかないはずです。どうですか。

③在庫は売上何日分ありますか。特殊な場合を除いて、2週間分から3週間分もあれ ば十分だです。

 ぜひ、チェックをしてみてください。