55.会計で資金状況を点検する

2010年6月29日

『会計で自社をマネジメントする』第2回目は「自社の資金状況を点検する」と題し、いま一番経営管理で大事な“資金”に関してチェックする方法をご紹介します。

1.会計経営においてお金(資金)の使い方にはルールがある
マネジメント上、資金の使い方にはルールがあります。以前、このリポートでもご紹介しましたが、それは長く返済できる調達資金では長期で運用する資産を購入し、短い期間で支払わなくてはならない調達資金は短期間で資金化できる資産で運用するということです。
簡単にいえば、固定資産は銀行融資や自己資金で購入し、決して短期借入金などで購入してはならないということです。また日常の販売活動に関する資金は、金利がつく借入金で賄うのではなく、金利がつかない調達資金、つまり支払手形や買掛金などで賄うということです。
このことを大原則において資金管理をします。

2.会計経営において必要な資金とは
資金をチェックするためには、まず、会社を経営して行くために、つまり販売活動をしていくために、どのくらいの資金が必要なのかを把握する必要があります。この会社経営をして行くために必要な資金を『運転資金』という呼び方をします。
運転資金の額を計算する方法はいろいろあります。その一番ポピュラーな方法は「経営則」、つまり社長の直感です。社長は長年、会社を経営しているわけですから、だいたいの必要な資金は感覚的にわかっています。例えば、取引先への支払の時期だからこのぐらいの資金が必要だとか、社員への給与支払日が迫っているからこれぐらいの現金が必要だとか、賞与時期だからこのぐらいの資金がなくては・・などなどです。しかしこれではあまりにも直感的すぎるので管理、マネジメントは言えません。
そこで一般的には次のような考え方をするわけです。
売上債権+たな卸資産-買入債務=運転資金の要調達高
売上債権とは、受取手形であり売掛金です。受取手形、売掛金とは何でしたか?そう、資産の部の一部ですから、「資金を運用している姿」でしたね。しかも、もう少しで資金(現預金)化できる日常的な資産のことです。対して、買入債務とは、支払手形であり買掛金です。これらは負債の一部であり、資金の出どころ、源泉でしたね。したがって、日常の経営活動(販売活動等)の資金使途(売上債権、棚卸資産)は、販売活動における資金源泉(買入債務)で賄いましょうという考え方です。
例えば、売掛金が300万円、棚卸資産が200万円ある会社は、販売活動に少なくとも500万円要するわけですから、この500万円を買入債務による資金源泉で賄うという考え方です。仮に買入債務が200万円しかなければ、300万円の運転資金が不足しているということになります。
但し、売上債権の中に不良債権があればそれを除いて考えなくてはなりません。不良債権は本来の必要運転資金ではないからです。正しい会計処理をしておくことが必要です。

3.不足額をどうする
これで、運転資金として300万円ほどの不足額がありそうだということがわかりました。じゃ、どうするかというのが次のステップです。これは手元流動性資金をチェックします。手元流動性資金とは、すぐ換金できる資産です。つまり、現金と預金です(理屈では有価証券も含まれますが、通常、そこまで考えないと思いますので、ここでは省略します)。現金が50万円、預金が100万円あれば、不足額は150万円となります。
ここから第3ステップに入り、抜本的な資金手当を考えなけれべなりません。本来的は150万円ほど足りません。どうするか?
まず考えることは、売上債権と棚卸資産を減らし、スリムにするということです。ここで断定的なアドバイスをひとつ。どの会社でも売上債権は現状より必ず減らすことができます。言い換えれば、そこまできちんとした経営をしている会社は稀だということです。回収が延び延びになっている得意先はありませんか。あるいはもっと回収を早める約定に変更することはできませんか。まだ余裕があるうちに、ぎりぎりの気持ちなって対応すれば対応できることは必ずあるはずです。これが本当にギリギリになってしまったら、余裕もなくなり交渉もできません。少しでも気持ちに余裕があるうちに、ギリギリな気持ちになって対応することがたいへん大事です。
次に考えられることは、少ないならがらも処分できる資産はないかということです。ここで有価証券も対象となります。またクルマはどうですか。1台でも2台でも減らすことはできませんか。あとは遊休資産、つまりたとえ少額にしかならなくても、売却しても良い固定資産はありませんか。
3つ目は、1・2と並行的に進めるべき、回収を早めた新しい売上をあげることです。これも「できることはもうやっているよ」と言ったらお終いです。原点に返って考え、行動することが大事です。
そして最後に借入です。切羽詰まった場合はそんなことは言っていられないかもわかりませんが、ここでも冷静な判断は必要です。つまり、金利以上の利益を上げられこととと、返済計画を確認することです。

会社経営は諦めたら、そこでジ.エンドです。かと言って闇雲に走れば野つぼに嵌ります。経営には冷静な判断が必要です。そのツールが会計であり、判断は社長の冷静な意思決定です。

4.これから増えそうな不足額をどう予測する
次に現状ではなく、将来の不足額についても考えましょう。事業は拡大すればするほど、資金が必要になることはご承知のとおりです。これを客観的に知る方法が「運転資金の要調達率」の考え方です。
これは次のような計算式で求められます。
運転資金の要調達高÷年間売上高=運転資金の要調達率
例えば、上の例で運転資金の要調達高は300万円でしたから、仮にこの会社の年商が6000万円であれば、5.0%となります。この会社は、いまの営業態勢であれば、100万円売上が上がれば、5万円運転資金が増加するというわけです。

次回はもう少しマクロ的な「自社の資金状況を点検する」について、ご紹介します。
社長さん、毎月、月次試算表をご覧になっていますか?

いかがですか、あなたの会社でも会計を活かすことはできそうでしょ?会計を決算や税金のためだけにするなんて古い、古い。また会計事務所も決算や申告のためでけに活用するなんて、MOTTAINAI!
これからは経営環境は必ず良くなります。ただ以前と違うのは、「みんな良くなる」のではなく(換言すれば「護送船団方式」の時代は終わったということです)、努力した会社が努力しただけ良くなるという時代になるということです。会計はその基礎です。ぜひ、会計を経営に活かしましょう。
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