580.わかりやすく 社会保険料の改正

2022年8月27日

再更新:2022.09.27

「人口減少」と「少子高齢化」時代に入り、いまや『社会保険料』は大きな経営課題となっています。

ご存知のとおり、社会保険料には大きく分けて、 1.健康保険料、2.厚生年金保険料、3.介護保険料、4.雇用保険料、

5.労災保険料、6.子ども・子育て拠出金 の6種類があります。

その中で、雇用保険料と労災保険料はまとめて「労働保険料」とも呼ばれています。

そして従業員はそのうち、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料・雇用保険料の4種類について毎月の給料から天引きされ、

自己負担分を納付しています。

社会保険には健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険、子ども・子育て拠出金の

6種類がある!

 

一方、これらの社会保険料は従業員の自己負担分だけで成り立っているわけではありません。

同額かそれ以上、または全額を会社も負担しているのです。

社会保険に未加入企業で働いている場合は、従業員本人が支給された給料から国民健康保険料や国民年金保険料を納付することに

なります。

このような場合で企業が社会保険に加入するようになると、それらが給与から自動天引きされる関係から、「給与が減る!」と誤解

され、従業員から反対される場合がありますが、それは全くの「誤解」なのです。

支給された給料から自分で納付するのか、納付のため徴収された後の給料を受け取るかの違いだけであり、

決して、給料が減るわけではありません。

むしろ、半分を企業が負担してくれるので、自己負担分は少なくなるのです。

 

働いている職場が社会保険に加入してくれると、社会保険料の自己負担額は少なくなる!

 

したがって、会社が新たに社会保険に加入する場合には、その辺りのことを懇切丁寧に、わかりやすく従業員に説明することが

大切です。

従業員から見れば、国民健康保険料や国民年金保険料よりも負担が少なくなり、それでより手厚い社会保険に加入できるわけです。

すなわち、『福利厚生』が充実するわけです。

 

だから会社が負担する社会保険料は『法定福利費』という科目になっている!

 

一方、会社にとって「社会保険に加入する」ということは、大きな負担を背負うことになるわけです。

これからさらに高齢化社会に入っていきますので、社会保険料の負担はますます大きくなることが予測されます。

今年2022年10月から、さらに負担増につながる『社会保険の大改革』が迫っています。

そこで今回は、この『社会保険料の改正』を取り上げます。

 

 

▶各種社会保険の内容

 まず6種類の社会保険について、その内容を確認をしましょう。

 

(1)健康保険料

 病気で通院する場合、その医療費の一部を社会保険が負担してくれる仕組みになっているので、私たちの本人負担は少なく

 なっています。

 その財源になっているのが、この『健康保険料』なのです。

 加入対象は、基本は雇用期間の定めのない正社員ですが、それだけでなく、下記の要件にあてはまるパートタイマーなども

 その対象となります。

  1.1年超の雇用見込みのパートタイマーなど

  2.週所定労働時間が正社員の4分の3以上のパートタイマーなど

  3.1ヵ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上のパートタイマーなど

 労働時間に関しては、一般的には「週20時間以上」であれば、対象になります。

 雇用期間については、「日雇いは1カ月超」、「季節労働者の場合は4カ月超」継続して使用されるのであれば、

 加入対象となります。

 なお、501人以上の事業所に関しては、下記のパートタイマー労働者(昼間学生は除く)も対象となります。

  1.2か月(※令和4年9月までは1年でした)を超える雇用見込みのパートタイマーなど

  2.1週間の所定労働時間20時間以上のパートタイマーなど

  3.月収88,000円以上のパートタイマーなど

 法人役員については、「代表者も含め対象」です。

 家族従業者も対象ですが、自営業者の「個人事業主自身は対象外」となります。

 75歳以上は後期高齢者医療保険に加入しますので、「75歳未満」までが対象です。

 しかし、これも拡大する可能性があります。

 

(2)厚生年金保険料

 老後もしくは障害・死亡の際に給付する老齢・障害・遺族厚生年金の財源とするための保険料が、この『厚生年金保険料』です。

 「70歳未満が加入対象」となり、その他の対象要件は健康保険と同じです。

 

(3)介護保険料

 介護施設や自宅で介護サービスを受ける費用を一部負担するための財源となる保険料が、この『介護保険料』です。

 企業勤めであれば、「40歳以上の従業員が対象」です。

 その他の対象要件は、健康保険と同様になります。

 

(4)雇用保険料

 通常「失業保険」とも呼ばれますが、失業者のほか、育児・介護休業をとった労働者や60歳以上で企業勤めしている

 一部の労働者に給付するための財源となる保険料が、この『雇用保険料』です。

 下記に該当する場合は、原則として雇用保険の『対象外』です。

  1.個人事業主は対象外

  2.法人役員(取締役・執行役・監査役など)は対象外

  3.家族従業員(個人事業主や法人の代表者と同居している親族)は対象外

 学生も対象外になります。理由は、学生はこれから就職する立場ですから、失業に対する保障には適さないと思われるためです。

 それ以外の労働者では、労働時間週20時間以上・31日以上の雇用見込みを満たす者、前2カ月の各月に同一の事業主に

 18日以上雇用された者が、雇用保険の対象者となります。

 季節的に雇用される場合は、週30時間以上・4カ月超の雇用見込みを満たす者が対象です。

 

(5)労働者災害補償保険料

 通常「労災」と呼ばれる、従業員が業務上もしくは通勤途中に事故(災害)にあった際、企業が従業員に補償すべきお金を

 負担してもらうために支払うのが、この『労働者災害補償保険料』です。

 労基法上の労働者にあたる者は、労働時間や雇用期間に関わらず、すべてが補償の対象者となります。

 また、原則補償対象外である経営者なども特別加入の形で対象となります。

 

(6)子ども・子育て拠出金

 子ども・子育て拠出金とは、児童手当や子育て支援事業あるいは仕事と子育ての両立支援事業などに充てられている税金です。

 これは、企業や個人事業主が納めなければならないものであり、従業員は納めません

 企業や個人事業主が、国や地方自治体が実施をする子ども・子育て支援策に税金を納めるという形で、協力することになります。

 従業員の報酬をもとに算出するのですが、既述のとおり、従業員の負担は発生しません。企業が全額負担するものです。

 なお、以前は「児童手当拠出金」という名称でしたが、2015年に『子ども・子育て拠出金』という呼称に変更されました。

 

このような社会保険ですが、それが本年2022年10月から改正されます!

 

 

▶社会保険料に関する法改正の内容

 では、今後改正される内容を確認します。

 

(1)2020年4月に改正された65歳以上の雇用保険料の給与計算ルール

 高齢者の労働環境を整備するために、2017年に雇用保険の法改正が行われ、

 65歳以上の従業員に対しても雇用保険加入が義務付けられました。

 2020年3月までは、65歳以上の従業員雇用保険料の負担に関しては事業主に配慮する形で従業員のみの支払いとなって

 いましたが、2020年4月の法改正で、労使ともに保険料の負担が義務付けられることに変更されました。

 

令和4年度(2022年)の雇用保険料率が前年比で高くなっているので、要注意デス!

 

(2)2022年10月改正|社会保険の適用拡大

 さて、2022年10月に法改正される内容は、

 パート・アルバイト従業員など、短時間労働者の社会保険の適用範囲が拡大されるというものです。

 2022年5月時点での社会保険の加入条件は以下の通りでした。

  1.従業員数が常時501人以上である事業所

  2.週の所定労働時間が20時間以上である

  3.雇用期間が1年以上見込まれる

  4.賃金の月額が88,000円以上である

  5.学生ではないこと(一部例外もあり)

 この5項目の中で変更されるのは、事業所規模と雇用期間です。

 事業所規模に関しては、「常時501人以上」から「常時101人以上」へと変更されます。

 これによって多くの中小零細企業が、該当することになりました。

 雇用期間に関しては、「1年以上見込まれる」から「2か月を超えて見込まれる(通常の被保険者と同じ)」へと変更されます。

 2022年10月の法改正後加入条件をまとめ直すと、下記のようになります。

  1.従業員数が常時101人以上である事業所

  2.週の所定労働時間が20時間以上である

  3.雇用期間が2か月を超えて見込まれる

  4.賃金の月額が88,000円以上である

  5.学生ではないこと(一部例外もあり)

 

(3)2024年10月改正|社会保険の適用拡大

 さらに2024年10月になると、今回2022年10月の改正内容の適用範囲がまた拡大されることになります。

 2024年10月の法改正後加入条件は以下の通りです。

  1.従業員数が常時51人以上である事業所

  2.週の所定労働時間が20時間以上である

  3.雇用期間が2か月を超えて見込まれる

  4.賃金の月額が88,000円以上である

  5.学生ではないこと(一部例外もあり)

 なんと2024年10月法改正では、適用事業所範囲が「常時51人以上」まで拡大されます。

 これだと、多くの飲食店なども該当することになるかと思われます。

 

 

今後も法改正される可能性がありますので『要注意』ですが、対策は「いかに生産性をあげるか!?」に尽きます。

これまでの慣例を是とせず、新しい発想で経営することが求められていると思われます!