631.会計の基本『簿記』⑪

2023年10月20日

■前回の復習

 前回は、「負債」の簿記について説明しました。

そのポイントは次のとおりでした。

 ①負債は仕訳するにあたり、流動負債に計上すべき負債なのか、それとも固定負債に計上すべき負債のかを、いい加減ではなく、

  正しく判断して仕訳する必要があります。何故なら、それによって資金繰りの状況が正しく判断できることになるからです。

 ②負債は金額的には正しく計上される性質があります。一方、流動資産は着ぶくれして計上される帰来があります。

  したがって、資金繰り状況を判断する場合は、流動負債と流動資産ではなく、流動負債と当座資産を比べることが大切です。

 ③現実的な資金繰り状況を判断するには流動負債に人件費を加味して、それに対して当座資産がどのくらいあるのかを

  見ることが大切です。

 ④固定負債は長い期間にわたって返済できる負債です。

  そう考えると、固定資産である設備投資をする財源が自己資金と固定負債に拠らなくてならないと、容易に理解できます。

 

 これもすべて返済期間に応じて流動負債と固定負債が正しく区分けされていることが前提ですので、

流動負債と固定負債の区分けはいい加減ではなく、正確に判断することが大事なのです。

このようにすることで自社の資金繰り状況がわかるようになりますので、会計が経営に役立つ会計となります。

このような考え方の会計を『管理会計』と呼び、経理事務を経営管理業務へ飛躍させます!

 

そうすると会計事務所などに依存した経理姿勢から、自立した経理姿勢に変わりますので、経営に資する会計に変わります。

 今回は『売上』に関する「簿記」について考えてみましょう。

 

 

第11講 簿記 売上高編

(1)売上高は企業にとって「資金」の源泉である

 借入金などを除けば、企業はどこから資金を得ているのかと考えれば、それは『売上高』であると誰でも理解できます。

企業はこの売上高を元に、仕入れ代金を支払い、給与を支払い、その他いろいろな経費も支払っているわけです。

そしてその残りが『利益』となり、それが内部留保されて、『事業資金』となっていくわけです。

 このことを理解すれば、「赤字経営」が如何に事業にとって深刻な状況を表しているのか、ということがよくわかります。

なのに、現在は3社の2社以上の中小企業が「赤字経営」といわれているのです。

しかし現実的にはそのことを嘆く経営者は多くいても、真剣に赤字を解消しようと考えている経営者は少ないように思われます。

ある意味、中小企業経営は「赤字であって仕方がない」とすら、思っている経営が多いように思います。

もっと真剣に赤字経営を解消すると決意を持つべきではないのでしょうか!

 

 ところで現代はデフレで、それが低成長の諸悪の根源のような言い方をされていますが、本当なのでしょうか?

物価が安くても給与が増えれば、それが一番良いのではないかと思うのですが、如何でしょうか。

それはともかく、過去から現在を振り返ると、現実には物価は下がっているということはありません。

確かにすごく高くはなっていないかもわかりませんが、しかし、安くはなっていません。

 ということは話を元に戻すと、

企業が支払う仕入代金や人件費、その他経費は年々増えていくと考えるのが、普通の事業モデルとなります。

つまり、売上高は少なくとも年々増加させていかないと、いずれは赤字経営に行き着いてしまうということです。

したがって、売上高が企業にとって王道の事業資金の源泉である以上、売上高は毎年、前年比を上回ることが必須条件になります。

売上高は毎年、前年比プラスさせることが基本デス!

 

(2)売上高は「継続売上高」と「新規売上高」に分けて管理する

 そう考えると、売上高は毎年必ず「新規売上高」が必要である、ということになります。

例えば、今期の売上高が6,000万円で、次期の売上高目標を6,500万円と設定した場合は、

継続売上高6,000万円に、新規売上高を500万円上乗せするということなのです。

したがって、売上高を「継続」と「新規」に分けて経理して「売上高管理」することが基本となります。

 もし結果、目標達成できても出来なくても、その原因が継続売上高にあったのか、新規売上高にあったのかハッキリしますので、

来期の売上戦略を考える場合に重要な情報となり、次期の事業年度に活かすことが出来るようになります。

 

(3)売上高は「得意先別又は商品別」に管理することも基本

 さらに売上高は、事業の特性に応じて、得意先別と商品別(あるいは業務別など)に分けて管理する必要もあります。

どの得意先との取引が減ったのか、どの商品群の売上が減ったのかわかれば、執る戦略も違ってきます。

基本的には、BtoBの企業であれば得意先別に、BtoCの企業であれば商品別になります。

この継続と新規、得意先別と商品別を会計ソフトの機能にうまく載せることが大事です。

この考え方は税務には関係ありませんが、経営には関係がある非常に大切な考え方です。

経営的に継続と新規、得意先別と商品別に分けて売上管理することが重要!

 

例えば、主要な商品別に勘定科目を設定し、部門別機能で継続と新規に分けて、さらに取引先コードで得意先を設定すれば、

それらの管理ができるようになります。

 なお、そう考え出すと、仕入や人件費、経費までも部門別に分けようとする経営者、あるいは会計事務所担当者が指導しますが、

それは別問題です。

そこまで分けて活かせるリテラシーが社内にあるのであれば分けてもいいのかもわかりませんが、リテラシーもないのにそのように

するといたずらに事務時間が増えたり、分けられないことが多発しますので、結局は続きません。

まずは売上高を科目と部門別と取引先コードを使い、分けることから始めましょう。

管理は理想を追い詰めて「やり過ぎない」ことが、続けられる秘訣です!

 

(4)売上高に関する仕訳の基本

 現金売りであれば、売上の相手科目は『現金』、それ以外は『売掛金』です。

資金運用である「売上債権」が増えて、「資金源泉」である売上が増えるという意味です。

したがって、売上高の仕訳は次のようになります。

 運用資金の増加:売掛金     /  資金源泉の増加:商品別売上高

         取引先コード             部門:継続売上高又は新規売上高

                            取引先コード:得意先

 ただ、これは資金の源泉が増加しただけで、資金が増加したわけではありません。

売掛金が回収されて、初めて資金源泉が資金になるわけです。

 運用資金の増加:預金     /  運用資金の減少:売掛金

                           取引先コード:得意先

売上高は回収されて初めて画餅の「資金」から本当の「資金」となる!     

 

 

このような会計処理をすれば、売上の実態から回収まで管理できるようになります。

このように会計は経営に活かせるものなのです!