452.会計で経営力を高めるシリーズ 棚卸資産

2020年2月23日

第3回会計で経営力を高めるシリーズ『棚卸資産』

 

1 棚卸資産とは

 棚卸資産とは「在庫」です。

小売業や卸売業であれば、まだ販売していない「商品」が在庫となります。

製造業などモノを作る企業であれば、「製品」、「半製品」、「原材料」、「仕掛品」、「貯蔵品」などが在庫となります。

また、製造卸売あるいは製造小売の企業であれば、「商品」も加えた「製品」、「半製品」、「原材料」、「仕掛品」、「貯蔵品」

が在庫となります。

 

 これらはまた「『直接原価』を構成するモノ」でもあることも理解しておきましょう。

 

 

2 棚卸資産はどのくらいあるのが果たして適切なのか

 在庫の適切な量は、業種業態によって違いますので一概には言えません。

しかし、以前と違って流通が発展していますので、どの業種においても在庫量は少なくなって来ている傾向にはあります。

基本的には、持ち過ぎはデッドストックや持ち出される危険性も高くなりますので、支障がない限り少なくすべきと考えられます。

 適正な在庫量にするためにも大切なことが『実地棚卸』です。

実地棚卸によって減り具合も把握できますので、適正在庫に繋がります。

また持ち出しなどの”不正”も防げることにもなりますから、『内部牽制』を高める効果もあります。

但し、決算のための期末実地棚卸だけではなく、月末実地棚卸、さらには業種においては週末実地棚卸などを行うことが大切です。

このような考え方を、再三出てくる”管理会計”といい、決算ためだけに為させる会計を”制度会計”と言います。

 

これからの経営環境を踏まえれば、”管理会計”を志向しましょう。

 

 

3 在庫の山は結局、原価を高める

 原価は 期首棚卸資産+期中仕入ー期末棚卸資産 で求められます。

期首棚卸資産とは・・年度最初にあった在庫金額のことを言います。

          例えば、商品A(仕入原価1000円)が100個あれば、100,000円です。

期中仕入とは  ・・その年度に仕入れした仕入金額のことを言います。

          例えば、商品A(仕入原価1000円)を1000個仕入していれば、1,000,000円です。

期末棚卸資産とは・・事業年度末にあった在庫金額のことを言います。

          例えば、商品A(仕入原価1000円)が200個あったのであれば、200,000円です。

すると、その事業年度の売上原価は 期首棚卸資産10万円+期中仕入100万円ー期末棚卸資産20万円=90万円となります。

簡単な用語で表現すれば 最初にあった量+途中で増やした量-最後に残った量 がその年度の原価です。

 つまり、(期末)在庫を増やせば原価は下がり、在庫を減らせば原価が上がることになります。

 従って、(期末)在庫を増やせば利益は増えて、在庫を減らせば利益が減ることになります。

このことが決算においてよく見られる『利益調整』と言われるものです。

今期は利益が出過ぎたから「在庫を減らしておこう」とか、今期は赤字が大き過ぎるから「在庫を増やしておこう」などです。

これはもちろん違法です。

しかしここまで露骨な話ではなく、売れ残った在庫を処分すると売上原価が増えるので、本当はもうデッドストックなのだけれど、

「そのままにしておこう」ということはよく見られることです。 チョッと異常に棚卸資産が多い決算書はよく見られます。

 

そうならないように常に適正な在庫にするためには『月次実地棚卸』が大事です。

 

 

4 月次試算表からの棚卸資産をチェックする法

 会計はこんなことも情報発信しています。

まず1日当たりの自社の売上高を掴みましょう。それは月次売上高を日数で割れば求められます。

次に棚卸資産をその1日当たりの売上高で割り算します。

そうすると、売上高何日分に相当する在庫があるのかが、求められます。

それが自社の「棚卸資産回転日数」です。

 

棚卸資産回転日数 = 棚卸資産 ÷ 1日平均売上高

 

例えば、毎朝仕入して、その日の売上分しか仕入しないような業種であれば、その計算結果は限りなく”ゼロ”に近づきます。

例えば、1週間ごとに仕入して、1週間分の売上分しか仕入しない業種であれば、その計算結果は”7”前後となります。

そのように理解して、棚卸資産回転日数が自社として適正な額なのか、そうでないのかを判断します。

 もしそうでないと判断したのなら、あらためて経営者の目で在庫を調査し、その対策を決断し、適正在庫にします。

 

 

このようなことを考えると、会計は意外と楽しいもので、経営に役立つものと思われませんか。

少しでもそのように思われてきたなら、それだけ貴社の経営力が高まって来ていることを示しています。

 会計業務を楽しんで荒波に強い会社になるように取り組みましょう!