517.会計によるリスク管理法⑦ 固定資産

2021年5月28日

リスク管理観点から会計を捉えるシリーズ第7回 固定資産

 

 3回目の緊急事態宣言も延長され、ますます悪化しているコロナ感染状況ですが、

経営にどのような悪影響が訪れるのか予測することが難しく、「守りの経営」への舵取りが重要になっています。

「リスク管理観点から会計を捉えるシリーズ」の今回は、胃もたれのように資金繰りを悪くさせる『固定資産のリスク管理』です。

 

1 固定資産とは

 「固定資産」とは、土地・建物や機械設備、トラックなどの車両等のことをいいますが、

特に気をつけなければならない業種は、製造業や運送業など固定資産を元に売上をあげる業種、広い土地や大きな建物に投資する

機会が多い病院や介護施設などです。

 また、固定資産ではありませんが、社員を大切にする会社であればあるほど「人の採用」についても、

固定資産以上に大きな投資であるという認識を持つことも、非常に大事なことです。

 

 固定資産は、ともかく事業にとって大きな資金を必要としますので、大きな資金を投じるほど、

その資金回収と資金利回りの計算をしっかり行わなければなりません。 そうでないと、生きたおカネにはなりません。

 しかしながら、多くの経営者は投資を決断さえすれば、その資金を調達することには熱心になりますが、

あまりその資金の運用までを緻密に考える経営者は少ないようです。

そのことが、固定資産投資の失敗を多くさせています。

 

固定資産投資をする場合には、熱意とは別に、

冷静に『投資固定資産採算計画書』を策定しましょう。

 

 

2 固定資産投資に関する調達資金

 では、固定資産等に関する調達資金とは何でしょうか。

貸借対照表の総資本である負債・純資産を見てみますと、まず第一は自己資本である『純資産』であることに気づきます。

自己資本で設備投資が出来れば、それに越したことはありません。

 

 そのことを「固定比率」と呼びますが、次の算式で求められます。

  固定比率 = 固定資産 ÷ 純資産 ×100

この固定比率が100%以下、つまり「固定資産≦純資産」であれば、固定資産の財源はすべて自己資本であることになります

ので、安全性は高いといえます。 しかし、中小企業の場合はなかなかこのようにはいきません。

 

 そこで長期借入金を金融機関から借り入れることになります。

そのことを少々難しい言葉ではありますが、「固定長期適合率」と呼び、次の算式で求められます。

  固定長期適合率 = 固定資産 ÷(純資産+固定負債) ×100

この固定長期適合率は、必ず100%未満「固定資産<(純資産+固定負債)」でなければいけません。

もし、固定長期適合率が100%以上であるならば「非常に安全性に問題がある」と言えますので、

早急に設備の処分や追加融資の手当てなどをしなければなりません。

 

 

3 「固定資産」のリスク管理

 では、経営運転資金のリスク管理をどのように考えればよいのでしょうか?

 

(1)固定資産の操業度を常に把握する

 固定資産の目的は、そもそも車のエンジンみたいなものであり、その回転率を上げて売上高を伸ばすことにあります。

そこで次の算式により、固定資産の操業度、つまり活用状況を把握します。

  固定資産回転率 = 売上高 ÷ 固定資産

この固定資産回転率は、高ければ高いほど、固定資産の操業度である活用状況は高いと言えます。

業種・業態でこの固定資産回転率は違ってきますが、一般的には少なくても「4回転以上」はほしいところです。

 もし、固定資産回転率が低いようだと、一つは売上をもっと上げる方法はないのか、戦略戦術を考えます。

併せて、稼働率の低い固定資産の処分なども考えます。

 

(2)固定資産の財源をチェックする

 これは先ほどご紹介した「固定比率」と「固定長期適合率」になります。

なかでも、固定長期適合率が100%に近いようであれば、早急にリスケなどを検討し、

短期借入金の長期借入金化などを検討ます。

 

この財源で一番大事なことは、設備は必ず入替える時が来ますので、

減価償却費分を手元資金の中で積み立てていくことです。

 

 

つづく・・

 

戦略を考えるにあたって重要なことは、『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いの外、『思い込み』に囚われて生活や仕事をしています。

そしてその結果が「いまである」ということを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。

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