73.2011年度経営課題 借入

2011年5月12日

2011年重要経営課題
(1)手持ち資金は十分か
これはキャッシュを高めた財務体質に変えるということです。
(2)固定費を十分下げているか
(3)変動費比率を十分下げられているか
この二つは損益分岐点を下げるということです。つまり、利益が出やすい経営体質に
変えるということです。そのアプローチとして固定費を抑える、変動費比率を下げる
という2つの方法があり、まず自社努力でできることは固定費を抑えることであり、
次に在庫量や仕入の仕方で下げられる変動費比率だということです。
(4)回転率をあげているか
これは生産性を上げるという言い方もできますが、重点を置いているのはむしろ不要
な資産は処分するということです。今より少ない総資産あるいは総資本でこれまでの
生産性を確保し、資本効率を高めるということです。
(5)借入金依存度は適正か
最後に借入金の問題です。資産を処分することよって借入金の返済に充てる、キャッ
シュを高めることによって実質無借金経営に持っていくということです。自己資本の
割合を高めると理解されても良いかと思います。

今回はその最後「借入金依存度は適正か」です。

はじめに
会社の安全性という観点では、なるべく「借入金依存度」は低い方が良いと云えます。しかし、現実問題、借入金なしで経営をすることは大変むずかしいことです。そこで重要なマネジメントが借入金のバランスを取るということになります。借入金のバランスチェック検査として、「預金対借入金比率」、「借入金対月商倍率」「債務償還年数」「実質金利率」などがあげられます。

1.預金対借入金比率
これは「預金合計」と「銀行借入金」との比較です。お金がないから借入れしているのに、預金と比較して検査するなんて矛盾するように感じられるかもしれません。しかし、「銀行借入金」は返済していかないとなりません。なのにどんどん預金が減り続けているとしなら、それは問題となります。
そこで「預金合計」と「銀行借入金」とをマネジメントすることが大切となります。できれば常に40~50%は欲しいところです。
もし「預金対借入金比率」が40%も満たないのであれば、処方箋は2つ。
一つは預金を増やすことです。「どうやって・・?」それは回収をしっかり行って預金を増やす。債権自体がないのであれば売上を増やす。「おいおい、そんなカンタンに売上は増えないよ・・」って?では何でもともと借入を起こしたのですか。それは事業を立て直すために資金調達したのでしょ?そんな甘いことを云ってどうするのですか。事業を立て直すために知恵を働かしてがんばりましょう。それから現預金支出を抑えること。経費節約、必要以上の仕入を行わない。そのような工夫をして預金残高を増やします。
二つ目は、遊休資産を見つけ出して処分し、それを原資に一時返済などでリスケを行い返済及び金利の負担を下げます。
経営は工夫(知恵)と実行です。そのことをマネジメントといいます。そのような意識をあまりにも中小・零細企業経営者は持って来なかったのではないのでしょうか。そんな甘えはもう許されなくなりつつあります。

2.借入金対月商倍率
これは非常に重要な検査項目で、銀行も注目している指標です。内容は「銀行借入金」と「平均月商」を比べ、借入金が平均月商の何ヵ月分あるのかということです。
金融機関目線で言えば、多くとも月商の6ヵ月分程度、でれば3~4ヶ月程度になっていれば適正と判断されます。それ以上の場合は何とか返済をし「銀行借入金」を減らすかがんばって月商を増やすしかありません。
では、どうやって「借入金対月商倍率」を改善するのか。これも検査値の考え方から云えば、処方箋は2つ。
一つは借入金を減らす。「急にそんなことを言っても減らせないよ」ではなくて、マネジメントで減らすのです。知恵を働かせて借入金を減らしましょう。
二つ目は月商を増やす・・。もちろん、すぐには増えません。いままで以上に努力して徐々に売上を増やせると期待できる工夫と行動をするということです。取扱い商品・製品を見直す、販売価格を見直すということも大事ですが、ひとつのヒントは「脱.コモディティ化」「脱.当社の当たり前化」です。初心に帰って、いま一度今までのやり方を見直しましょう。今までのやり方で現在があるわけですから、同じことをやっていたなら現在と同じで、ますます斜陽化することは目に見えています。

3.債務償還年数
これは用語してはむずかしい漢字を使っていますが要は「借入金返済に何年かかるか」ということです。これも非常に重要な検査項目で、銀行も注目している指標です。
どうやって返済に要する期間を計算するかと云えば借入金を「(年間)償却前営業利益」で割り算して求めます。要は会社の借入金返済原資は営業利益と考えているわけです。ただ、営業利益には支払いを伴わない減価償却費が減算されているので、減算する前に戻します。債務償還年数は10年未満にしたいものです。
では、どうやって「債務償還年数」を改善すれば良いのか。これも検査値の考え方から云えば、処方箋は2つ。
一つは借入金を減らすということです。
二つ目は営業利益を増やすことです。営業利益は売上高と違って、社内努力とマネジメントによって改善することは必ず可能です。同じ売上総利益(粗利)であっても、経費を落とせば営業利益を増やせます。また同じ売上であっても原価を下げることによって、あるいは売上商品構成を変えることによって粗利を増やすことによって、売上総利益を増やすことが可能です。創意工夫と実行とマネジメントを持って臨めは必ず営業利益はいままでより良くならせます。

4.実質金利率
少しむずかしいですが、噛み砕いて説明しますので理解してください。
①まず、「実際の支払利息」を計算します。実際の支払利息とは、「支払利息」から「受取利息」を引けば計算できます。
②次に、「実質の銀行借入金」を計算します。これは「銀行借入金」から「定期性預金」だけを引いて計算します。普通預金、当座預金は含まれません。
③そして「実際の支払利息」を「実質の銀行借入金」で割れば、「実質金利率」が計算できます。
では、「実質金利率」で何を見るのか・・。いまはどの企業もたいへん営業利益率が低くなっています。少しでも「経常利益」を厚くする、あるいは「黒字経営化」を確保するためには、少なくとも「営業利益率」よりも「実質金利率」を低くするマネジメントをする必要があります。そのため「実質金利率」を知る必要があるということです。
では、どうやって「実質金利率」を低くすれば良いのか。まず、何回も云うようですが、前提として、やりもしないで決めつけないということを肝に銘じてください。
一つは、まず取引銀行に理由を説明してリスケも含めて年間の金利を低くしてもらう交渉をするということです。単に「低くしてください」と言っても金融機関は低くしてくれません。それまでの実績も関係するでしょうし、さらに大事なことは低くすることを求める理由、それによる会社の業績見通しや事業計画を説明できなければなりません。
二つ目の方法は他行に借り入れを申し込み、借換えをするという方法です。
特に銀行交渉の場合は第三者に立ち会ってもらうこともたいへん有効です。和解するのに弁護士を立てるのと同じです。では第三者とは誰なのか?それは会計事務所です。会計事務所は決算・申告をしてくるだけなんて思っていませんか?いまや会計事務所は経営に関わるあらゆる相談に乗ってくれる存在です。決算・申告しかしない会計事務所であれば変更すべきです。当社で責任持って良い会計事務所をご紹介します。

最後に
いずれにせよ、これからは経営者としても経営力、マネジメントが問われます。
①説明の中で何度も申しあげましたが、これまでと同じ姿勢では会社を継続させていくことはできないということです。
②会計による経営改善は凄い改善をもたらすということです。数値が改善されるだけではありません。経験的に申しあげれば、組織改善がなされて、それが会計数値に表われるということです。また組織改善がお客様、仕入先にも好影響を与えますので、かならず業績も改善するということです。
③さらに一つの改善は連鎖、シナジー効果をもたらしますので、多くの改善となって現れます。
④改善は決算対策ではできないということです。長らく好景気でしたので、決算対策で会社はよく見せることができましたが、もうそれは過去の話です。決算対策で見栄えの良い決算書にすることはできますが、実態を良くすることはできません(ただし、外部報告として美しい決算書にするためには決算対策は重要なことです)。いまは会社を本当に良くしないと生き続けることはできません。そのためには月次対策が重要であり、社長の経営管理ともに毎月の治癒活動であるPDCAマネジメントが大事になっています。