648.直接原価P/Lの詳細 BEP分析

2024年3月1日

BEP分析の「BEP」とは「Break Even Point」の略文字であり、直訳すれば、イーブンが壊れるポイント、

つまり『損益分岐点』のことを意味する。

損益分岐点とは、これ以上売上が減れば赤字となり、これ以上売れれば黒字になるという売上高のことを指す。

別の言い方では「CVP分析」とも言われている。

「CVP」とは「Cost Volume Profit」の略文字でであり、コストと販売量そして利益のことを表している。

したがって、損益分岐点(BEP)分析とは、コストと販売量の関係性を明確にして利益を出す経営分析のことをいう。

今回はそんな『損益分岐点(BEP)分析』について紹介する。

そして、その分析結果をどう読むか、どう経営に活かすかは、まさに経営者の「経営力」に問われている。

分析してどう読みか、どう活かすかは、経営者の「経営力」次第!

 

1 売上高 PQ

損益分岐点分析では、売上高をPQで表す。

このことは、売上高をグロスで捉えるのではなく、「単価×数量」で捉えた方が戦略的に考えられるからだ。

ちなみにPは「プライス」、Pは「クオンティティ」を略である。

売上高は一元的に捉えるより、二元的に捉えた方が戦略性が出てくる!

 

したがって、単価・数量や継続・新規、部門別、得意先別などに売上高を細分化して見ることが大切なのだ。

 

 

2 変動費 vPQ

変動費とは、売上高の増減に比例する費用のことであり、売上高それぞれにかかっている金額もわかる費用のことだ。

そうすると、究極的には商品仕入と材料費のことであることがわかる。

変動費は「バリアブル」といい、略文字は『V』であり、変動費比率は「変動費合計÷売上高」で求められるので、

変動費比率は「v」で表される。

したがって、変動費VはvPQとなる。

変動費比率を抑えられれば限界利益率難くなり、限界利益が大きくなる!

 

変動費比率を下げるには仕入単価が安くなる努力も大切だが、多くの場合その解は「在庫」にある。

 

 

3 限界利益 mPQ

PQからvPQを差し引きして計算される利益のことを『限界利益』という。

限界利益はもともとの原価に各企業が付けた『付加価値』とも言え、「マージン」といい、略文字は『M』で表される。

限界利益率は「限界利益(売上高ー変動費)÷売上高」で求められるので、限界利益率は「m」で表される。

したがって、限界利益MVはmPQとなる。

この限界利益mPQが多ければ多いほど、経営はしやすくなる。

また限界利益率mが高ければ高いほど、有利な経営ができる。

経営の第一ハードルは『限界利益』と『限界利益率』である!

 

如何に経営に有利な限界利益と限界利益率にできるかは、各企業の付加価値が握っているので、やはり付加価値性は大事だ。

また付加価値は製品・サービスだけにあるのではなく、社員にもあるので、付加価値を広く捉えることも大事だ。

 

 

4 固定費 F

固定費とは変動費を除くすべての費用となる。

固定費のことを「フィックスズ」といい、略文字は『F』で表される。

この固定費は、「人件費」と「その他固定費」に大別される。

人件費は、士気・やる気・モチベーションの原資でもある。

その他固定費は、販売費・管理費の塊でもある。

したがって、

人件費は士気が高まるように作用させたい。

販売費はコストパフォーマンスを測定しながら、最大限に活かせるように執行したい。

管理費は職場環境を整えながらも、抑えられるところは抑えるようにしたい。

固定費はただ抑えるだけではなく、TPOが大切だ!

 

固定費は別観点から見れば、売上がどうであろうとも、一カ月間にかかる「経費」と言える。

したがって、限界利益が固定費を上回れれば、「利益」が出ることになる。

だから、固定費を下げられれば、経営の難易度を下げられるが、従業員を雇用している場合はその一面からだけでは経営できない。

このことは重要だと思われる。

 

5 損益分岐点売上高 BEPPQ

固定費は1カ月に最低かかる費用だ。

この固定費を限界利益で賄えるようになると、赤字から収支トントン、さらに黒字経営となる。

つまり、「mPQ=F」となれば、収支トントンということになる。

展開すると「PQ=F÷m」となり、損益分岐点売上高が算出できることになる!

 

この「PQ=F÷m」は損益分岐点分析の中核であり、これを覚えておけば、シミュレーションに活用できる。

 たとえば、Fを次期の目標固定費、mを次期の目標限界利益率に置き換えれば、次期の目標とすべき売上高が求められる。

 たとえば、Fを残り期間の必要固定費、mを残り期間の予想限界利益率に置き換えれば、残り期間の必要売上高が求められる。

 

 

6 損益分岐点比率、経営安全率

『損益分岐点売上高』を実際の売上高で割ると、『損益分岐点比率』が求められる。

『損益分岐点比率』とは、実売上高に対する収支トントンの売上高の割合だ!

 

収支トントンの売上高の割合が低ければ低いほど、損益分岐点までに余裕があることになるから、経営の安全性を示す。

たとえば、損益分岐点が50%であれば、現在の売上が半減しても、赤字にはならないことを示している。

したがって、この損益分岐点比率は低ければ低いほど、経営が容易になることがわかる。

 

その安全性を見るには、ズバリ『経営安全率』という指標もある。

これは、損益分岐点比率100%(つまり利益ゼロ)から損益分岐点比率を引けば、求められる。

損益分岐点比率が50%であれば、経営安全率も100-50=50%となる。

経営安全率は損益分岐点までにどの程度売上が落ちても大丈夫かを示す!

 

 

7 労働分配率

労働分配率とは、限界利益の何パーセントを人件費に回しているか、という指標だ。

限界利益は、人件費とその他固定費、そして利益に分配される。

そのうち、

人件費に回したのが『労働分配率』、その他固定費に回したのが『経費分配率』、利益として残したのが『利益分配率』となる。

この3つの分配率を合算すると100%になる。

どのような割合で分配するのが良いのかは難しい問題であり、また一概には言えないが、現在の中小企業経営の課題から考えると

労働分配率と利益分配率は増やさなければならない傾向にある。

そうなると基本的に抑えるのは経費分配率となるが、職場環境の改善等を考えると、そんなには落とせない。

そうすると答えは

限界利益分配は「限界利益自体を増やしなさい」ということになる!

 

大変難しい状況に中小企業経営は置かれていることに気づく。

 

労働分配率の問題に戻ると

いま大事なことは、全体の労働分配率だけを把握し制御することではなく、従業員分類ごとに管理することだ。

たとえば、役員労働分配率、社員労働分配率、非正規雇用労働分配率など、最低でもこの程度にわけて、労働分配状況を管理する

必要がある。

現代はさらに社員労働分配率を年代別に管理することが求められ始めている!

 

企業によっては労働分配率は高いが、中身を覗くと役員労働分配率だけが高く、それが全体を押し上げている場合がある。

あるいは若年層や非正規、外国人労働者に対する労働分配率が非常に低い企業もある。

そのような「まだら模様」を把握するには『労働分配率』一本だけではなく、従業員分類ごとに把握することだ大事だ。

 

 

 

このように損益分岐点分析には経営状況の一端を全部原価損益計算書ではわからないものを見せてくれる。

中小企業にとって甘い経営環境はもう来ないと思われる。それだけ社会が成熟化、複雑化し、発展しているからだ。

そのような状況で損益分岐点分析だけが「伝家の宝刀」ではないが、

ともかく、中小企業だからといった悲観的な甘えを捨てた経営が大切だと思われる。