591.実務的な経営分析 売上債権

2022年11月11日

改訂:2022.12.05

 自社の売上債権の状況を読む

自社の「売上債権」とは、売掛金と受取手形の合計をいう。

売上債権は近くキャッシュになるものではあるが、回収するまでは必ずキャッシュなるとは言えない。

不良債権化にしないためには、期日が到来すれば、確実に回収していくことが大事だ。

 

(1)不良債権にしないためには支払期限を「月末」にしない

売上債権を不良債権化にしないために、大事なことが一つある。

それは、支払期限を「月末にしない」ことだ。

なぜかといえば、企業活動は「月次サイクル」で動いているからだ。

従って支払期限を月末にしてしまうと、万が一、入金されなかった場合、連絡しても翌月末に回されてしまう可能性がある。

得意先から「うっかりしていました。では、もう弊社の支払日は済んでいますので、翌月末にはお支払いしますから」と言われて、

「いや、すぐにお支払いくださいますか?」とは言いにくいものだ。

ついつい、「はい、了解しました。それではお待ちしていますので、よろしくお願いします。」と言ってしまう。

そうすると、回収は1カ月遅れることになり、自社の資金繰りが苦しくなる場合もあるし、また確実に翌月末になれば支払われる

保証があるわけでもない。 このようなことが「債権の不良化の始まり」となる。

そこで、支払期限は20日とか25日とか、末日までに余裕がある日程にすることが大切だ。

そうすれば、催促すれば同月末までにお支払いいただくことをお願いできる。

請求書の支払期限は月末にしないようにする!

 

(2)売上債権回収の流れを確認する

では、売上債権はどのようにキャッシュ化されていくのか? その流れを確認しよう。

例えば、売上を月末に締めて、翌月初に請求書を送付し、その月末までに手形を受け取って、その手形の期日は2カ月後とする。

すると、次のような流れ図となる。

売上げた翌月初に請求書を出し、同月末に受取手形を受け取り、その2ヶ月後に指定口座へ売上代金が入金される。

仕訳は、売り上げた月に「売上計上」を行い、「売掛金」が発生する。

翌月には売掛金から受取手形へ振り替えるので、「売掛金」が「受取手形」へ変わる。

そして売上げた月から3か月後に「預金」へ振り替え、ようやく『キャッシュ』になる。

つまり、売上代金は3ヶ月後に入金されることになるので、この場合、回収サイトは「3ヵ月」になる。

この計算は、仮にこの得意先から毎月10万円の売上があれば、10万円入金されるまでに3ヵ月を要するので、

「3カ月分の売掛金30万円÷1カ月分の売上高10万円=3カ月」という計算で求めることができる。

これを応用すれば、自社の売上債権の回収期間がだいたい掴める。

売上債権の回収期間=売上債権÷平均月間売上高=キャッシュ化できる期間!

 

(3)売上債権の読み方

売上債権の回収状況に異常がないかどうかは、上記のように月末の売上債権残高を平均月商で割れば、大体推測できる。

回収サイト=(受取手形+売掛金)÷平均月商=売上債権状況を判断する!

 

仮に、自社の売上債権支払期限が「1ヵ月」であるならば、この数値も大体「1」となるはずだ。

それが「1.2」とか、「1.5」などとなっているようであれば、どこかの得意先で支払いが滞っていることを示しおり、

早急にそれを特定すれば、支払について確認することができる。

この習慣を社内に定着させれば、得意先の中における自社の支払順位も上げられることになり、不良債権も無くなってくる。

不良債権化を防ぐには早急なリアクションが重要!

 

 

是非一度、試算表なり決算書で売上債権残高を確認して、支払が滞っている売上債権が無いか確認し、

売上債権の正常化に努められることをお勧めします!