130.会計識字力 総資本の枝葉

2013年9月22日

第7話 貸借対照表の枝葉を見よう -総資本(その1)-

総資本とは何だったでしょうか・・?そうです他人資本と自己資本の合計です。別の言葉で言えば負債と純資産の合計です。『総資本』とは事業で調達している資金の総称です
さてこれをどうやって見ましょうか。
あまり難しく考えず「事業の目的は利益を稼ぐことであり、そのために売上げること」から考えてみましょう。すると次のようなことが疑問として沸いてきます。

(1) 当社は総資本でどのくらいの利益を稼いでいるのか
(2) 当社は総資本でどのくらいの売上をあげているのか
同じ資本を使うならばできるだけ多くの利益、できるだけ多くの売上をあげたいものです。この視点からこれらを詳しく見てみましょう。

(1) 当社は総資本でどのくらいの利益を稼いでいるのか
それには利益を総資本で割ってみるとわかります。 <基本計算式> 利益÷総資本
しかし利益には多くの利益があります。売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益と。

ここで簡単にこれらの利益について触れておきましょう。

『売上総利益』とは
売上高から売上原価を差し引いたものです。いわゆる「粗利(アラリ)」という用語で言っているものです。これは、これから経費を支払い利益を残す源泉です。もしあなたの事業で提供されている商品や製品、サービスがより魅力あるものであれば、より多くの売上総利益を残せるとも考えられます。逆に他でも簡単に買える商品や製品、サービスであれば価格で勝負するしかありませんから、あまり多くの売上総利益は残せません。そう考えると『売上総利益』はあなたの事業・会社の魅力度とも言えます
だから売上総利益が思うようにならない場合は「儲けが少ない」と考えるより「どうしたらお客さんにとっての魅力度が上がるのだろうか?」と考えることが大切です。そう考えると自然と顧客志向になっており、また魅力度も幅広く考えられます。
実際、今の時代、商品やサービス自体より、それ以外で(接客が良かったとかお店が明るいとか気持ちいいおもてなしなど)魅力を感じている人が多い。あなたもお客になった場合、そうではありませんか?

『営業利益』とは売上総利益から経費を差し引いたものです。あなたの事業・会社の本業の利益とも言えます。営業利益は全員の努力でいかに経費を抑えるか、否か、によって大きく左右されます。経費の削減というと簡単なように思ったり、「もうやっているよ」と思われたりするかもしれませんが、そうではないのです。経費を抑えるということはこれまでの社内の習慣を変えるということです。まさしく「経営改善」なのです。だから必ずできることがあるのです。そう考えると『営業利益』はあなたの事業・会社の経営努力の成果とも言えるものなのです。

『経常利益』とは営業利益から営業外損益を加味したものです。営業外損益とはその文字のとおり、営業以外で得た益と損です。具体的には預金等の利息であったり、借入金等の支払利息です。したがって『経常利益』とはあなたの事業・会社が経常的に得られる利益とも言えなくもありません。ちょっと昔はこの経常利益が利益の標準的な指標とされていましたが、現在はなかなか本業ベースで利益を残すことが困難な時代です。ですから現在は経常利益よりも営業利益のほうが標準的な指標と考えたほうが良いと思います。

『税引前当期純利益』とは経常利益から臨時突発的イレギュラーな損益、特別損益を加味したものです。臨時突発的な損益とは固定資産を売却して得た売却益や売却損などです。したがって『税引前当期純利益』とはあなたの事業・会社が得た最終的な利益と言えなくもありません

最後に『当期純利益』とは税引前当期純利益から税金を差し引いたものです。会社の税金には法人税・住民税・事業税などがあります。これらの税金を負担したあとの利益です。この税金の負担率を『実効税率』と言い、現在はざっくりと38%程度です。いまこの税率の見直しが行われており、今後は30%前後まで下がるかもわかりません。この『当期純利益』があなたの事業・会社が次期へ繰り越す利益であり、ここから借入金の返済と『内部留保』と言って自己資本を高めることができます。
このことをよく理解しておいてください。まず借入金の返済は当期純利益から返済するのです。したがって当期純利益が赤字であれば借入金の返済は手元の現預金からすることになります。事業のために融資を受けたのに、事業からは返済できずに手持ちのキャッシュから返済する・・、こう考えるとおかしいなことであることが良く分かります。さらに内部留保がないと資金は増えませんし、自己資金で設備投資もできません。ということは適切に納税を行い、当期純利益を残さないと正常な企業経営はできないということです。常に税金を少なくすることを考え節税する、常に税金が少なくなるアドバイスを有り難がって受け入れる、こんな経営を続けていればいつまで経っても良い経営はできません

さて利益の説明が長くなりましたが、これらの利益と総資本を比べることによってあなたの事業の儲け度「総合的な収益力」が見ることができます
その中で最もスタンダードなのは「営業利益÷総資本」と「経常利益÷総資本」であり、前者を総資本営業利益率、後者を総資本経常利益率と命名されています。いま最重要な指標は総資本営業利益率であることは言うまでもない。またこのことを横文字で言えば、ROA(
Return on Asstts リターン・オン・アセット)と言います。

長くなったの、この続きは次回とさせていただきます。