278.中小企業の経営承継③

2016年9月25日

Ⅲ 中小企業の経営実態

 

前回は、中小企業の経営承継の方法とそれぞれの問題点を考え、いずれにせよ、その根底には『財務の健全化』を図らなくては

ならないことを指摘した。 今回はそんな中小企業の経営実態を見てみよう。

 

1.中小企業の経営実態

中小企業の経営実態と言っても、ほとんどの中小企業は決算公告をしていないので、その実態を掴むことはむずかしい。

そこで参考になるのが「TKC経営指標」だ。TKC経営指標は全国約1万のTKC会計事務所が関与している50数万社の

中小企業の中からしっかりした決算書を作成している20数万社に及ぶ個別のデータはわからなく統計処理されたデータベースだ。

そこで平成22年度に決算を終えた224,595社の平均要約決算書を見てみよう。

224千社の平均決算書(H22年2010年)

総資本・総資産が1億6千万円、年商は2億円というのがその平均像だ。

さらに自己資本は25%、換金性の高い当座資産は35%、経常利益率は0.5%という状況だ。

また平均従業員は10名程度と云う数字だ。

中小企業の平均像としては、なかなかハイレベルの平均像と言える。

しかし、時価評価するとどうなるのか・・。

 

2.実体の財政状況

もう一度確認すると、224千社中小企業の平均決算書は次のとおりだ。(百万円未満四捨五入)

 ■総資産                 ■負債

  現預金    3000万円        買入債務      1700万円

  売上債権   2500万円        短期借入金     2000万円

  棚卸資産   1500万円        その他流動負債   1600万円

  その他     900万円        長期借入金     5300万円

  固定資産   8200万円        その他固定負債   1300万円

  総資産合計 16100万円        負債合計     11900万円

  ※固定資産内訳              自己資本      4200万円

    有形 6400万円          総資本合計    16100万円

    無形 1700万円

 

一般的に中小企業の決算書の問題点は、総資本は自己資本を除きほぼ正確に記載されているが、

総資産は実質より膨れていると言われている。

 たとえば、現預金は、預金は通帳があるので実証されるが、現金は本当にそれだけあったのか証明はされない。

 たとえば、売上債権には回収不能な売上債権が含まれていることが多々あると言われる。

 棚卸資産においては、実数すらわからず、多くの不良在庫が含まれているとも言われている。

 さらに固定資産においては時価評価すると全く別の価額になる。

 

したがって、特に資産を時価評価しなおし「実体の財政状況」にする必要がある。

そこで上記の総資産を実体の状況に見直してみよう。

        決算書上の価額 →     (見直し条件と資金化評価率)     →  実体の価額

  現預金    3000万円 → 現金も記載通りとして100%評価       →  3000万円

  売上債権   2500万円 → 不良債権は10%と見込み90%評価      →  2250万円

  棚卸資産   1500万円 → 売却してそれほど資金化できないので20%評価 →   300万円

  その他     900万円 → 資金化できずと考え0%評価          →     0万円

  有形固定資産 6400万円 → 建物は取り壊すので0%、土地は40%評価   → ≒2000万円(とする) 

  無形固定資産 1700万円 → 評価できるものはないと考え0%評価      →     0万円

  合計    16100万円 →       資金化評価合計          →  7550万円

 

なんと、決算書上1億6100万円であった資産が実体は7550万円となり、負債は1億1900万円あるので、

実体は4350万円の債務超過という結果になってしまう。

実際にはこれに平均従業員数10名に対する退職金や清算費用を考え合わせれば、軽く5000万円以上の債務超過となる。

これが現代の中小企業の実体である。それもかなりハイレベルな中小企業の実体である。

 

したがって、中小企業の経営承継はするにもできず、現在の経営者が借入しつ続けながら、経営を継続する背景である。

そして最終的には法的整理もできず、休廃業・解散が多くなるわけである。

 

 

これが、経営承継のためには『財務の健全化』することが大前提になるという所以です。

次回は、ではどうしたら財務の健全化ができるのか、そのヒントを考えてみる。 

 

 

 

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