444.働き方改革 産業医強化と同労・同賃

2019年12月22日

『働き方改革』の第4回目は

「産業医の機能強化」と「同一労働同一賃金の義務化」について考えていきましょう。

 

第4回『産業医強化と同一労働同一賃金』

 

1 産業医の機能強化

(1)産業医の機能強化とは

「産業医の機能強化」とは、長時間労働や心労的な疲労から労働者を守るために、産業医による面接や健康相談を

確実に実施しなさいとという法案です。

何年か前に長距離バスのドライバーが過労により事故を起こし、学生が数名亡くなるという痛ましい事故がありました。

また、某広告会社の若い社員が過労とパワハラのために自殺をするという事件もありました。

そのようなことを未然に防ぐ努力を職場でやりましょうという主旨です。

この法案はすでに大企業・中小企業を問わず、本年2019年4月から適用開始されています。

(2)産業医とは

「産業医」とは、次のように定義されています。

 まず医師であること。そのうえで、次のいずれかの要件を備えた人のことをいいます。

 ①厚生労働大臣が指定する医師会あるいは産業医師大学が行う研修を修了した者。

 ②産業医の養成課程を設置している産業医科大学又はその他の大学で厚労省が指定した当該課程を修めて卒業し、

  その大学が行う実習を履修した者。

 ③労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者。

 ④大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者。

(3)産業医を置かなくてはならない企業

産業医はすべての企業において設置しなければならないのかと言えば、そうではありません。

原則として、従業員が50人未満の企業では不要です。また従業員50人以上、499人未満であれば嘱託でよいとされています。

しかし、何らかの配慮あるいは意識改革は、すべての職場で必要です。

なお、産業医の設置基準は次のとおりです。

「特定業務」については、別途細かく定められていますので、確認が必要です。

 

2 同一労働同一賃金の義務化

(1)概要

これまでは同じ仕事をやっていても、正社員と派遣パートなどの雇用形態によって、賃金を変えることが許されていました。

しかし、これからは同じ仕事であれば、正社員と非正規社員というだけで不合理な待遇差を設けることは禁止されます。

なお、この法案は大企業で来年の2020年4月から、中小企業においては再来年の2021年4月から適用開始となります。

(2)具体的に

1.基本給

 労働者の能力・経験、業績・成果、勤続年数などに応じて基本給を支給している場合、それに一定の違いがある場合は

 それに応じて支給することは認められますが、それが正社員と非正規社員でという理由だけでは不合理と見做されます。

2.役職手当

 もし、正社員と非正規社員が同じ役職に就いている場合、役職手当は同一の支給をしなければなりません。

3.通勤手当

 通勤手当は正社員であっても非正規社員であっても、同じ制度で同じ支給額を支給しなければなりません。

4.家族手当や住宅手当

 家族手当や住宅手当についてはガイドラインには示されていませんが、同一労働同一賃金の対象となっていると思われます。

 したがって、正社員に家族手当や住宅手当などを支給しているのであれば、非正規社員にも支給すべきと考えられます。

5.賞与

 これまで、派遣パートだからという理由で、賞与を支給されていなかったかもわかりません。

 しかし、大企業においては来年2020年4月から、中小企業においても再来年2021年4月からは、同じモノサシで、

 貢献に応じた部分につき同一の賞与を支給しなければならないとされてます。

6.時間外手当

 時間外手当は、非正規社員にも正社員と同様に、同一の割増率で支給しなければなりません。

こうやって見てみると、

「同一労働同一賃金」によって、派遣・パートなどを採用されている場合には、かなりの人件費増となることがわかります。

(3)罰則規定

同一労働同一賃金の義務化はガイドラインが公表されているだけで、特に法的な拘束力はありません。

したがって、罰則規定はありません。

しかしながら、同一労働同一賃金に違反すると、損害賠償請求を受ける可能性はあります。

よって、制度主旨をよく理解し、就業規則なども改定する必要があると思われます。

時間はあと、中小企業の場合でも1年3か月ほどしかありません。 早急に改善する必要があります。

 

 

いかがでしょうか、『働き方改革』に対応するのは大変だと感じられたのではないのでしょうか?

いま中小企業を取り巻く大変革はハッキリとは見えないかもしれませんが、足元置く深くでマグマのように渦巻いています。

それらに対処していくためには、会計による経営管理をしっかりすることが大切だと思います。

そうは思われませんか?