542.経営計画(予算)の作り方 前編

2021年11月28日

2021年もいよいよ終わろうとしています。

この1年も新型コロナウイルスに振り回された1年でしたが、

このコロナ感染拡大時の経営で、経営計画に基づく経営がいかに大切かと感じられた経営者の方も多かったのではないでしょうか。

経営計画があれば、経営の狂いに一早く気付くことができますので、打ち手もそれだけ早く講じられることになります。

コロナ感染だけに限らず、近年は国内問題や国際関係、あるいは温暖化問題など、以前よりも数段早く経営に影響を与えるように

なってします。

それだけに経営計画や予算立案の重要性は格段に高まっており、かつそれも経営規模に関係なく、その必要性は増しています。

そこで今回から、前回までの財務に関する知識をベースに、実務的な経営計画(予算)の作り方を2回に分けてご紹介します。

 

1 経営計画策定に際して準備する材料

料理を作るにも材料が必要なように、経営計画を作る時にも準備する材料があります。

それは次のとおりです。

 ①今年の売上高

 ②今年の限界利益率

 ③今年の人件費合計

 ④今年の経費合計

 ⑤来年の借入金返済額

 ⑥来年の目標利益額

この6点が準備できていれば、大枠の経営計画は策定出来ます。

では、その策定の要領を紹介しましょう。

 

2 まず、来年の必要利益を考えてみよう

経営計画策定の要領は「底から作り始める」ということです。建物でもまず基礎からか作ります。それと同じです。

経営計画の基礎とは『必要利益』です。

来期の目標を「売上高」に置く売上志向の経営者が多くおられますが、売上高は過程の目標であり、

あくまでも最終の目標は『利益』です。 このことを忘れないようにしましょう。

経営計画の目標は売上高ではなく『利益』を達成することです!

 

その来年の必要利益とは、目標とする利益額だけはなく、それに借入金の返済額を加えねばなりません。

なぜなら、当コラムでも何回も説明しているとおり、借入金の返済は利益の中からするからです。

もし、利益より借入金返済額の方が大きければ、それは手持ちの現預金から不足額を支出することになりますので、

資金繰りを苦しくすることになります。

仮に、目標とする利益額が100万円、年間借入金返済金額が240万円とすれば、来年の必要利益は340万円となります。

 

3 次に来年の必要固定費を考えてみよう

来年の必要固定費は「人件費」と「経費」の合計です。

人件費は「役員報酬」と従業員の「給与・賞与」からなります。 そして、それに忘れてならないのは「社会保険料」です。

役員報酬はともかく、従業員の給与・賞与は昇給させたいものです。

なぜなら、従業員の給与・賞与は、職場のモラールの大きな源泉のひとつだからです。

モラールとは、従業員同士が協働し、組織で目標を達成するための行動のことです。

従業員の給与・賞与は職場のモラールの大きな源泉の一つです!

 

仮に今年の役員報酬が800万円、従業員が3人いて給与・賞与が1800万円であれば、

役員報酬を800万円の据え置きで、従業員の給与・賞与の昇給を6%とすれば、給与・賞与は1908万円となります。

それに社会保険料を15%と見積もれば406万円となり、総人件費は3114万円となります。

経費は今年1000万円で、費目別に増減があったとしても同額にすることを目標にするとすれば、1000万円ですので、

来年の必要固定費は4114万円となります。

 

4 そして来年の売上高目標を考えてみよう

ここまで考えれば、もう来年の売上高目標は計算できます。

計算する算式は次のとおりです。

来年の売上高目標=(必要固定費+必要利益)÷限界利益率

 

ここで注意することは「売上総利益率」ではなく、『限界利益率』ということです。

売上総利益率は全部原価計算の売上原価を除いた利益率という意味ですが、

限界利益率は直接原価計算の直接原価だけを除いた利益率ということに気をつけましょう。

限界利益率は「直接原価÷売上高」である!

 

仮に今年の限界利益率が55%であれば、来年の限界利益率は少なくとも同率か、

あるいは少しでも付加価値を上げるという方針を反映させて2%上げるとか、考えます。

ここでは後者を採用して、57%とします。

そうすると、

 来年の売上高目標=[(必要固定費)4114万円+(必要利益)340万円]÷(目標限界利益率)57%=7814万円

となります。

因みにこの事例から人件費や限界利益率が今年と同じであったとした場合の売上高を試算すると、次のようになります。

 [(今年の固定費)3990万+(必要利益)340万円÷(今年の限界利益率)55%=7872万円

 

ほぼ、同額の売上高が必要になることがわかります。

これによって、いかに限界利益率を改善することが、従業員への分配を増やすことや必要利益を増やすことを実現させることを

可能にさせるか理解できるかと思います。

 

営業成績の改善には固定費を下げることも大事であるが、

限界利益率を上げることがさらに重要である!

 

これで大枠の経営計画は出来上がったわけですが、

次回は経営計画を細部に掘り下げ、経営計画策定のポイントをお届けします。