331.380万中小企業のT/B⑩

2017年10月1日

第10回 B/S総資本「借入金」の読み方・見方

 

1 短期借入金と長期借入金の概要

 借入金とは「有利子負債」ともいい、他の負債との違いは「支払利息」がつくことです。

 借入金には「短期借入金」と「長期借入金」がありますが、その目的は自ずと違います。

(1)短期借入金

 短期借入金は元来、運転資金(賞与支払や日常経営資金)目的の短期間の借入であり、金利は高くなりますが、返済期間が短い

ので、実際に支払う利息は多くはならない筈です。したがって、カードローンなど短期目的の融資制度なのに、審査も甘いという

ことで安易に借りて、長期間借りることになってしまうと、支払利息は想像以上に高額となります。

(2)長期借入金

 一方、長期借入金は設備投資目的の借入ですので、金利は低くなりますが、返済期間が長いので、実際に支払う利息合計は多く

なります。したがって、投資効果もあまり検討せずに借りてしまうと、経営に過大な負担を負うことになります。

(3)借入金の勘定科目

 科目的には、流動負債科目として「短期借入金」と「1年以内返済長期借入金」があり、固定負債科目として「長期借入金」が

あります。この区分は、試算表で会社の経営状況を判断するうえで重要な情報となるので、正しく区分する必要があります

 税理士(職員)の中には「どちらでもいいですよ」なんて、ものわかりの良さを感じさせる税理士(職員)もいますが、

それは決算書・申告書のことだけを考えてる古い税理士(職員)である証左ですので、関与を考える必要があります。

 

 2 短期借入金を借りた時点で経営的にはアウトの状況だと知る

 普通、商売とは開業当初を別にすれば、売れたお金で商売は回って行くものです。あるいは行かせるものです。

そうは思いませんか? 

 短期借入金とは、企業経営の日常的な支払いに対する借入金ですから、本来であれば「売上高」を源泉とした資金の中で

運用できる経営をすべきで、短期借入金を起した時点で、経営的には黄色ランプが点滅していることを自覚せねばなりません

短期借入を起こそうと考えた時点で、経営的にはもう問題があり、直ちに改善に向けた取り組みをしなければなりません。

 現在では多くの中小・小規模企業において、「賞与資金が足りないから」とか、「納税資金が足りないから」など、

さまざまな理由で運転資金用途で金融機関から融資を受けているという話をよく聞きますが、「とんでもないことだ」という意識を

持つことがまず大切です。

 

 3 借入金の読み方・見方

 以上のことを基本知識として、月次試算表から借入金に関する状況を読みましょう。

 

(1)依存度をチェックする

 借り入れしないで事業資金が回るならばそれが理想的です。しかし、事業を営む以上、借り入れすることは普通とも言えます。

ただ、過剰な借り入れは経営の健全性からも避けたいところです。ではそれは、どう読めばわかるのでしょうか?

それは借入残高と平均月商を比べればわかります。

  借入金依存度 =借入金残高 ÷ 平均月商

もし、この「借入金依存度」が平均月商の6倍以上あれば、明らかに借り過ぎ、経営を圧迫している状態かと思いますので、

早急にリスケなど手を打つことを考えねばなりません。

できれば、この「借入金依存度」は3倍以内にコントロールしたいものです。

このことを専門的には『借入金対月商倍率』と呼んでいます。

 

(2)およその借入金返済期間をチェックする

 現在の経営状況から、借入金の返済期間をチェックします。この返済期間が実際の返済期間より長ければ、資金繰りは厳しいと

言うことです。それは次のような読み方をします。

  現在の経営状況からの返済期間 = 借入金残高 ÷(平均経常利益+減価償却費)

  ※(平均経常利益+減価償却費)が月次平均金額であれば、算出される返済期間の単位は「ヵ月」となります。

   年間平均金額であれば、算出される返済期間の単位は「年」となります。

この読み方には2つの前提があります。

ひとつは「売掛回収はすべてできる」という前提です。もうひとつの前提は「事業で得た資金はすべて借入返済に回す」ということ

です。ですから、最短の返済期間です。

この最短の返済期間が、実際の返済期間より長ければ、さきほど申しあげたとおり、「資金繰りは厳しい」と言わざるを得ません

現在の中小・小規模企業は3分の2が赤字経営だと言われていますので、如何に借入返済が大変か想像できるかと思います。

このことを専門的には『債務償還月数(又は債務償還年数)』と呼んでいます。

 

(3)近々の返済状況をチェックする

 3つめの読み方は、近々の返済状況を読む方法です。それは次のような読み方をします。

  近々の返済状況 = 手元資金 ÷ 1回当たりの返済額

手元資金とは、現金+預金のことでしたね。この手元資金と返済額を比べれば、返済のための資金状況が推測できます。

少なくとも返済6カ月分ぐらいの手元資金は持っておきたいものです。

このことを専門的には『手元資金返済額倍率』と呼んでいます。

 さらにザックリ見るには、預金と比べることも有効です。

  預金と借入金との比率 = 預金 ÷ 借入金残高

借り入れ当初は運転資金にしろ、設備資金にしろ、使ってしまいますので、低くなることもやむ得ないですが、

ある程度の期間が過ぎれば、できれば30%程度の預金は保有したいところです。

3千万円借りたなら、1千万円近くの預金ということになります。でないと融資した金融機関に対する与信が下がり、

今後の融資に差し障りが生じる場合もあります。

このことを専門的には『預金対借入金比率』と呼んでいます。

 

 このように借入金も月次試算表から読めるようになると、事前に経営対策ができるように思われませんか?

もし、少しでもそのようなことを感じ始めているあなたであれば、きっとあなたの会社を堅実に経営していけます。

堅実に会社を経営していければ、会社は発展します。なぜなら、会社の発展は堅実継続の結果だからです。

 このように月次試算表を日々の経営に活かすことで、「黒字経営」と「強い会社」作りが可能となることが

徐々におわかりいただけるようになって来たかと思います。

 

 

現在はただ一生懸命、商売・仕事をしていれば、事業が継続できる時代ではありません。

それだけ世の中の変化は激しく、早くなっています。それが、高度成長後の現代、成熟社会だと思います。

ぜひ、いま一度経営というものを考え、創意工夫と実行でさらなる発展を目指しましょう。

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