408.図解 事業戦略策定 24

2019年4月6日

 

戦略論の第10回は、ジェフリー・ムーアの「キャズム(Chasm)理論」です。

キャズムとは「割れ目、溝」という意味ですが、『キャズム理論』は導入期で成功した商品やサービスを、

如何にして成長期にも普及促進させていくのかというマーケティング理論です。

キャズム理論によれば、普及過程ごとに攻め方は変わる」といいます。

自社商品やサービスを普及させるには大変興味深い理論ですので、知っておいて損はない考え方です。

 

1 キャズム理論とは

キャズム理論は1991年、アメリカの経営コンサルタントであるジェフリー・ムーアが提唱した

「商品やサービスの普及に関する考え方」です。

当時、パソコンやOSなどのハイテク製品がなかなか一般コンシューマまで普及せず、

その原因と対策として理論構築された理論です。

 

2 消費者の5分類

ムーアはコンシューマを次の5つに分類しました。

(1)イノベーター(革新的採用者)

イノベーターとは、ともかく新しいものをすぐ欲しがる消費者層です。

新しいiPhonやOSの販売開始日に早朝から列を成して並んでいる人々の風景がよく見られますが、

そのような消費者のことを指し、すぐ購入してくれる客層です。この客層は「2.5%」いると言われます。

(2)アーリーアダプター(初期採用者)

アーリーアダプターとは、革新的採用者(イノベーター)の様子や反応を見てから、判断して購入を検討する人々です。

つまり、積極的に検討してくれる客層です。この客層は「13.5%」いると言われています。

(3)アーリーマジョリティ(初期多数派)

アーリーマジョリティとは、第2陣の利用者です。

つまり、様子見はするけれど、基本的には前向きに検討し購入してくれる客層です。

この客層は、消費者の「34%」を占めると言われています。

しかし、ここに至るには『大きな溝(キャズム)』を乗り越えなければならないと言われています。

ここまでが、比較的積極的な消費者層です。この3つを合わせると「50%」となります。

(4)レイトマジョリティ(後期多数派)

レイトマジョリティとは、周りの普及状況などを見て追随してくる保守的な消費者層です。

発表当初はあまり興味を示さず、状況を見て検討する客層です。

この客層も「34%」いると言われています。

このレイトマジョリティとアーリーマジョリティの間にも、『キャズム』が存在すると言われています。

(5)ラガード(採用遅滞者)

最後の客層はラガードと呼ばれ、世間の流行にはあまり関心がなく、なかなか採用しない消費者層です。

この客層は「16%」を占めると考えられています。

 

3 普及促進の鍵を握るのはアーリーアダプタの克服

この5つの消費者層の中でももっとも重要な客層は『13.5%のアーリーアダプター』です。

なぜなら、普及の先導的役割となるからです。

ですから、まず普通の消費者との橋渡しをしてくれる、この早期接続者を掴むことが最も大事なこととなります。

一般市場に普及させるにはこのアーリーアダプターから『アーリーマジョリティ』へ移行させることが重要ですが、

そのあいだに大きく深い溝『キャズム』があると言われています。

商品やサービスが普及しない要因は「この『キャズム』を乗り越えられないからだ」とムーアは言っており、

その原因は、企業がアーリーマジョリティの特性を理解しないからだと指摘しています。

 

4 キャズムを乗り越える方法

(1)最初の実質的な客層である13.5%のアーリーマジョリティの実利的な評価に応える

   ただし、ポイントは、アーリーマジョリティ全体を相手にしないことだと言います。

(2)全力を1ヶ所に集中する

   1ヶ所とは、ある特定のアーリーマジョリティに向けて、完全な製品を作り上げることです。

   そのためには、

    ①(小さくてもいいから)手がかりを早く掴むこと
    ②特定のアーリーマジョリティ市場を掴んだなら、それを標準品として広く普及させること です。

(3)他のアーリーマジョリティを順次掴んでいくためにそのアーリーマジョリティに合わせてカスタマイズしていく

   カスタマイズとは、言い換えれば『付加価値』をつけていくことです。

 

 

今回の「キャズム理論」をまとめると、まず客層を絞り、そこに傾注して期待に応えられる商品やサービスを提供し、

それをもとに、他の客層にも応えられる商品やサービスにカスタマイズしていくということです。

私たちはともすれば、総花的に事業を進めがちです。

「御社はいったいどこに的を絞って商売をしているのですか?」と問われると、答えに窮ずる場合が多くありませんか。

キャズム理論はそんな考え方を是正することを勧めているように思われます。

戦略を考えるにあたって重要なことは、『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いのほか、思い込みに囚われて、生活や仕事をしています。

その結果が「いま」であることを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。