583.わかりやすく 免税事業者とは

2022年9月18日

再更新:2022.09.25

来年2023年10月1日から開始される『インボイス制度』・・、

それに際して、いま多くの免税事業者が経営判断の岐路に立たされている。

それは「このまま免税事業者と続けるのか」、それとも「この機会に課税事業者を選択するのか」という判断だ。

そこで今回は、「わかりやく免税事業者とは」と題し、あらためて免税事業について考えてみましょう。

 

 

▶免税事業者とは

免税事業者とは、消費税の「課税期間」に係る、「基準期間」における「課税売上高」が1,000万円以下の事業者のことを指す。

主に個人事業者や小規模法人事業者が該当すると思われる。

しかし、「基準期間における課税売上高が1,000万円以下」と言われることに対して、理解されていない場合が多いようです。

解くキーワードは、「課税期間」と「基準期間」と「課税売上高」の3つだ。

 

(1)課税期間とは

まず、「課税期間」とは、消費税の納付額を計算する期間のことをいう。

個人事業者ならば、暦年の1月1日から12月31日までの1年間となる。

法人企業ならば、年度事業期間のことであり、期首日から期末日までの1年間となる。

 

(2)基準期間とは

次に「基準期間」とは、今期が消費税を納付しなければならない期間のか、それとも必要でない期間のかを判断基準となる期間の

ことを指し、今期の2年前の期間のことをいう。

たとえば、

個人事業者の場合なら、今年2022年の課税期間の基準期間は、2019年1月1日から12月31日までとなる。

法人企業で3月決算の場合なら、2020年4月1日~2021年3月31日が基準期間となる。

この基準期間の課税売上高が1,000万円以下(つまり1,000万円まで)ならば、2022年は免税となり、消費税の申告は必要ない。

基準期間とは現在事業期間の2年前の事業期間のことを指す!

 

(3)課税売上高とは

最後に「課税売上高」とは、消費税の対象となる売上高のことで、課税対象の売上高と受取利息や有価証券利息などの非課税売上を除いた「営業外収益」を加算したもののことである。

特に「雑収入」として計上した営業外収益の場合は、多くの場合が加算されることが多いので、注意が必要だ。

課税売上高には非課税を除く営業外収益も含まれる!

 

なお、免税事業者と課税事業者の「課税売上高」が違うので、これも注意が必要だ。。

免税事業者の場合は、消費税を上乗せしていても、それも加えた課税売上高と課税営業外収益が課税売上高となる。

わかりやすく言えば、税込み課税売上高が「課税売上高」だ。

一方、課税事業者の場合は、消費税を除く「税抜売上高」が課税売上高となる。

 

たとえば・・、

免税事業者は、営業外収益を含む「課税売上高」が1,100万円であれば課税事業者となり、消費税の申告が必要となる。

しかし、それが課税事業者であれば、その年の売上高が税込1,100万円であっても、すべての仮受消費税率が10%だとすれば、

課税売上高は1,000万円、仮受消費税が100万円となるので、その事業年度は消費税の申告が必要だが、この年度が「基準期間」と

なる2年後の事業年度は「免税事業者」となるので、消費税の申告は不要となる。

したがって、売上高1,000万円前後の企業は、消費税の申告が必要な場合と、そうでない場合が頻繁に変わる可能性があるので、

注意が必要だ。

免税か、そうでないか頻繁に変わる場合がある!

 

ただし、次でも説明するが、「適格請求書発行事業者」になってしまうと、売上高に関わらず、常に課税事業者となるので、

「適格請求書発行事業者」は消費税の申告を毎年しなければならない。

 

(4)インボイス制度の「適格請求書発行事業者」になると

そのような状況で「適格請求書発行事業者」になると、適格請求書発行事業者は売上高がいくらであろうと「課税事業者」なので、

適格請求書発行事業者登録申請をした事業者は、2023年10月以降はずっと「課税事業者」となる。

ただし、免税事業者が適格請求書発行事業者になると、初年度だけは免税事業者期間と課税事業者期間が混在するので、消費税の

申告が少し複雑になるので注意が必要だ。

免税事業者が適格請求書発行事業者になると初年度は免税と課税が混在する!

 

 

▶免税事業者がインボイス制度で不利と言われる理由

では、インボイス制度が始まると「免税事業者が不利になる」と言われるが、その理由を考えてみよう。

(1)「売上が減少する」可能性がある

まず最初に考えられることは、「売上が減る」、「仕事が減る」ということだ。

免税事業者と取引を行うと、取引先の課税事業者は仕入税額控除ができなくなる。

とすると、免税事業者ではなく、仕入税額控除が受けられる課税事業者との取引に切り替えることが予測されるということだ。

結果的に、免税事業者の仕事が減り、売上が減少する恐れがあると言われていている。

 

(2)「値引き要求」される可能性がある

次に、免税事業者である事業者は消費税を納税する必要がないことがわかるので、

取引先の一つの選択肢として、請求時に本体価格の中に組み込まれていると思われる「消費税額」を値引きしてほしいと

要求されることが考えられる。

しかし、そう要求すると『消費税転嫁対策特別措置法』に抵触する恐れがあるので、結果的にはやはり取引から除外される

恐れがあるということだ。

 

(3)「信用を損なう」可能性がある

これが一番大きな影響かもわからない。

企業取引の上では「互いの信頼性」というものが極めて重要だ。

しかし、適格請求書発行事業者でないために「信頼性に欠ける」といった、イメージがついてしまう可能性があるかもわからない。

そうすると取引の継続に大きな影響が出てくる恐れがある。

 

(4)「経過措置」は意外と効かない

そのようなことから、『インボイス制度』には6年間の「経過措置」がある。

この期間は「適格請求書でなくともその何割かは仕入税額控除ができる」という期間だが、

取引先の立場から考えれば、そのために事務管理量が増えることになる。だから一元的に同じ管理をしたいという思考が働く。

また「信用」という意味では、経過措置は意味をなさない。やはり「信用」は損なう恐れがある。

したがって、「経過措置」という制度は意外と効かないかもわからない。

 

(5)課税事業者になると「消費税の納税義務が発生」する

そのようなことから、本来は免税事業者なのに、これを機会に免税事業者から課税事業者になる事業者も多く現れることが

予測される。

そうすれば適格請求書の発行ができるので、入ってくる仕事や売上は減らないかもわからない。

しかし、そうやって課税事業者になれば、当然のことながら消費税を納めなければならなくなるので、これまでのメリットは

得られなくなる。

これまで必要でなかった消費税の計算や申告の「事務」が増え、そして「納税」という支出が発生する。

免除されていた消費税を納めることは、規模の小さい個人事業者や法人事業者にとっては大きな負担を招き入れることになる。

 

 

▶免税事業者が取るべきインボイス制度対策

では、どのようなインボイス制度対策が考えられるのか?

(1)しばらく様子を見る

実際にどのような影響が生じるのかは、インボイス制度が始まらないとわからない。

これまでも、多くの制度改革が始まると、その前には利害関係事業者が「大変だ!」「大変なことになる!」と大騒ぎをするが、

いざ始まると、なんでもなかったということがほとんどなのです。

そのために、このインボイス制度にも「6年間の経過措置」があります。

適格請求書でなくとも、最初の3年間はその8割が、残りの3年はその5割の仕入税額控除が認められるという措置だ。

したがって、仕入税額控除できない免税事業者のままでいても、この6年間は影響を受けないかもわからない。

この6年間の間に様子を見て、その後の対策を考えても良いのかもわからない。

しかしその間にイメージは植えつけられてしまうので、リスクは伴う!

 

(2)課税事業者に切り替える

もう一つの対策は、この際に「課税事業者」になるという選択だ。

確かに消費税の計算や申告といった作業や、納税といった資金負担が加わるが、インボイス制度導入による影響は最小限に

抑えることができる。

また、本来、預かった消費税は支払った消費税と相殺して、預かり過ぎている消費税は国庫に納付するということは、

当たり前と言えば、当たり前のことだ。

消費税は消費者や取引企業が支払っているわけで、決して消費税が経営を圧迫しているわけではないはずだ。

したがって、これまでがおかしかったわけであり、この際いろいろな経営改革を行うチャンスにするという考え方が

正攻法ではないかと思われる。

インボイス制度を経営改革、チェンジのきっかけにする!

 

 

 

「インボイス制度」はスモールビジネスにとって、大変大きな影響を与える制度改革であることは事実です。

大事なことは、何かを参考にして一律同じことをするのではなく、それぞれの企業が身の丈に合った変革をすることなのです。

そうすれば、それぞれぞの「新しい道」が見えてくるはずです。