133.会計識字力 固資の読み方

2013年10月8日

第10話 貸借対照表の枝葉を見よう -固定資産の活用-

1.固定資産とは何か?
固定資産とは向こう1年以内で資金化できない資産をいいます。
一般的には建物や機械設備、車両、土地のことをですが、中小企業ではその他にゴルフ会員権や1年以上に渡って回収する貸付金などがあります。
ここで会計を経営に活かすためのポイントをひとつ。少し難しい話かもしれませんが、よく理解してください。
それは貸付金です。仮に会社から社長に36万円を貸したとします。約束は毎月1万円返済し、3年間で完済するとします。
するとこれは1年以内には資金化できませんので「流動資産」の短期貸付金ではありません。固定資産の中の「投資その他の資産」に分類し、長期貸付金となります。但し12万円は1年以内に資金化できますので、12万円は短期貸付金、24万円は長期貸付金となります。このように正しい分類をしないと財務諸表で正確な経営判断は出来ません。同じような意味で有価証券があります。あまり会社で株式を購入することはないと思いますが、いつでも換金するつもりであれば、流動資産の中の「当座資産」としての有価証券になりますが、株価が下がってしまって売るに売れない株式などはやはり固定資産の中の「投資その他の資産」に分類し投資有価証券になります。
ではちょっと主な固定資産を確認をしてみましょう・・。

固定資産は有形、無形、投資その他の3つに分類されます。
(1)有価固定資産
形のある固定資産、建物や機会、車両、器具、土地などがあります。いわゆる固定資産らしい固定資産です。
(2)無形固定資産
これは形のない固定資産です。借地権や電話加入権などがあります。いわゆる権利だと覚えておきましょう。
(3)投資その他の資産
これは有形でも無形でもないその他の固定資産です。一般的にはさきほど紹介した投資有価証券、長期貸付金や敷金などがあります。
 
これら固定資産はすべて1年以上に渡って運用する資産です。

 

2.固定資産を経営判断にどう活かすか?
ではこの固定資産をどのようにして経営判断に活かしましょうか?
それには2つの考え方があります。ひとつは長く使用するものですから、その購入資金の出所を確認します
もうひとつは長く使用するものですから、その有効活用度を確認します

2-1.購入資金の出所を確認する
(1)固定資産購入の資金の出所を確認する
すべての資金の出所は負債と純資産の総資本でした。しかし長く使用する固定資産としてふさわしい資金の出所は短期間に返済する流動負債ではなく、自己資本である純資産と長期間で返済する固定負債です。
 固定資産購入余力 = 固定資産 - (純資産+固定負債)
これでお釣りがくれば固定資産購入余力はあるということになります。もし足りなければ、高金利の短期返済資金である流動負債も費やしていることになるので重要な問題です。極端なことを言えば、念願のマイホームを建てたが自己資金と住宅ローンだけでは足らず、カードローンも組んで一戸建てを建てようなものです。こう例えると、如何に無理して設備投資をしているか分かりますよね。意外と多いのですよ、このような会社が・・。
(2)固定資産購入の資金の出所を入念に確認する
上記の場合では少し片手落ちです。やはり自己資金割合を確認する必要があります。住宅でも一緒ですよね、せっかく夢のマイホームを持てたのは良いけれど100%住宅ローンであれば少し無理があります。
 固定資産の自己資金割合 = 固定資産 - 純資産
自己資本だけで購入できていれば、理想的な設備投資の仕方です。少なくとも2割から3割程度は自己資金を充当させたいですよね。経営と言えども、資金のバランス感覚は家計と同じです。これが重要なポイントです。
(3)固定資産購入余力の指標
購入余力の指標として固定.長期適合率と固定比率があります。
 固定.長期適合率 = 固定資産 ÷ (純資産+固定負債) ×100
 固定比率     = 固定資産 ÷ 純資産 ×100
これらの比率は固定資産購入余力をトータル的見た指標です。すべて低いほど良と言うことになります。
(4)評価尺度
大事なことは評価尺度を持つことです
固定.長期適合率 120%超   いまの資金力では購入しすぎです。早急に資金手当
                 をするか、固定資産を売却することを検討します。
         90%前後   現在の資金力では現状で目一杯です。
         60%前後以下 適正な設備投資状況です。

固定比率     300%以上  自己資金割合が少ないです。金利等を考えれば過剰
                 設備投資の状況です。
         200%前後  まずまずの自己資金割合ですが、これ以上設備投資
                 する余力はありません。
       100%前後以上  理想的な設備投資状況です。

 

2-2.固定資産の有効活用度を確認する
固定資産をどのようにして経営判断に活かすか、もう一つの方法はその有効活用度を確認します。
(1)固定資産回転率
せっかく苦労して用意した固定資産ですから、極力有効活用したいものです。その見方は売上高(年商)と比べて確認します。
 固定資産回転率 = 年商 ÷ 固定資産
これで固定資産の何倍の売上を上げたか分かります。とくに製造業において重要な指標です。もし固定資産の生産性が低ければ、過剰な設備があるとも判断できるので不要な固定資産は処分して身軽にする必要があります。もし特定の固定資産と特定の売上高が関係があるのであれば、それごとに個別固定資産回転率を計算し、個別固定資産の生産性を確認します。それの結果によっては生産を中止し、その設備を処分するという意思決定もできます。
(2)評価尺度
固定資産回転率 2.0回以下  あまりに回転率が低すぎます。(今となっては)過剰
                設備なのかそれとも売上をあげる方法がないのか検討
                します。
        3.0回前後  やや回転率が低いです。もう少し売上をあげる方策を
                考えましょう。
        4.0回以上  適正な設備投資状況です。つぎの設備投資をそろそろ
                考えていいのかもわかりません。

こういう風に財務諸表を見ると、財務諸表がまるで経営のコックピットのように思えてきませんか?
これが経営会計です。